映画評「ヘイヴン~堕ちた楽園~」

☆☆★(5点/10点満点中)
2004年アメリカ=イギリス=ドイツ=スペイン映画 監督フランク・E・フラワーズ
ネタバレあり

クェンティン・タランティーノから本格的に始まった複数の時間軸を交錯させ、複数のエピソードを並列的に描く手法の作品の潮流がやや変わって来たようである。
 以前は無理矢理に全てを関連させていた感があるが、最近は無理に絡ませない。しかし、それは物足りなさの原因にもなるので一概には歓迎できない。それ以前に時間軸をいじりすぎる作品は、頭の中で時系列通りに編集しなおすとそう大したことのないものが多くて僕は余り評価して来なかったわけだが、これはそうした新しい潮流の中で生まれた作品である。

監督は映画の舞台となるケイマン諸島出身という新人監督フランク・E・フラワーズで、脚本も書いているが、首尾はどうだろうか。

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先月の「ダウト」で扱われたようにケイマン諸島はタックス・ヘイヴン(租税回避地)として知られるところ。
 ここへ脱税容疑でFBIに追及されかけたビル・パクストンが間一髪100万ドルの大金を身に付け娘アグネス・ブルックナーを連れて逃げてくる。無理やり連れて来られた娘は現地のチンピラ少年ヴィクター・ラスクと親しくなって憂さを晴らす。
 一方、観光客相手の船で働くオーランド・ブルームがボスの娘ゾーイ・サルダナと結ばれるが、それを知った彼女の兄により硫酸を顔に浴びさせられ、彼は退避してしまう。4か月後パーティー会場に顔を出し、ゾーイが身を持ち崩しているのを見た彼は絶望的な気分に苛まれ、悲劇を引き起こす。
 実はパクストン父娘が逃げて来たのは正にその時で、ラスクは借金を返す為に彼の大金を狙い、FBIは逮捕の触手を伸ばしてくる。

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何とも大胆な作劇で、この二組は物理的にも主題的にも絡んで来ない。物理的には【どこかですれ違っているかもしれない】、主題的には【欲望にかられる群像】、その程度である。
 オムニバス的な群像劇が増えてきたと言ってもエピソード同士が底流で相互に結び付くのが通常だが、本作では全く独立したお話がパーティー会場をパイプに結びつけられているだけである。パーティー会場のある場所で殺人が行われ、ある場所で怪しからん謀議が行われているというだけである。
 これでは、何ともやり切れない青春ドラマ、何とも煮え切らない犯罪ドラマとを二本立てで観せられているようなもので、夫々一本では100分の上映時間をこなせないから二つ用意してみましたといった印象が残ってしまう。カットバックを多用するのも散漫になるので感心しないが、これはこれで稚拙と言われても仕方があるまい。
 映像は優秀と言えるレベル。

配給会社はhavenとheaven(楽園)で洒落ているようじゃが、この監督さんが本格的に花開く(flower)のはまだ先のようです。

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  • 「ヘイヴン 堕ちた楽園」

    Excerpt: オーランド・ブルームが主演・製作をした作品。 ホント、フロリダ半島の下の南の島々は怪しい?いや楽しそうだよね。 Weblog: ひらりん的映画ブログ racked: 2008-01-19 22:26
  • ヘイヴン 堕ちた楽園

    Excerpt: 100万ドルを100ドル札で計ると13キロなんだぜ・・・ふふふ。 Weblog: ネタバレ映画館 racked: 2008-01-21 20:30