映画評「赤い手裏剣」

☆☆★(5点/10点満点中)
1965年日本映画 監督・田中徳三
ネタバレあり

大映の時代劇を引っ張ってきた一人・田中徳三が82歳で亡くなった。報の前日に迷った末に本作を録画したのは、虫の知らせだったのだろうか。

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鉱山のある宿場に馬に乗った棒手裏剣の名手である伊吹新之介(市川雷蔵)が現れ馬宿に馬を預けた後、三つ巴になってしのぎを削っている仏(ほとけ)一家、絹屋、炭屋の間に分け入り三者を戦わせ全滅させようと画策、そこへ仏一家に雇われた用心棒(南原宏治)が立ち塞がる。

というお話は「用心棒」の発展型だが、原作はハードボイルド作家である大藪春彦なので、寧ろ「用心棒」の原案になったと言われるダシェル・ハメットの「血の収穫」の影響を強く受けていると思う。「血の収穫」も鉱山町が舞台だったはずで、主人公のクールな態度は眠狂四郎の虚無性とは些か違ってハメット風で、見た目よりは人情がある。

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1964年に作られた「荒野の用心棒」が日本で公開されたのは1965年12月で、本作は65年の1月であるにも拘らずマカロニ・ウェスタンを見ているよう。何しろ主人公は馬に乗って現れ、皮のチョッキのようなものを着ているのである。
 僕はイタリア製西部劇は黒澤明だけではなく大映時代劇の影響を受けていると見ているが、この頃はお互いに影響を与え合っていた過渡期だったのかもしれない。

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作品としてはやくざの三つ巴なので複雑でごちゃごちゃ、二組の対立を描いた「用心棒」のようにすっきり観られない部分が出てくるのは致し方ないし、二番煎じの弱みもあって星は控えめになってしまうものの、原作の持つハードボイルド性のおかげもあり、田中徳三の演出はドライで切れ味が良い。

田中徳三は三隅研次と並んでもっと評価されていい作家であった。御冥福を祈る。

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