映画評「マリー・アントワネット」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年アメリカ=フランス=日本映画 監督ソフィア・コッポラ
ネタバレあり

ソフィア・コッポラの第3作は現在社会から離れて題名からも解るように時代ものである。

オーストリア王家(ハプスブルク家)の14歳の王女マリア=アントニア(キルステン・ダンスト)は、フランス王家(ブルボン家)の15歳のルイ王子後のルイ16世(ジェースン・スウォーツマン)と政略結婚させられるが、王子が錠前作りと狩りに夢中で彼女の肉体に興味を示さない為に、孤立を深め孤独に苛まれ、お菓子やギャンブルや装束に散財するようになる。

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18世紀のお話なのにいきなりバロック音楽ならぬロックで始まるのでびっくり、その後もBGMの大半がロック系音楽なのでこれは明確な狙いである。
 時代ものを現在作る意義は、今に生きる人々との接点にある。つまり、今生きる人間の生活感情を反映しないなら作る意味はない。「水戸黄門」しかり、「銭形平次」しかりである。従って、賑やかな現代音楽をBGMとし、軽々しいジャンプ・ショットを用い、若者らしい駄弁りや飲食場面を重ねることで、現在の若者の心理とオーヴァーラップさせようとした狙いには何の問題もない。寧ろ正解と言うべきである。
 とは言え、古臭い人間の僕としてはそうした手法に違和感を持ったことは否定できない事実であり、素直に喜べない。そんなことをしなくても現在との接点は作ることが可能だからである。

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前半の面白さは、国境での引き継ぎや初夜の儀式といったフランス王室の奇妙な習慣への興趣や、ルイの幼稚さから来るセックスレスにより孤独を深めていく彼女の心理にある。
 ソフィア女史としては事件や葛藤といった外形的なドラマを構成する代わりに彼女の心理を浮き彫りにするという狙いがあったのは明白で、材料が揃っている前半においては成功している。一見単調に見えるほど相似した場面を繰り返すのはその孤独を浮き彫りにする狙いに他ならない。

問題は後半で、錠前と鍵の関係を男女のそれと比較するのを聞いてすっかりその気になったルイがセックスレスを解消した後孤立無援のアントワネットの孤独はとりあえず雲散霧消したわけで、ルソーからの影響による自然主義的態度など興味をそそる描写もあるが、前半と同じ手法では彼女の内面は発露してこない。
 その為、後半では彼女個人の心理が我々に迫らず、フランス革命を招いたのはマリー=アントワネットの浪費とルイ16世の暗愚政治にあるという、当たり前の歴史的結論のほうが強く印象に残ってしまうのが不満である。

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日本では不美人という評価が目立つキルステン・ダンストはヒロインと同じドイツ系で大いに結構。ドイツ系では他にダイアン・クリューガーという正当派美人がいるが、彼女ではお話がしかつめらしくなり目的と合わなくなってしまう。よって適材適所の起用と言うべし。

錠と鍵と言えば典型的な雌と雄の関係。マリー=アントワネット自身がそれに気付いて窮状を切り開くのを、実は僕は待っていたのだが。

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この記事へのコメント

シュエット
2007年12月19日 10:40
こんにちは。本作女性としてはこんなボンボンシュガーみたいな色が溢れた映像って、映画のレベルとか内容とかとは無関係に浮き足立ツところがあって、キレイなもの観たいっていうとこで見に行きましたね。
夜遊びしてアントワネット達が岸辺に座って川を眺めたり…なんて光景なんて、やはりこれは18世紀を舞台にした青春ドラマだなって思いましたね。観ている時は結構楽しませていただきましたら、観終わったらもう一度観ようとは思うほどではないですね。全くまたまた同じ愚痴ですがもう一度観たいと思う映画を作って欲しいです。キルスティンは「インタビュー・ウィズ・バンパイア」子役ながらブラピとトム・クルーズを相手に堂々の演技。この時の彼女が一番印象に残ってますね。女の子の意地悪な部分とか甘えとかそんなものを感じさせる女優として、私結構彼女は好きですね。
オカピー
2007年12月20日 01:29
シュエットさん、こんばんは。

最初のパンク・ロック風のサウンドに「あれまっ」と思いましたが、ソフィアの狙いがすぐに掴めたのでそれなりに楽しめたのが前半。
ピンク色をフィーチャーしたガール映画みたいでしたね。乗りは「クルーレス」などに近いでしょう。
後半はちょっと手詰まりで、歴史的事実をちょっと変わったアングルで描いたといった程度の印象しかないのは残念でした。

日本では妙にキルステン嬢は評判悪いんですが、僕はご贔屓とまでは行かないまでも結構好きですよ。シュエットさんの仰るところはよく解ります。やはりあの眼でしょうね。

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