映画評「ロード・オブ・ウォー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督アンドリュー・二コル
ネタバレあり

「シモーヌ」でCGが席巻する映画業界を皮肉ったアンドリュー・ニコルが今度は武器が席巻する世界を皮肉るブラック・ユーモア満載のドラマである。ブラック・コメディーと言うほどお笑いに徹してはいない。

銃弾が製造され売買され被害者の許に達するまでを描いたタイトルバックがそのまま映画の内容を示していると言って良く、結局本編はその詳細版である。

画像

ウクライナ系アメリカ人のニコラス・ケイジが偶然目撃した銃撃事件に天啓を受けて【死の商人】の道を邁進、協力していた弟ジャレッド・レトーがゲリラから礼金代わりに受け取った麻薬に溺れて脱落した後、絶世の美人ブリジット・モナハンを落として家庭を設けつつも、素知らぬ顔をして商売を拡張していく。
 射殺された弟の死体が入管で裏切って逮捕され、妻の行動から窮地に追い込まれたはずの彼を釈放するのは、他ならぬアメリカ合衆国の【銃に依存しないではいられない体質】である。

画像

彼を懸命に追跡し続けたインターポールの刑事イーサン・ホークがお気の毒になってしまう幕切れだが、海上輸送している最中に彼の接近に気付いたケイジが船名を実在する別のものに変えさせ、それに合わせた国旗を揚げるといった対処法が大変具体的で興味深い。横の国旗(フランスか?)を縦にしてオランダの国旗にしてしまうという、どこかのマジシャンみたいなインチキもあり苦笑させる。
 かつてアメリカがでっちあげた(国旗を見よ)アフリカ2番目の独立国リベリアの元首父子がマンガの登場人物みたいに銃をぶっ放してばかりいるのは諧謔的な扱いだが、笑いより寒気を覚える。

画像

といった具合に描写が具体的で展開は明快、テンポも良いが、ナレーションを入れずに観照的なタッチで進行できたら総毛立つような傑作になったのではないかと思う。いかにも風刺作品ですよと解説風に作ってしまうのが二コルの弱さなのだ。あるいは説明的に作らないと観客に理解してもらえない時代なのかもしれないが。

ケイジは作品に軽妙さを与える好演。

名前に反して刑事に追われるケイジさんでした。

この記事へのコメント

2007年12月12日 17:11
実に恐ろしい内容ではございますが
映画的には大変楽しませていただきましたです。

プロフェッサーも言及なさっておいでですが
ほんとうに主演者がN・ケイジでなければ
辛気臭くて気が滅入ってしまいそうな按配(--)^^

いかにも近頃精彩の欠いたイーサン・ホーク。
色濃いケイジに比べて、彼、刑事にもあんまし
見えなかったわね~~~

ちょうど2年前の記事、ヨッコラショと
持参させていただきました。^^
オカピー
2007年12月13日 00:22
viva jijiさん

>新規臭くて
はいはい、どちらか言うとケイジが刑事で(笑)、ホークがフォークじゃなくて死の商人みたいな印象ですけど、ケイジさまさまですね。
そう言えば、二コル氏の出世作「ガダカ」の主演でしたね、フォークじゃなくてホーク。ぽつぽつと顔を見ますが、些か作品が地味ですかね。

>2年前
「キング・コング」もそうですが、映画(配給)会社によっては2年も待たせるんですねえ。そうなると、レンタルも検討しないといけないなあ。
2007年12月13日 20:56
プロフェッサー、こんばんは。
コメント&TBありがとうございました。

ナレーション、基本的にはやめてほしいですよね。効果的な面もありますが。本作もナレーションなしなら、ほんと恐ろしいほどの傑作になっていたかもと私も思います。
私が強烈な印象をうけた、冒頭とラスト。ナレーションなしで、アノ画だけだったとしたら・・・。
あのタイトルバックもあるし、十分にいけたと思いますよね、ナレーションなしで。
ただ、

>あるいは説明的に作らないと観客に理解してもらえない時代なのかもしれないが。

これはやはり、そうなのかもしれません・・・。
先日、「椿」の森田版を鑑賞しました。まあ、おもったよりガッカリせずに楽しんでみたのですが、ラストの説明としかいえないスローでのリプイレがあり、非常に哀しくなりました。オリジナルのラストがあるだけに。

では、また。

オカピー
2007年12月14日 01:41
イエローストーンさん、こんばんは。
TB&コメント有難うございます。

ナレーションは長くなる部分を短くする効果はありますが、それに頼っては映画を撮る術が上手くなるはずもありませんよね。
昨今のSF、サスペンス映画のナレーションの多くは欺瞞の為に使われているから、さらに気に入らないですね。^^;

>椿三十郎
聞いたところでは、「サイコ」と同じように同じ脚本だとか。それなら演出と役者がまずくなければ一応【映画】になるはずです・・・が。
三船敏郎と織田<世界陸上>裕二では比較する気にもならんなあ。
などと言いつつ、気にはなっているんです。^^;
12月中にオリジナルを見ようとは思っているです。

この記事へのトラックバック

  • ロード・オブ・ウォー

    Excerpt: メジャーなハリウッド・スターの ニコラス・ケイジが脚本にホレ込み 出演しているがハリウッド及び アメリカ資本がまったく入っていない インディペンデント系の“物騒”な 大作として日の目を見るこ.. Weblog: 映画と暮らす、日々に暮らす。 racked: 2007-12-12 17:02
  • ★「ロード・オブ・ウォー」

    Excerpt: 2006年1本目の劇場鑑賞映画。 戦争物は余り得意じゃないけど・・・ この映画は武器商人の話らしいし・・・ 今のニコラス・ケイジじゃ、シリアスな戦争物は作らないだろーーし。 Weblog: ひらりん的映画ブログ racked: 2007-12-12 22:35
  • 『ロード・オブ・ウォー』

    Excerpt: ----この映画、最初『アメリカン・ビジネス』という タイトルで公開される予定だったよね。 結局、原題に戻っちゃったね。 「うん。なぜだろう?あまりにも生々しいからかな。 旧ソ連のウクライナから家族と.. Weblog: ラムの大通り racked: 2007-12-13 00:35
  • 地獄の商人、虚像の死神が天職~「ロード・オブ・ウォー」

    Excerpt: ソビエト連邦崩壊前のウクライナに生まれ、家族とともに少年期にアメリカに渡ったユーリー・オルロフ。 Weblog: 取手物語~取手より愛をこめて racked: 2007-12-13 20:59
  • 映画「ロード・オブ・ウォー」

    Excerpt: 映画館にて「ロード・オブ・ウォー」★★★☆ ストーリー: レストランで働く平凡な男ユーリー・オルロフ(ニコラス・ケイジ)は、偶然銃撃戦に巻き込まれたことから、武器商人として生きていく道を思い立ち、弟.. Weblog: ミチの雑記帳 racked: 2007-12-14 11:45
  • ロード・オブ・ウォー(DVD)

    Excerpt: 弾丸[タマ]の数だけ、札束[カネ]が舞う―――。 Weblog: ひるめし。 racked: 2007-12-14 12:13
  • ロード・オブ・ウォー

    Excerpt:  「ランボーが使ってた銃をくれ!」「1、2、3・・・どれ?」「1しか観てない」「じゃ、M60だ。それ」 Weblog: ネタバレ映画館 racked: 2007-12-15 16:15
  • 映画『ロード・オブ・ウォー』

    Excerpt: 原題:Lord of War 実在する5人の武器ディーラーから抽出したキャラクターを融合して構築されたという、死の商人・・虐殺が繰り返される紛争地への武器密輸という問題作・・ ユー.. Weblog: 茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~ racked: 2007-12-16 02:30
  • ■ ロード・オブ・ウォー 」

    Excerpt: 監督・脚本 : アンドリュー・ニコル 「ターミナル」主演 : ニコラス・ケイジ/イーサン・ホーク/ブリジット・モイナハン   公式HP:http://www.lord-of-war.jp/index2.. Weblog: MoonDreamWorks racked: 2007-12-16 21:51
  • <ロード・オブ・ウォー> 

    Excerpt: 2005年 アメリカ 123分 原題 Lord of War 監督 アンドリュー・ニコル 脚本 アンドリュー・ニコル 撮影 アミール・M・モクリ 音楽 アントニオ・ピント 出演 ニコラス・.. Weblog: 楽蜻庵別館 racked: 2007-12-17 01:23
  • ロード・オブ・ウォー

    Excerpt: 作品情報 タイトル:ロード・オブ・ウォー 制作:2005年・アメリカ 監督:アンドリュー・ニコル 出演:ニコラス・ケイジ、ジャレッド・レト、イーサン・ホーク、ブリジット・モイナハン あらすじ:レストラ.. Weblog: ★★むらの映画鑑賞メモ★★ racked: 2010-07-14 00:38