映画評「どろろ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2007年日本映画 監督・塩田明彦
ネタバレあり

1969年に放映された手塚治虫原作のテレビ・アニメ「どろろ」。途中の転調が大変面白い主題歌は今でも歌えるが、内容は全く忘れております。
 室町時代若しくは戦国時代が舞台だった原作に対し、この実写版では時代も場所も架空という設定だが、大陸アジア的な雰囲気が濃厚で最初はちょっと違和感がある。名前がそのまま日本名なのには苦笑。

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醍醐景光(中井貴一)が天下取りの為に生まれ来る子供を48の魔物に生贄に捧げる、というのがプロローグ。
 そのせいで48の部位を失って生まれてきた赤ん坊は、拾った医者(原田芳雄)にサイボーグのように補足され一人前の人間の姿を得て百鬼丸と名付けられ成長(妻夫木聡)、魔物を倒すことで部位を一つずつ取り戻すことができるのだ。現在は魔物倒しの旅を続行中で、その途上で戦国で両親を失った泥棒孤児(柴咲コウ)と知り合う。実は男装した少女なのだが、両親を死に至らしめた景光を倒すことを念願に生き永らえてきたのだ。

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といった背景が数々の魔物を倒す旅の間に判明してくるロード・ムービー仕立てで、序盤は余り面白くなりそうもなかっものの、豈図らんや結構見応えがある。
 まず赤ん坊が捨てられる経緯が「十戒」と全く同じで、「オイディプス王」にも似た息子の父親への復讐譚の要素があり、百鬼丸の母親(原田美枝子)がシェークスピア的な台詞を放つ、といった具合に様々な古典から影響を受けていることが伺え、大変興味深い。
 もう一つは、他の英雄譚と違い、魔物若しくは妖怪を倒すたびに百鬼丸はまともな人間に近付き、反面弱体化するというジレンマのあることである。そこから、一般的英雄譚とは違い、孤児の心境を前面に出した内容と相まって戦うことに対する逆説的な風刺性が浮かび上がり、胸を打つものがある。原作の力によるところも大きいのだろう。

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特撮やCGには些か心もとない部分があるが、VFXというよりSFX気分が楽しめるので敢えて減点するには及ばない。
 監督は塩田明彦で、「害虫」の頃のような作家性を見出すことは難しいとは言え、きちんと作っている。主演のお二人は漫画的なはっきりした顔つきだから適役と言って良い。

♪とぼけちゃいけねえ 知ってるぜ おまえらみんなホゲタラだ ホゲホゲタラタラホゲタラポン♪

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この記事へのコメント

2007年12月16日 21:41
オカピーさん、こんばんは☆
TBはどうやら失敗しているようです、お手数ですがお暇なときにでも、もう一度トライしてみていただけましたら幸いです。
私はこの作品、東宝のドロログ募集で5~6の中のブロガーに選ばれまして、「どろろ」を応援することが条件で完成披露試写に招待されたものですから、面白かったには面白かったのですが、マイナス面が書けなくて正直なところ歯がゆい文章でした(笑)
CGを使わないワイヤーアクションシーンなどは、チン・シウトンの美しい振り付けが味があって、なかなか良かったと思いますが、やはりクリーチャーはいかにもマンガ的というか、レベル的にはあまり高いものではなかったですね。
ストーリーはさすがに手塚ワールドだけあって、この現代においてもなかなか味があって魅力的なものでした。
後半の駆け足的な魔物退治が少々拍子抜けした感もいなめないのも事実ですが・・
オカピー
2007年12月17日 01:26
rikocchinさん、こんばんは♪

>ドロログ募集
そういうのに選ばれるのは日頃の精進の賜物なんでしょうね。
しかし、弱い面を書けないのは嫌だなあ。^^;

>CG、ワイヤーアクション
その技術レベルで評価を左右させることは殆どありませんが、使い方に関してはかなり厳しいつもり。

>駆け足的な魔物退治
いやいや、あれはあれでリズムを変えて良いと思いましたよ。
あのままのペースで展開されたら、10本くらい続編が要りますよ。あははは。
2007年12月26日 02:43
こんばんは。そうですか、十戒やシェイクスピアまで取り込んでるんですね。ちょっと感心。気になった点は3つ。
1.登場シーンでは妖気漂い良い感じだった妻夫木@百鬼丸がどんどん素の妻夫木クンに戻っていってしまうところ。
2.最後の影光の改心劇。
3.どろろの金的蹴りで、百鬼丸の○○は魔物にとられてなかったんだなぁと妙に感心したところ(どうでもいいですけど・・)
そんなことがありながらも、全体的には面白い映画だったと思います。
オカピーさんが全部覚えている主題歌が気になって、YouTubeで探し当てて聞いてみましたよ。でも、やっぱり歌の記憶はなかったですねぇ。微妙に年代が違うらしく残念。
ちなみにこちら→http://www.youtube.com/watch?v=07cyiNcvMYY
オカピー
2007年12月26日 23:05
FROSTさん、こんばんは。

>十戒その他
漫画やアニメ版は殆ど憶えていないので何とも言えないのですが、原作からのアイデアではないかと思います。
アイデアを拝借するのは、世間でパクリと言われますが、実は大変建設的なことだと思っておりますよ。

>主題歌
60年代アニメ主題歌はかなり憶えています。最近映画を観るうちに思い出したのは「忍者ハットリクン」や「キング・コング」など。そう言えば「鉄人28号」もありました。
YouTubeの情報、有難うございました。

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