映画評「ガス燈」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1944年アメリカ映画 監督ジョージ・キューカー
ネタバレあり

高校時代以来久しぶりの鑑賞で、内容はかなり忘れておりました。

パトリック・ハミルトンが書いた同名原作戯曲は何度も映像化されているスリラー・ファンにはお馴染の作品で、二度目の映画化である本作は同じくイングリッド・バーグマンが出演したニューロティック(異常心理)スリラーの傑作「白い恐怖」に1年先んずる1944年に作られたことから、このジャンルに先鞭を着けたとも言われる。

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ガス燈時代の1870年頃、声楽家の叔母を殺されてその遺産を継いだ声楽家志望イングリッドがピアニスト兼作曲家のシャルル・ボワイエと結婚して留学先のイタリアからロンドンに戻るが、やがてブローチを逸失したり自分が絵を外したことを忘れるなど勘違いや物忘れが激しくなり、優しかったはずの夫はそれを慰めるのではなく糾弾して彼女を家から出そうとしない。

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というのは表面的なお話で、夫が良からぬ企みを持っているのは、開巻30分後ブローチをバッグに入れたことを執拗に確認させる場面から容易に想像が付く。
 従って、観客の関心は彼の魂胆が何であるかということになるが、その最終目的に対する時間をかけた用意周到さと好対照な彼の短気のせいで早めにミステリーとしての底が割れてしまうのはつまらない。

その代わり・・・恐らく作者の狙いもそこであろうが・・・音楽家の偏執狂的な性格破綻ぶりや真綿で首を絞められるようにじわじわと追い込まれるヒロインの苦悩をスリリングに楽しめば良く、夫々に扮するボワイエやイングリッドの好演を堪能したいところである。

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女優を使うのが上手いという評判のジョージ・キューカーだからというわけではないのかもしれないが、妖しくて怪しい家政婦に扮した若きアンジェラ・ランズベリーが抜群で、「バルカン超特急」の老婦人役で記憶に残るメイ・ホイッティの英国的コメディ・リリーフも愉快。
 声楽家殺人事件に執心する刑事役としてこれまた「疑惑の影」の悪役が印象深いジョゼフ・コットンが出ているので、スリラー向きの役者が勢ぞろいといった感があり、顔ぶれを見るだけでも映画ファンには楽しめそうだ。

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大ベテラン、ジョゼフ・ルッテンバーグのモノクロ撮影も深みがある。

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この記事へのコメント

2007年12月11日 07:58
いや~~「ガス燈」!
この作品はわたしがお子チャマ映画を卒業し、映画を見初めの頃と、録画できるビデオデッキが出てきた頃が同時期でして、その頃初めて録画した作品のひとつ。他には「哀愁」「マルタの鷹」等、ボギーの作品、NHKで放映してた「チャップリン」特集、オードリーの映画、ヒッチコックなどなど・・・
どの作品ももうずいぶん見てなくってほとんど忘れてますが・・(苦笑
「ガス燈」はあの灯が小さくなる様子、がらんとした寒々しい部屋の様子などは覚えております。
そしてイングリット・バーグマンの美しさ!
あ、そういえば500円DVD持ってるんだった!(笑)
もう一度きちんと見たいですね。
2007年12月11日 19:11
>若きアンジェラ・ランズベリーが抜群で

彼女のデビュー作なんですってね。
NHKの「ジェシカおばさんの事件簿」での彼女も印象に残っています。

まちがっていましたらごめんなさいですが^^
だんだんおかしげになっていくバーグマンの朦朧とした表情を
効果的に演出するためにバーグマンをわざと睡眠不足に
仕向けて撮影したという作品は、本作でしたか、それとも
「白い恐怖」だったかしら?
オカピー
2007年12月12日 01:58
しゅべる&こぼるさん、こんばんは。

僕はビデオが家庭で観られることになる何年も前に観ました。多分高校生の頃。
結構怖がった記憶があるのですが、細かいところは終盤以外殆ど忘却の彼方なのでした。ガス燈が細くなるところはさすがに憶えていました。^^

>バーグマンの美しさ
バーグマンの絶頂期でしょうね。演技も確かでした。

今回は開局したばかりのBS放送局で観たのでした。フィルム状態は抜群でノーカットでしたが、始まったら二カ国語放送なので慌てましたよ。^^;
オカピー
2007年12月12日 02:10
viva jijiさん、こんばんは。

>アンジェラ・ランズベリー
デビュー作ですね。キューカーの演技指導のせいでしょうか、大変良かったです。

>ジェシカおばさん
実は、「若きジェシカおばさん」と書こうとしたんですよ、結局止めましたが。^^

>睡眠不足
聞いたことがありますが、僕も定かではないです。
「白い恐怖」ではないでしょうね、あちらのバーグマンは殆ど正常でしたから。ヒッチコックの「山羊座の下に」の長回し撮影で彼女がノイローゼになってしまったという話もあって、睡眠不足になったのではないかと予測されたりもします。^^;
ということで、内容から言っても「ガス燈」の可能性が高いですね。^^;

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