映画評「不毛地帯」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1976年日本映画 監督・山本薩夫
ネタバレあり

「白い巨塔」「華麗なる一族」に引き続き山本薩夫監督が山崎豊子の社会派小説に取り組んだ力作である。
 登場人物にモデルはないと明言されているものの、主人公は一ヶ月前に亡くなった瀬島龍三がモデルと言われている。

画像

戦中大本営の作戦参謀を務めた仲代達矢は、昭和31年シベリア抑留から生還、2年後に近畿商事に入社する。社長の山形勲が全く経験のない彼を迎えた理由は参謀としての決断力だが、具体的には自衛隊の二次防主力戦闘機選定に暗躍してもらう為である。
 案の定、社が買い付けを進めているラッキード社を見学した時に彼の軍人魂が燃え上がり、自衛隊にいる戦友・丹波哲郎や戦時中の知り合いである経済企画庁長官・大滝秀治に働きかける。
 一方ライバルの東京商事はグラント社選定に奔走、官房長・小沢栄太郎と癒着する。
 仲代は部下を使って防衛庁職員からグラント社の見積もりを取得するが、近畿商事の攻勢に立場を失いかけた官房長は丹波の左遷を決定、守秘義務違反などあらぬ疑いを掛けられた丹波は鉄道自殺。自殺の封印を含めて近畿商事が政府の言いなりになることを条件にラッキード社戦闘機が選定されるものの、戦友の自殺に責任を感じた仲代は退社を決意する。

画像

原作が連載中だった為に前半までの映画化だが、十分以上に楽しめる。核となるのは近畿商事/ラッキード社と東京商事/グラント社が繰り広げる虚々実々の権謀術数で、政府側も二手に分かれ、その間を泳いで探りを入れる新聞社が絡んで来て百鬼夜行の様相を呈してくるが、山本薩夫は相変わらず人物の出し入れが上手く、複雑なお話をかなり解り易く作ってくれているのが有難い。

気に入らないのは、パワー・ゲームの中に殆ど関係のないプロパガンダ的場面を挿入したことである。時間的にはほんの僅かでも違和感を残す。【赤いセシル・B・デミル】こと山本監督の悪い癖だ。

アメリカ・ロケの場面で通行する車や風俗が時代設定(1960年頃)にそぐわないが、これは仕方があるまい。

ロッキードならぬラッキード社、グラマンならぬグラント社という社名に思わずにやり。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック