映画評「若い人」(1952年版)

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1952年日本映画 監督・市川崑
ネタバレあり

石坂洋次郎の代表作はやはり「青い山脈」と「若い人」ということになろうが、戦前の代表作たる「若い人」の二度目の映画化で、監督は若き市川崑。1952年当時全く評判になっていないものの、予想外になかなか楽しめた。

北海道のミッション系スクール、若い教師・間崎(池部良)が、作文で自分が父親の判らない娘であることを告げた美貌の教え子・江波恵子(島崎雪子)のことを大いに気にかける。
 気の強い女教師・橋本スミ(久慈あさみ)は彼に惹かれながらも反目するそぶりを見せ、精神的な三角関係が幾つかの事件により次第に愛欲的なものへと変質していく。

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舞台は戦後に変えられているが、まだまだ父なし子に偏見の強い時代である。美少女・恵子にとっては母親ハツ(杉村春子)が飲屋の女将で男癖が悪い為自分が誰の子かも判らない事実や或いはその血に苦悩、奔放な少女ぶって理想を抱えた若き教師を困らせる。
 これが第一の見どころである。淫蕩そうに見せかける・・・僕は演技と見た・・・少女の演技が見ていて痛々しい。

方や彼の少女に対する甘い理想論的教育方法に疑問を呈するスミは、逆に自らの型にはまった考えの限界に気付く。彼女を巡って繰り広げられる若い二教師の教育論議もなかなか面白く見られるが、恐らく女教師の攻撃的態度は嫉妬の絡んだものであろうし、彼女が学校を辞する真の理由は三角関係脱落のようである。

現在は権利と自由が広がったので却ってドラマとして描くことがなくなり、ある時代までの閉鎖性や閉塞感はドラマ性を豊かにする。50年代日本映画が花開いたのは時代性によるところも大きかったと思う。
 個人差もあろうが、現在の環境なら恵子はあそこまで苦しんだろうか。間崎もあれほどセンシティヴに感想文に気を留めようともしなかったであろう。

といった具合に本来なら相当重苦しい物語であるが、歯切れの良く展開し明るめに映像化したのが市川監督の殊勲である。

演技的に他を圧倒したのはハツ役の杉村春子で、酒を飲んだ時に見せる泣いたり怒ったり態度の豹変を実に緻密にダイナミックに演じている。ここだけでも見る価値は十二分にある。

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