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zoom RSS 映画評「激動の昭和史 沖縄決戦」

<<   作成日時 : 2007/08/21 15:17   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
1971年日本映画 監督・岡本喜八
ネタバレあり

自ら監督もしながら250本近い脚本を書いている新藤兼人は恐るべき多作家だが、その中でも本作は一番の大作ではないかと思う。彼の馬力も凄いが、映像化した岡本喜八の馬力も大したものである。ドキュメンタリーみたいなタイトルだが、れっきとした戦争巨編。

サイパン島が陥落して既に結果が見え始めた昭和19(1944)年七月、沖縄県人口の半分近い20万の精鋭が本島に送り込まれるのと並行して、沖縄三十二軍の司令官が温厚な牛島中将(小林桂樹)に代わり、侍のような豪傑肌の長少将(丹波哲郎)と管理型の八原大佐(仲代達矢)が側近として付く。

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映画は、本土決戦に備える大本営の協力を得られないまま苦境に陥っていく三人の姿を中心に、他部隊の奮戦ぶり、臨時看護婦として健気に働くひめゆり部隊などの民間人の苦闘を並行して描き出す。
 20万もの兵隊を見れば沖縄県民としても強気になっただろうが、足並みが揃っていないので張り子の虎みたいなものではなかったかと映画からは理解できる。

無辜の県民たちが悲劇に向って歩みを進めている中、母を失った幼女が爆撃で荒れた町や荒地を歩く場面が挿入される。拾った手榴弾を「つまらない」とばかりに捨てるなどして、幼女は死をもはねつける妖精のように天真爛漫に戦場を歩き続ける。そんな幼女が大変印象的なのだが、映画は終盤突然ピンチヒッターに別の幼女を起用する。僕としては最初の幼女に統一したほうが作品として美しかったように思う。

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アクション場面は東宝特撮陣の奮闘で迫力あり、CGの虚勢に飽き飽きした目を刺激してくれるのは大いに結構。

しかし、軍隊での経験を持つ新藤兼人としては沖縄戦の全貌を描こうと、あらゆる要素を盛り込んだので、収拾しきれなかったという印象になっているのは勿体ない。
 ただ行間からは次のようなメッセージが読み取れる。
 無謀な戦争の、最終段階の、斥候的役目として甚大な犠牲を国民(沖縄県民)に強いたのが沖縄戦である。また、15万人も死んだと言われる沖縄県民のうち少なからぬ数が手榴弾若しくは青酸カリによる自殺であり、その責任は日本国にある、と。

今年日本の教科書から「沖縄県民の自殺には軍の強制があった」と積極的に表現する文章は尽く削除された。明確に言えない部分はあるものの、そう証言する生存者が多い以上、今削除するのは早すぎる。県民に対する侮辱と思う。国家が県民をそういう心情に持っていったのは否定しようのない事実である。

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「激動の昭和史 沖縄決戦」「あゝひめゆりの塔」
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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
ええと、最近日本の戦争ものばかり続いて恐縮しております。
受動的な鑑賞方式を取っていて、観ていないものを中心に選んだら、こんなことになってしまいました。

戦争ものは本日がとりあえず最後です。
実は邦画はまだ続きます。洋画ファンの皆様、今暫くお待ちください。ぺコリ。
オカピー
2007/08/21 20:08
TB&コメント有難うございます。
島民側の悲惨な体験、日本軍側の悲惨な状態、双方の立場をちゃんと思い遣っているのはいいのですが、盛り込み過ぎで「あらゆる要素を盛り込んだので、収拾しきれなかったという印象」というのは私も感じました。かといって島民側の悲惨な体験を元に描かれた「あゝひめゆりの塔」では語り切ってないし…。
今回、私もNHKBSの戦争シリーズを立続けに観たので、戦争についていろいろ考えさせられました。楽しい作品とは言えないけど、ちゃんと観て、語り続ける必要を感じます。
ぶーすか
URL
2007/08/28 07:25
ぶーすかさん、こちらこそ有難うございます。

評の冒頭で、「ドキュメンタリーみたいなタイトル」と述べましたが、実際そういう情報提供映画のような性格がある作品でしたね。もう少し取捨選択も必要だったと思いますが、新藤兼人も相当力が入っていたのでしょう。

いかなる戦争であろうと、多かれ少なかれ、国民に犠牲を強いるわけですから、そうならないように為政者には頑張ってほしいものです。
オカピー
2007/08/29 03:42
その後、お加減はいかがでしょうか?
忙しさに紛れ、なかなかコメントできませんでした。
岡本喜八ファンとしては当然「日本のいちばん長い日」にコメントを寄せるべきでしょうが、あちらは非の打ち所が無い名作ゆえ、初見だったこちらにコメントを。

東宝としては岡本で「長い日」をもう一丁! って腹づもりだったのでしょう。ところが、新藤兼人の脚本はご指摘の通りにエピソードを盛りこみすぎ。いくらか冗長、散漫なのは否めませんよね。
ただし、新藤の味方をすれば、これは作家の良心とも言うべきもの。資料を集め調べれば調べるほどに、どのエピソードも蔑ろにできないと思い、できるだけ組み込もうとする。真の沖縄戦を描きたいとの気概は痛いほど理解できるのです。
大本営に見捨てられた戦況はもとより、対馬丸、ひめゆり部隊、集団自決の惨状などは削れぬところ。また、ヒューマンな兵隊がいる一方で、壕を出ろと威張り散らす輩もいる。そうした陰影のバランスを描くことで、より物語が迫真性を帯びるわけで、映画の出来栄えは別として、史実に近づこうとする試みは評価したいですよね。
優一郎
URL
2007/08/30 06:05
(続きです)

それに引き替え、今回の沖縄戦に関する教科書改ざん問題は、まったくもって言語道断。
実際に生き証人たちがいて、また遺族たちもたくさんいる。一体、現代において、旧日本軍の蛮行を歴史教科書に残すと、誰にとって都合が悪いというのでしょうか。強い憤りを覚えずにはいられません。この時期のNHKの放送は、いかにもNHKらしいタイムリーな狙いなのでしょうね。

「長い日」に比べれば、出演陣はかなり弱体化しておりますが、それでも小林桂樹や池部良といった戦闘体験者がキャストに組み込まれ、特に岸田森が演じるニヒリスティックな軍医には味がございました。
米兵があまり出て来ないのは・・・おそらく人が集められなかった事情によるものでしょう。とはいえ戦闘シーンの迫力はなかなかのもの。ゴーグルをかけて勇ましく現場で指揮をとる喜八っあんの姿が目に浮かぶのでした。
優一郎
URL
2007/08/30 06:07
優一郎さん、こちらではお久しぶりです〜。

>真の沖縄戦を描きたいとの気概
私も全く同意です。
映画というのは全て計算通りに作られれば良いというわけではなく、散漫や冗長を恐れずに作ることが必要になる作品もありますね。
スパイではないかと撃たれた老人の包みを開いてみると、天皇陛下の額入り写真。しかも銃弾により割れてしまっている。厳密には無駄と思われるこういうエピソードが深く心に残ったりします。

>教科書
政府や文科省の右傾化にも困ったものです。
右でも左でも結構、しかし、国家は国民を守るという最低限の原則は守って貰いたい。国民を守るなら戦争などしていいわけがありません。
自虐史観も「正しい歴史」も国民には関係ないと思いますね。くだらないプライドの為に子孫を戦争に巻き込まないでほしいものです。
オカピー
2007/08/30 21:41

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