映画評「剣」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1964年日本映画 監督・三隅研次
ネタバレあり

三島由起夫の短編の映画化というより、三隅研次の珍しい現代劇というのが第一の興味。

東和大学剣道部の主将に川津祐介と争った市川雷蔵が就き、ストイックな態度で厳しく指導する。敗れ去った川津はいつか出し抜いてやろうとチャンスを狙い、市川に興味を覚えた文学部の女子学生・藤由起子の接近する機会を用意、彼女から彼がよろめいたとの報告を得る。
 彼はその言葉を信じないが、海岸近い寺での合宿中にそれを部員に伝えて市川が禁じた遊泳を実施、それを知った市川は自身の統率力を疑い、自らの命を絶つ。

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全ての煩悩を完全に排除した男を称える物語で、彼を崇拝する後輩・長谷川明男は勿論、誰もその境地には達し得ない、という結論を以って終っている。彼を巡って登場する人物は全て試金石である。
 といった具合に極めて精神的な内容で、前期三島しか読んだことのない僕には分らないが、後期三島の精神を反映しているものと思う。統率力への自信云々も実は彼の強さの証拠なのだと三島は言うのである。

そこへヌーヴェルヴァーグ的とでも言うべきジャズィなムードも加わっているので、時代劇で大胆な演出を披露する三隅の作品としてはしかつめらしすぎてピンと来ない。スクリーンの片側に大きく対象を置く演出(上の画像参照)も本作のようなモノクロ映像では彼独自の耽美性が殆ど発揮できない印象がある。
 大映らしい張り詰めた画調は宜しく、心理ドラマとしてストイシズムの塊の様な男と凡人との対照がかなり興味深く描かれているが、観ている当方の思い込みもあってどうも居心地が悪い。

藤由起子という女優はこの後すぐに引退してしまい、殆ど見た記憶がないのだが、目元が夏目雅子に似ているような気がしないでもない美人(画像参照)。

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この記事へのコメント

2007年07月07日 19:14
こんばんは^^

私はコメントが入っていない作品を狙って書き込みしているような(笑)
次は「無頼の谷」か「チャイニーズ・ブッキー」あたりにコメントすることになるのかもですが^^;

本作、未見の三隅作品なので期待して観ましたが、感触としては非常に微妙です。
三島の原作は短編集に収められていたものだったと記憶していますが、完全主義ゆえに自決する主人公の姿に、三島の後期の思想性が色濃く反映されていますよね。
弱った鳩は殺してしまえ・・・など、いかにも三島的です。これは原作の通りだった気がします。

さて、本作のヌーヴェル・ヴァーグ風な印象は、この時期に飛ぶ鳥を落とす勢いだった石原裕次郎作品が意識されているのだろうか、なんてことを考えて観ておりました。
剣劇ではなく青春映画。石原慎太郎に対抗して三島を持ち出したのでは、なんて邪推も働きます。
ただ、何にしても私が期待する三隅タッチは観られず、肩透かしを食らってしまいました^^;
オカピー
2007年07月08日 02:11
優一郎さん、こんばんは!

>コメントが入っていない作品
大いに結構です。^^)v
トラックバック0、コメント0というのを極力なくしたいもので。
viva jiji姐さんなどと違って、文章の洒落っ気など無きに等しい無骨ものですから、今後とも宜しく(笑)。

>三島の短編集
そうらしいですね。
私は「仮面の告白」や「金閣寺」の耽美的な小説が好きなものですから、剣道を始めてから大分変わったようですね。

>鳩
また舞い戻ってきた鳩は醜い、と言うんですね。少なくとも三隅研次が扱う範疇ではないです。松竹ヌーヴェルヴァーグで売り出した篠田正浩なら合うかもね(笑)。
作品の品格から言えば、大半の裕次郎作品より上という印象はありますが、三隅作品としての所感は優一郎さんと全く同じです。

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