映画評「戦争と人間 第二部」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1971年日本映画 監督・山本薩夫
ネタバレあり

前回第一部の副題を「愛と悲しみの山河」と記したが間違いで、こちらがそれでした。第一部の副題は既に訂正済みなので、ご容赦ください。

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昭和6(1931)年満州事変から、盧溝橋事件の起きる昭和12(1937)年までを描くが、本編は第一部と第三部(完結編)に比べて、個人に注視した作りになっている。
 その間に5・15事件(昭和7年)や2・26事件(昭和11年)などが発生、軍部の権力強化や治安維持法による思想の取り締まりの激化など不穏な空気が漂い、伍代家の人々にも少なからぬ影響を及ぼすことになる。

伍代家の長女・由紀子(浅丘ルリ子)と陸軍少佐(高橋英樹)、成人した次男・俊介(北大路欣也)と長男の昔の婚約者にして今は富豪(西村晃)の人妻(佐久間良子)、次女・順子(よりこ=吉永小百合)と俊介の親友・耕平(山本圭)の三者三様の恋模様、そして満州での医師(加藤豪)と地元大地主の娘(栗原小巻)の秘められた慕情...

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山本監督には些か人間描写の緻密さに欠ける印象を抱いているが、その一方、社会の動きと登場人物の動きの切り返しは抜群で、大変解り易くまとめている点は高く評価できる。必要以上の社会主義思想への傾きは感心しないが。

関東軍暴走の末の満州事変は、国連脱退(昭和8年)で日本の国際社会における孤立化をもたらしただけでなく、蒋介石の国民党と共産党に抗日統一戦線を作らせ、却って日本を長い日中戦争への道を歩ませることになるわけで、関東軍だけではなく政権に近づいた軍部の思慮を欠く戦略には怒りがこみ上げてくる。恐慌でのし上がった新興財閥の伍大産業がそうした軍部の間隙を突くように権謀術数を弄し【死の商人】として発展していく様も大変恐ろしい。

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一方国内では、暴力的な組織運動の取り締まりから自由思想の取り締まりに変化していった治安維持法に基づく警察の横暴は留まらぬところを知らず、耕平やその知人たる画家(江原真二郎)や作家もその被害を免れない。警察の非人間的行為には義憤を超えて、二度とこういう時代の再現はご免であるという思いを強くする。
 日本が国際連盟を脱退した昭和8年にプロレタリア文学者・小林多喜二が29歳の若さで獄死した事実も書き加えておこう。

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この記事へのコメント

蟷螂の斧
2021年08月15日 12:44
こんにちは。

>関東軍だけではなく政権に近づいた軍部の思慮を欠く戦略には怒りがこみ上げてくる。

軍部が暴走するとろくな事がないですね。

>権謀術数を弄し【死の商人】として発展していく様も大変恐ろしい。

軍部に財閥が関わってさらにとんでもない事になります。

>耕平やその知人たる画家(江原真二郎)や作家もその被害を免れない。

山本薩夫監督らしい描写。そして甥の山本圭お得意の左翼青年役。その前に拷問に遭う学生若杉(杉本孝次)も気の毒でした。

>小林多喜二が29歳の若さで獄死した事実も書き加えておこう。

元特高のその後も・・・。

>アメリカでもオールスター映画になると、通常のギャラより大分少なくなるというのが通例ですね。

一人一人の出番も少ないです。

>手元に二階接種しましたよという証拠が残るはず

若者たちがそれに賛成して欲しいです。

>日本でも80%くらいが二回接種した65歳以上の感染は僅か3%くらいになっています。

数字を使って書くと説得力があります。

>打った本人に色々な意味で利益が還元されるのだから

これも皆さんわかって欲しいです。
オカピー
2021年08月15日 22:49
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>山本薩夫監督らしい描写。

ちょっと社会主義的に過ぎる傾向がありますが、見応えある作品が多いデスね。
 一番気に入らない(笑)のは、1960年頃のお話なのに製作した1975年頃の車を使ったりするところ(二作で確認しました)。車というのはファッションと同じで時代を映しますので、これは考えて欲しかったなあ。僕など最初からダメだこりゃと思って興醒めしました。折角良い映画なのに。

>若者たちがそれに賛成して欲しいです。

それをしないと、この世はウーバーイーツばかりになってしまいます。
 憲法をないがしろにしているように見えて案外臆病な自民党政権(公明党はさほどないがしろにしていないと思われるので一応除きました)でも、やはり強権的な政策はなかなか出来ないようです。最初は飴を与えるべきですが、それで効果が出ないと入場禁止措置が必要になるでしょう(五輪強行の政権だから、戦争もやりかねないなどと仰る人も多いデスが、そんな度胸は安倍氏にも菅氏にもないです。但し、巻き込まれないとは限らない)。
 海外は当然やりますので、少なくとも海外へ行きたい若者は、接種するしかありません。

>数字を使って書くと説得力があります。

半世紀も読んできた東京新聞の読者は、五輪をすると感染が増えると感情的に言う人が多かったですが、東大の予想チームのデータでは、完全有観客でやっても1割しか感染は増えないとなっていました。色々なグループが色々な予想をしていましたから、これが絶対ではなかったにしても、僕が予想した通り、多分五輪開催そのものは感染増加にほぼ無関係でした(東京新聞も、記事の中でそれを認めた。但し、国民への心理的影響は別とした)。
 論理的に、しかも、数字を背景に語れば、あれほどの五輪中止論は噴出しなかったと思われます。
 この間の「朝まで生テレビ」で、(確か進行役の田原総一朗氏から)菅首相は五輪開催を全てに優先していなかったという意見がありました。何故なら、五輪を優先しているなら1月からワクチン接種を始めるべく厚労省と医師会に働きかけたはずだから。これ、実は春先からの僕の意見と全く同じ。
 そして、日本での治験の為だけに、可能であった年末からのスタートを二ヵ月近く遅らせたのは失敗だったと、田原氏に語ったそうです。

これ以上僕が何を言っても無駄ですので、後は様子を見守るだけ。
蟷螂の斧
2021年08月16日 20:42
こんばんは。今日は田中徳三監督、市川雷蔵主演「浮かれ三度笠」を見ました。楽しんで見れる映画でした。時代劇なのに中村玉緒が「ショック」、本郷功次郎が「ファニーフェイス」なんて言葉を使っていました(笑)。田中監督がわざとそのようにしたのでしょう。「蛍光灯」なんて言葉も出て来たし。

>1975年頃の車を使ったりするところ

山本監督は車に対してあまり興味もないし、詳しくないのでしょう。

>但し、巻き込まれないとは限らない

それが怖いです。中国が虎視眈々と狙ってると思います。そして池上彰氏が言ってましたが、中国の軍事力はアメリカを越えるのでは?

>可能であった年末からのスタートを二ヵ月近く遅らせたのは失敗だったと、田原氏に語ったそうです。

後悔しても時間は戻りません。

>西村晃

特攻隊の生き残りですよね。小柄だけど運動能力が高い。そして目が据わっています。

オカピー
2021年08月17日 21:08
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>今日は田中徳三監督、市川雷蔵主演「浮かれ三度笠」を見ました。
>田中監督がわざとそのようにしたのでしょう。

未見。
 大真面目な時代劇ではダメですが、アングルをつけた時代劇ならアリですね。
 この間まで読んでいた「大菩薩峠」にも、時代考証的には?が付くような単語が台詞の中に出てきましたよ。

>山本監督は車に対してあまり興味もないし、詳しくないのでしょう。

これは弁護できません。
 例えば、1960年頃の作品にミニスカートが出てきたらおかしいと思われるように、時代を明確に映し出し、時代ムードを醸成する自動車を軽視するのは良くないですね。
 山本監督が関心ないなら、スタッフが進言しないと。まだ十数年前の車ですから、中古店にずらりと置いてあったはず。今揃えるのは大変ですが。
 昭和の映画に時々平成語が出て来るのに出くわすこともありますが、その場合脚本家の言葉への関心度が解って甚だ興醒めます。

>中国が虎視眈々と狙ってると思います。

中国はアメリカと太平洋を二分しようとアメリカに提案した過去があるわけですから、全くうかうかできません。
 僕は反戦論者ですが、米軍に帰って貰い、自らは武器を持たないなんて能天気なことは言いません。それが理想ですが、その瞬間に中国と北朝鮮が襲い掛かってきます。

>後悔しても時間は戻りません。

感染を抑制する為に、野党やメディアは五輪開催に賛同して、政府を動かした方が良かったんですよ。ファイザーのワクチンが5月から6月にかけて予定通り(もしくはそれ以上に)入って来たのは五輪開催が前提だったのは明らかです。
「朝まで生テレビ」で、医者の上(うえ)氏が、コロナは12月~2月、7月~8月に感染が増大すると解っているので、現在の感染者数増大は当然であると仰っていました。増大自体は五輪もデルタ株も関係ないようです。ただ、デルタ株なので数が凄くなっただけです。
 その時期に増え(とその後突然減)る理由は未だ解らないようですが、9月に入って暫くすれば、感染者数は放っておいても下がっていくようですよ(デルタ株ですから、減少は緩やかで限定的かもしれませんが)。
蟷螂の斧
2021年08月18日 20:47
こんばんは。

>野党やメディアは五輪開催に賛同して、政府を動かした方が良かったんですよ。

五輪を餌にして若者たちにコロナワクチンをどんどん打ってもらう。

>米軍に帰って貰い、自らは武器を持たない

虫が良すぎると言う事ですね。

>スタッフが進言しないと

スタッフの意見を大事にする総力戦であって欲しかったです。

>脚本家の言葉への関心度

脚本家も周りのチェックが大事です。

>「大菩薩峠」

どんな言葉でしょうか?

>キャロル

現在用心棒さんのブログで話題にしています。ラジオのDJが「日本のビートルズと言ってました。」もう40年ぐらい前です。
https://www.youtube.com/watch?v=rV4fhbn-Bgg
オカピー
2021年08月19日 21:50
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>虫が良すぎると言う事ですね。

人が好すぎると言っても良いですね。
中国や北朝鮮が相手でも、犬養毅よろしく話せばわかると思っているのでしょうか?
 中国に占領された場合は、ウイグルやチベットで現在起きているようなことを考えないといけないでしょう。あな恐ろしや。

>どんな言葉でしょうか?

よく憶えていませんが、【青空文庫】へ行ってちょっと調べてみたら、ギターという言葉がありました。台詞ではないので、余り参考にはならないのですが。

>>キャロル
>ラジオのDJが「日本のビートルズと言ってました。」もう40年ぐらい前です。

ビートルズでもデビュー直後の頃。格好はデビュー前という感じですかね。

解散までを含めた意味では、日本のビートルズは、この間も申したように、スピッツですねえ。彼等は本当に面白い。ビートルズと違うのは、初期の方にぐっと変則的な楽曲が多く、変態的な歌詞も多く、楽しいということ。
 シングルで「ロビンソン」を出す頃になると、多少優等生的で大人しめになった感じ。

YouTubeの【みのミュージック】でこの度ベース部門第1位にポール・マッカートニーが選ばれました。嬉しいばい(笑)
 ボーカル部門がジョン・レノンではなくフレディ・マーキュリーだったのは面白くないけれど・・・
蟷螂の斧
2021年08月21日 09:42
おはようございます。昨夜は映画「戦争を知らない子供たち」を見ました。
酒井和歌子が演じる女性教師が素敵でした。
一昨日はドン・シーゲル監督、シャーリー・マクレーンとクリント・イーストウッド共演「真昼の死闘」を見ました。双葉師匠はこの作品を結構褒めていました。

>中国に占領された場合は、ウイグルやチベットで現在起きているようなことを考えないといけないでしょう。あな恐ろしや。

その通りです。さてコロナワクチン接種2回目に行って来ます。
蟷螂の斧
2021年08月21日 20:31
こんばんは。連投で申し訳ありません。

>スピッツ

我々夫婦が新婚の頃に放映されたドラマの主題歌。
https://www.youtube.com/watch?v=QLJxdkl5wJI
初々しい夫婦だった頃を思い出します。

>ベース部門第1位にポール・マッカートニー

ポール自身もベーシストとしての自分を一番気に入っている。ある本で読みました。

>ボーカル部門がジョン・レノンではなくフレディ・マーキュリーだった

面白くないですねー!
https://www.youtube.com/watch?v=8rTb_ghUbtg
この曲はジョン・レノン以外の人では歌えません。
オカピー
2021年08月21日 21:26
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>昨夜は映画「戦争を知らない子供たち」を見ました。

少年の頃大流行した曲で、その後20年くらい「のど自慢」でよく歌われましたねえ。
 そのタイトルを冠した映画も知っていましたが、酒井和歌子が出演していましたか。割合好きな女優でした。今でもCMに見ますね。

>双葉師匠はこの作品を結構褒めていました。

師匠は、ドン・シーゲルが好きなんです。星が多くない作品でも楽しんじゃっている感じがします。
同じ年に公開された「ダーティハリー」を「フレンチ・コネクション」と比較して“映画的に段違い”と仰っていました。勿論「ダーティハリー」が段違いに良いということです。社会性とかそういうことを過大に評価しないのが師匠でした。

>コロナワクチン接種2回目に行って来ます。

いかがでしたか?

>>スピッツ
>我々夫婦が新婚の頃に放映されたドラマの主題歌。

思い出の曲ですな^^
この曲の歌詞にも出てきますが、スピッツのコンポーザーでボーカル、ギターと大車輪の活躍をする草野マサムネ君の歌詞には、動植物が良く出てきます。
初期の変態的な歌詞、演奏も楽しいので、時間があったらどうぞ。YouTubeにはないでしょうから、図書館などで借りるなどする必要があるかもしれません。

>ポール・マッカートニー

30歳未満が投票者の80%を占めるのに、解散してから50年経つのにビートルズ人気は凄いですねえ。人気と新鮮さが勝負のポピュラー音楽界にあってこれは正に奇跡ですねえ。モーツァルト以上の凄さではないですか?

>この曲はジョン・レノン以外の人では歌えません。

ジョンの乾いた色気はちょっと類がないですよねえ。オアシスのリアム・ギャラガーが似ているとか、ニルヴァーナのカート・コバーンが似ているとか言われますが、やはりジョンにはなれない。代替えが効かないという点で、ジョンに敵う歌手はいないと思うわけです。

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