映画評「鏡獅子」

☆☆★(5点/10点満点中)
1935年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり

小津安二郎最初のトーキー映画は唯一のドキュメンタリーだったというのが面白い。

日本の古典芸能にも多少は興味があるが、なかなか観る時間がない。たまにNHK教育の「芸術劇場」などで歌舞伎狂言を観ることもあるが、独立した歌舞伎舞踊は避け気味でござる。
 これは昭和10年に小津安二郎が撮った芸能ドキュメンタリーで、同じくNHK教育「芸能花舞台」の映画版と考えれば当たらずとも遠からず。

六世尾上菊五郎が当たり役である歌舞伎(長唄)舞踊「鏡獅子」を演ずる様子を収めたもので、最初のおよそ5分を菊五郎と演目についての解説に当てている。

踊りは、女小姓・弥生が大奥で舞ううちに、獅子頭を手にして獅子の精霊に取り付かれてしまう、という内容。
 袱紗さばきや二本扇が鮮やかだが、興奮を誘われるのはこけつまろびつする花道への引き込み(画像参照)で、なるほど名人芸と言われるだけのことはある。これが前シテ。
 後シテでは隈取りをして豪快に踊りまくる。前シテとの対照が強烈。

画像

といった次第で、演目そのものの見事さは十分確認出来るものの、映画としては正面水平アングル、斜め水平アングル、斜めハイアングルの固定カメラで構成されているだけで特別に面白味があるわけではない。しかし、パフォーマンスの素晴らしさを伝えられている以上は芸能ドキュメンタリーとしてはとりあえず合格としましょう。

この記事へのコメント

2007年07月06日 19:32
トラックバックしました~。
私この作品とっても好きなんです。
内容も好きですが、ナレーションも好きなんです。雰囲気いいですよね。

生まれてから一度も歌舞伎を観たことはないのですが、歌舞伎役者は全員こんな風に見事に演じるのでしょうか?
長い年月の末、芸が劣化するということはないのかなぁと、思ったりしてしまいます。
オカピー
2007年07月07日 02:44
カカトさん、こんばんは。

専門家ではないですので何とも言えませんが、映画俳優と違って厳しい訓練を経ていますから、素人目にどなたも素晴らしいですね。
芸の劣化は当然あるでしょうね。ただ、切れが無くなれば味で補うといった具合になっていくのだと思います。

この時代はTVがないですから、こういう文化映画がもっと残っていてもいいと思うのですが、意外とないようですね。

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