映画評「プロデューサーズ」(2005年版)

☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督スーザン・ストローマン
ネタバレあり

メル・ブルックスが1968年に発表したドタバタ喜劇映画を彼自身が舞台ミュージカル化したブロードウェイ・ミュージカルの映画化。言わば逆輸入映画である。

お話は大体そのままで、失敗作の連続で収支のやりくりに四苦八苦している演劇プロデューサー、ネイサン・レインが、プロデューサーになるのが夢という会計士マシュー・ブロデリックの「大失敗作を作れば却って儲かる」という珍アイデアにその気になり、二人で最低の脚本、最低の演出家、最低の役者を選び出す。
 脚本はナチス信望者ウィル・フェレルが書いたヒトラー賞賛のドラマ、これにオカマの演出家と素人同然の役者と来れば大失敗は約束されたようなものだが、豈はからんや、好評を得て大ヒットしてしまう。

画像

楽屋裏の苦労話に風刺を込めた物語は、ヒトラーを演ずる役者をめぐる部分を除くとオリジナルとそう大差がないので、特に触れない。

さて、先日の「RENT/レント」で60年代以前のミュージカル復活を待望していると書いたので、さぞ僕が喜んだと思われるだろうが、実は喜びも半分である。

60年代の「努力しないで出世する方法」を思わせる場面を別にすればダンスの基本はクラシック調で、30年代のレビュー映画、フレッド・アステア=ジンジャー・ロジャーズのタップ・ペア等を思わせる優雅なダンス・シーンが豪華でなかなか宜しい。
 一方、歌曲では、「踊る大紐育」の「ニューヨーク・ニューヨーク」に似たナンバーが興味を引いた以外は、全体的に60年代風で余り面白くない。

とは言うもののクラシックなミュージカル要素に溢れているのに、どうして喜べないのか。
 ひとえに映画的演出の欠如である。舞台監督のスーザン・ストローマン女史にメガフォンまで取らせたのが失敗で、映画の演出にまで頭が回っていないというご様子。これでは小津安二郎が尾上菊五郎の舞踊を収めた芸能ドキュメンタリー「鏡獅子」と大差がないではないか。かつてのミュージカル映画のように舞台的演出と映画演出を二人に分担させれば良かったのである(例えば、「ウエスト・サイド物語」では振り付けをジェローム・ロビンズ、映画演出をロバート・ワイズが担当した)。

撮影撮影には十分実績のあるジョン・ベイリーとチャールズ・ミンスキーを起用しているが、首を傾げたくなるほど、同じサイズの映像をワン・パターンで繰り返しているだけで面白味がなく、映画的ダイナミズムを欠く。舞台的なところが残っていると感じた「RENT/レント」でも、これに比べれば遥かに映画的だった。
 監督には80年代以降の舞台ミュージカルの最もダイナミックな映画化と言える「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」のフランク・オズ辺りを起用したら面白かったのではないかな。

役者は概ね好調で、「奥さまは魔女」で魅力なしと酷評したウィル・フェレルも今回は適役。ネイサン・レインの回想メドレーは圧巻で、どちらかと言えば興味の湧かないブロデリックもしっかり歌って踊れていたのには感心した。序盤の二人芝居は舞台的すぎてちょっと鼻に付きますがね。

小津とオズではおおつがい(大違い)。

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  • ★「プロデューサーズ」

    Excerpt: ブロードウェイの大ヒットミュージカルを完全映画化。 でも、元は映画をミュージカル化したらしいけど。。。 だから、リメイクでもあるらしいね。 Weblog: ひらりん的映画ブログ racked: 2007-07-19 22:25
  • プロデューサーズ

    Excerpt: まず私は、ミュージカルがちょっと苦手・・・。 そんな私ですが、本作はけっこう楽しめた。 ブロードウェイに行ったかのような気持ちにさせてくれる。 “笑い”という点においても、英語の微妙.. Weblog: UkiUkiれいんぼーデイ racked: 2007-07-21 15:10
  • <プロデューサーズ> 

    Excerpt: 2005年 アメリカ 134分 原題 The Producers 監督 スーザン・ストローマン 製作 メル・ブルックス  ジョナサン・サンガー 脚本 メル・ブルックス  トーマス・ミーハン .. Weblog: 楽蜻庵別館 racked: 2007-08-03 21:28
  • プロデューサーズ

    Excerpt:  エンドロールが終わるまでじっくり楽しめます。最後に脚本のメル・ブルックスまでちゃっかり登場♪ Weblog: ネタバレ映画館 racked: 2007-08-23 23:04