映画評「無頼の谷」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1952年アメリカ映画 監督フリッツ・ラング
ネタバレあり

フリッツ・ラングはご存知のようにドイツ時代に歴史的な作品を数々ものした後、ヒトラーの台頭によりフランスを経てハリウッドに逃げ渡った。戦時中にはなかなか締まった良いスリラーを発表したが、戦後の作品は余りパッとしない。
 これはその時代の西部劇で、マレーネ・ディートリッヒをヒロインに起用したことでそれなりに面白くなっている。

映画はこの時代の西部劇のお決まり通りナレーションの代りのバラッドで内容を解説する。以下の如し。
 雑貨店を営む婚約者を殺された牧童アーサー・ケネディが犯人の無法者を追ううちに、事件の鍵になりそうな女親分マレーネの居場所を掴む為にメル・ファーラーをリーダー格とする無法者の群に身を投じる。

画像

ここまでマレーネが回想の中ばかりでなかなか姿を現さないのでちょっとイライラし始めるが、実はそれが既に伝説的な女優であった彼女の神秘性を高める手段なのだ(双葉十三郎氏も同様の意見)と解れば、逆にゴキゲンになれる。回想の中の彼女が歌姫なのもそういう狙いの一つであり、西部劇としての面白さではなく、こういう風に女優を扱うというひねりの利いた趣向に僕は☆一つ分くらい楽しんだわけである。

ケネディ、マレーネ、彼女の愛人ファーラーの性格付けに曖昧さや類型性を避けることが出来たのでドラマ部分が比較的充実し、荒馬乗り、射撃の腕前比べ、対決など西部劇らしい見せ場も一通り揃っている。とは言え、ドイツ時代のラングの面白さを知る僕には些か寂しい出来栄えではあります。

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この記事へのコメント

2007年07月10日 18:22
こんばんは^^

西部劇となると私が登場するわけです。
登場してすぐに撃ち殺される雑魚みたいなものですが(笑)

ラングというとドイツ時代のサイレントは 「メトロポリス」 しか観たことがありません。お話にならなくてスミマセン^^;
アメリカに渡ってからの代表作はそれなりに観ておりますが、本作は初見でした。

私は何かと口うるさい映画ファンを自認しておりますが、西部劇に関しては、かなり大らかに鑑賞しています。
ラングの演出で伝説の女優デートリッヒが観られた。それだけで満足した、というフヌケた感想にございます(笑)
映画の出来うんぬん、西部劇としての評価は、まあ、どうでもいいかなと^^;

なるほど! デートリッヒの登場を先延ばしにした不自然なプロットは、「神秘性を高める手段」 だったわけですね! 納得です!
クロースアップの多様や、スタジオのセットでの撮影なども、むしろ面白がって観ていたくらいで。
ドラマ部分の三角関係がなかなかに面白く、ディートリッヒの「お姐様なキャラ」がツボでした(笑)
オカピー
2007年07月11日 03:49
優一郎さん、こんばんは。

戦前特にサイレント時代のラングは圧倒されますが、意外と知られていない「スピオーネ」が好きだったりします。日本では短縮版公開だったので、余り評価されていません。

さて、本作ですが、最初マレーネがなかなか出てこず、出てきても回想なので相当イライラしたのは事実。ところが、そこへ天啓ですよ。閃きました! 伝説の女優、悪く言えば落ち目の女優を生かす手段ではないかっ、てね。ここで消えても不思議ではなかったマレーネは、その後「情婦」「ニュールンベルグ裁判」と暫く活躍することになります。
考えてみれば二人は祖国を捨てた同国人ですよ。ラングは帰りますけどね。

優一郎さん、今後とも光の当たらない作品にコメントを(笑)。

それからですね、「ああ爆弾」「殺しの烙印」のTBをお願いしますよ。
「ああ爆弾」は個人用メモから転載しただけの手抜き記事ですけど、よろしく。

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