映画評「マイ・アーキテクト ルイス・カーンを探して」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督ナサニエル・カーン
ネタバレあり

建築にはさほど興味がないのでこの間都知事選に出馬した方他5名くらいしか名前を知らない。このルイス・カーンなる建築家も知らなかった。
 本作は、息子ナサニエル・カーンが彼の世界中に残した足跡を辿り人間を追及するドキュメンタリーで、元来TV用に作られたもののようだが、アメリカでも日本でも劇場公開された。

そもそもルイス・カーンなる人物は魂の彷徨者とでも言うべき磊落な人で、本妻を含めた三人の女性との間に子供を儲けた。ナサニエルは一番最後の子供であり、彼が11才の時ルイスはペンシルヴェニア駅で身元不明の死体となって発見されている。

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ナサニエルにとって父親の記憶が限られている故に、本作は半ば第三者的な立場で見られる部分と肉親への情にほだされる部分が交錯する。未編集的な部分を意識的に残した演出と並んで、その辺りが興味深い。

ルイスはエストニア出身のユダヤ人で顔に火傷痕がある。遠目にはダニー・ケイに似た人物で、建築家としては永久に価値を残す古代的な様式に拘ったようである。タージマハールのように縦方向への美意識が強く、奥行きのある左右対称性を重視している建築物が多い。一見無粋に見えるリチャーズ医学研究棟、ソーク生物研究所(上の画像)、キンベル美術館、インド経営大学、バングラデッシュ国会議事堂(下の画像)等々。

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建築家を超えた思いがあったに違いないエルサレムのユダヤ教会建設(結局頓挫)を巡る元市長へのインタビューの後、バングラデッシュで青年は父親の家族的ではない全世界的な愛を理解するのだが、我々観客は芸術家の芸術家たる所以と脆弱な家族関係に温かさと寂しさの入り交じった複雑な思いを抱く。

といった次第で、一般映画ファンには向かないが、建築に興味のある人なら一見の価値あり。

ナサニエルはピーター・バラカンを思い出させる声と話し方で、他人の空似というのもあるものだと妙に感心した。

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