映画評「ポセイドン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督ウォルフガング・ペーターゼン
ネタバレあり

70年代のパニック映画ブームの走りは「大空港」だが、決定打になったのは72年の「ポセイドン・アドベンチャー」であろう。パニック場面と人間模様との絶妙なバランスが秀作になった所以だった。あれ以上人間模様を挿入したらポセイドン号の前に映画が沈没しただろうが、そのぎりぎりのところで実に上手く作られていたのである。

さて、21世紀に入りリメイク数が加速しているのはCGが原因と分析している。本作などはその最たるもので、とにかく全長300mという設定のポセイドン号をぐるりとなめていく開巻直後のショットは人間以外殆どCGらしい。自然な質感で大変素晴らしい出来栄えである。
 なめた上で船内に入って行く長廻しは実写なら圧倒されただろうが、CGと分っているので、ヒッチコック「フレンジー」開巻部分のような興奮は覚えない。

800人の客を乗せたポセイドン号が大津波にあおられて転覆、元消防士にして元市長のカート・ラッセル、その娘エミリー・ロッサムと恋人マイク・ヴォーゲル、ギャンブラーのジョシュ・ルーカス、自殺しようとしている建築技師リチャード・ドライファス、シングルマザーのジャシンダ・バレットとその息子ジミー・バネット、密航中のラテン美人ミア・マエストロの8人が最後の方まで生き残り、今では上になったプロペラ部分を目指して、火や水を避け、時には潜水をして突き進む。

上と下に分断された二組が合流するのが比較的早く、事実上一直線的にお話が進んでいくのは大いに結構。しかし、船の内部に限定された一グループの行動という単調さを避ける工夫がちょっと足りない。アクセントとして、オリジナルほどの分量は必要ないものの、もう少し面白味のある人生模様を加えたほうが良かっただろう。
 しかし、本来パニック映画に人間描写など無用。スペクタクルの隙間を埋め、繋ぐのが人生模様であり、役者の演技である。それらは酒の肴であって、酒そのものではない。無くて済ませられるのが理想である。従って、肴の悪口に終始する酷評の大半は典型的な【木によって魚を求む】愚考と言うべきで、肴が駄目なら酒だけを楽しめば良い。

実際にはスペクタクルだけで持ちこたえられない話である以上、ドラマ部分の弱さが全体のイメージを損なっているのは確かである。前作の牧師ジーン・ハックマンに相当するらしいラッセルがそこまで精神的支柱とはなりえていないのがドラマ的に物足りず、総合力ではオリジナルにかなり遠い出来と言わねばならない。
 しかし、映像に限って言えば上の部類で、CGは災害の描写に向いているという持論通りに、十分に手に汗を握らせてくれる。いや、窒息寸前にさせてくれる、と言うべきか。

「バックドラフト」で消防士役をやったラッセルが元消防士なのは明らかに楽屋落ちを狙ったものだが、「潜水艦に乗ったことでもあるのか」という台詞は「Uボート」が出世作だったウォルフガンブ・ペーターゼンが監督ということに関連付けた洒落かもしれない。

。ずわ叶とこるす明証を論要不様模間人画映クッニパ

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この記事へのコメント

2007年06月12日 17:24
~パニック映画人間模様不要論を証明すること叶わず。~

私ったら“転覆した”文字を元に戻しちゃいましたーー!^^

ブラボー!!プロフェッサー!!

  。ずわ叶とこるす・・・最初何事か起こったかと思いましたよ。(笑)

ヤッター!おもしろ~~~い!♪

最近、超話題になっております「300」(スリーハンドレッド)。
登場している人間までもが最新CGに見えるそうです。
全編グッチャグッチャの格闘技映画だそうで私はまだ観ていませんが
プロフェッサーの評価が今から楽しみですわ!(^^)
あとからTB走りますので。まずはコメントを。
2007年06月12日 17:48
いま、TBさせていただいて、ひょっと日付を見ると
あんらまぁ~、私、6月13日(去年)に書いた記事でしたわ~。
プロフェッサーは、おそらく日を回ったお時間に私のコメントを
読まれるでしょうから、ほ~~ら、偶然よ~♪

マイ「ポセイドン」記事コメントにいらしてくれたプロフェッサーと
私、とっても懐かしいお話してますわよ~~~!(^^)

ところでプロフェッサーの星座は何ですのん?
いえ、ちょっと参考までに。^^
ウソかホントかわかりませんが(笑)
優一郎さんはカニ座だそうです。
私は正真正銘の双子座ざます。♪
2007年06月12日 20:22
プロフェッサー、こんばんは。

私は恥ずかしながら、オリジナルを鑑賞していないのですが、そのおかげか、単純な脱出アクションとして楽しんで鑑賞しました。

たしかに、規模的にも物足りない部分はあり、作品と厚みというか、深みという部分ではまったくないといっていい位ですが、う~ん、やはり私としては脱出アクションとして、単純に楽しんでみるのがいいのかなと思います。
オカピー
2007年06月13日 02:16
viva jijiさん

>6月13日
何だか不思議な縁があるんですよ。時々びっくりします。
一番びっくりしたのは、ゴーゴリ「外套」を青空文庫でチェックした直後何かの記事に対する私のコメントへの返答で「外套」という文字を発見したこと。こんなことなかなかありませんよね?
あの頃は蜜月でしたね。いや~、なに、い、今でもそうですけど(笑)。

>文章の転覆
面白いでしょう。二度と使えぬ必殺技です(笑)。
いつかやろうと思っていたんですけど、やっと実現しました。
気分爽快!

私は何故かviva jijiグループに多いB型。
どっちかはっきりしてほしい、かに座またはしし座。つまり、7月23日生まれ、でござんす。プロフィールに書き込みましょうか?
オカピー
2007年06月13日 02:21
イエローストーンさん、こんばんは。

いや、私は敢えて本当の秀作にするならそういった弱点を克服をする必要があるというニュアンスで言ったまで。
一般的なレベルで言うなら合格ですよ。知ったかぶりの映画マニアが、木に登って魚釣りをするような馬鹿なことばかり言っているのに比べると、イエローストーンさんは冷静で、的を射た批評であると感心しましたですよ。
主旨は全く同じと思ってくだされたし。

そちらへ遊びに行きますね。
2007年06月13日 21:33
プロフェッサー、こんばんは。
拙ブログにコメントありがとうございました。

そうですね、ほんとおっしゃる通り、描く規模と人間関係を掘り下げれば、作品の質も上がり得ますよね。しかし、物足りなさはややあるものの、これはこれで楽しむべき作品であり、つくりですよね。

そして、この映画に限らず、映画評や感想などで、批判することが通だと思っている方が中にはいるように私も感じます。ああいう見方しかできないと、映画を楽しむことができずに、そして真の内容をみることが出来ていないような気がします。私ができているわけではないですけど・・・。
非常に哀しいことです。
オカピー
2007年06月14日 14:59
イエローストーンさん

批評する映画が何を目指しているかを正確に理解した上でなければ、批判はただの悪口になりますよね。100%把握するのは無理でも基本的な狙いくらいは掴まないと。解らなければ謙虚に語れば良いだけのこと。

そういう意味で話の根幹は同じでも、本作はオリジナルと目的に違う部分がありました。何故今リメイクするのか。当然CGによる見せ場を多く見せたいが為です。だから記事の冒頭でその旨を述べました。

私は【駄作】と言うに躊躇しませんが、【最低】【史上最低】は口が裂けても言えない。私の【駄作】はかなり幅の広いものですし、その映画に愛情を込めた言葉。<つまらない映画は面白い>が私の信条です。
一方、【史上最低】からは何の愛情も感じられません。【史上最低】は文字通り世にある幾十万の映画全てを観て初めて言える言葉です。
2007年06月14日 15:11
プロフェッサー、こんには。
まさに、おっしゃる通りですね。拍手!

私も作品によっては、過去に「最低」という言葉を使っているかも・・・。まあ、それは私が鑑賞した中でなんですね。
では、また。
オカピー
2007年06月16日 01:58
イエローストーンさん、こんばんは。

色々条件をつけて言うなら【最低】も良いでしょうが、そういう言葉を使う人に限って色々な作品に使う。つまり【最低】はつまり【ひどい】の代名詞なのですが、それなら【ひどい】で良いわけです。しかし、彼らが【最低】【ひどい】という作品は実際にはそうひどくない。というのも、本当にひどい作品を殆ど観ていないから。

「つまらない映画こそ面白い」わけですから、私はこれまでどんな映画を観ても「時間を返せ」などという言葉を言ったことはありません。良い反面教師ですから。「お金を返せ」に近い状態はありますが(笑)。
私がここで最低の1点を付けた作品も実は最低ではないんです。その下に7段階もありまして、将来的には0.2や0.5といった作品を取り上げることになるかもしれません(笑)。
2007年08月11日 07:42
ご体調を崩しておられるとか。いかがでしょうか?
こんな時に私のコメント対応は申し訳なく、しばらく読み捨てておいていただきたく・・・^^;

私の感想もほぼプロフェッサーと同じですが、パニック映画というジャンルに対する考え方が微妙に違う気がします。
70年代にはじまった一連の「パニック映画」という狭義のジャンルで語ると「パニック映画=スペクタクル群像劇」って風に定義できちゃうような気がします。
(始祖は「イントレランス」だって説でも頷けますが)
本作はアクション、スペクタクルの要素が強く、パニック映画には欠かせない群像劇が物足りなかった、ということになりそうです。
2007年08月11日 07:44
(続きです)

また、冒頭のCG、私はなかなかよく出来ていると思って観ていたら、妻の「もろCG!」って言葉に目が覚めました(笑)
これがSF映画で架空の宇宙基地や空母だったら、このテロテロした質感でもさほど気にならないのかもしれない、なんて風にも思います。
「CGは災害の描写に向いている」は、まさにその通りですね。少なくとも豪華客船の描写だったり、人間そのものをCG化して実写の中に混ぜるレベルには総じて達していないような気もします。

本作は98分。ダラダラと3時間近く見せられるタコ映画に比べれば、「時間を返せ!」とは決してなりません(笑)
オカピー
2007年08月12日 02:01
優一郎さん、こんばんは。

大分良くなりましたよ。まだ食事がお粥なのは寂しいですが。TT

>パニック映画の定義
また難しいことを(笑)。
私のは理想論です。今までそれができた作品はありません。しかし、「タワーリング・インフェルノ」は究極にその理想に近かったと思いますね。
あんなに人間描写があったではないか?
うんにゃ、あれはサスペンスを守り立てる人間描写であって、隙間を埋める人間模様ではなかったと考えます。つまり人間描写≠人間模様。

いくら私でも血が通っていない人間のお話なんてみたくない。しかし、上手い監督と役者が揃えば大げさな話をこしらえなくても人間描写はできます。

何故人間模様に否定的になるかと言えば、全く逆の立場の人がいるからです。まるで人間模様を観るが為に「ポセイドン・アドベンチャー」を観るのだと云った... これは違うと思います。それならパニック映画ではなく、人生ドラマを見れば良い。それ為にジャンルは生まれました。
オカピー
2007年08月12日 02:02
(続きます)

ギラーミンの旧作に「ハイジャック」というのがあって、これが駄目パニック映画でした。あるいはご覧になっているかと思いますが、何しろハイジャックされてパニくっている間、機長の回想場面がしつこいまでに挿入されるのですから。ハイジャック犯に爆破される前に飛行機は墜落します、という作品でした。

CGも余り精度が上がると良し悪しでしてね。本来実写で済むオートバイや自動車の滑走までCGで描くようになる。「栄光のル・マン」を観れば、実写のほうがCGより凄いと解りそうなものを(でも解らないのが今の若い衆)。「七人の侍」のあの凄まじいアクションを「CGじゃないから迫力がない」と一蹴。とんでもない価値観でしょう?

お気遣い、どうも有難うございました。

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