映画評「戦場のアリア」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年フランス=ドイツ=イギリス=ベルギー=ルーマニア映画 監督クリスチャン・カリオン
ネタバレあり

最近では珍しい第1次大戦を背景にした戦争映画で、たまにはこういう変化球も良い。2006年度アカデミー外国語映画賞ノミネート作品。

1914年12月25日、フランス北部の前線、フランス軍はスコットランド軍の援軍を得てドイツ軍と対峙している。フランス軍には妻が子供を産んだが名前が分らずにいる中尉ギヨーム・カネ、スコットランド軍には勇んで出征したものの兄を眼前で失ってしまった一兵卒スティーヴン・ロバートスン、ドイツ軍には沈着冷静な中尉ダニエル・ブリュールなどがいる。
 一方ドイツのソプラノ歌手ダイアン・グルーガーが出征した恋人のテノール歌手ベンノ・フユルマンに会う為に前線にいる皇太子の前で聖歌を披露するというアイデアを敢行、その足で塹壕を訪れる。
 その時スコットランド軍の駐屯所からバグパイプの音が響き、誘い出されるようにフユルマンが「きよしこの夜」を歌い出し、中立地帯に進み出ると、各塹壕から合唱が木霊する。やがて三軍の指揮官たる中尉三人が集い一日だけの休戦を誓い合い、各軍膝を交えて談笑、翌日も交戦を返上してロバートスンがやり始めた死体埋葬の作業に費やす。

第1次大戦中に起きた奇跡をベースにしたお話というが、女性が最前線を訪れるのは恐らく創作であろう。しかし、彼女に説得されたフユルマンがフランス軍に手を上げて平和裏に捕虜になるという、オー・ヘンリーの小説もかくやと思われる温かいエピソードに繋がり、実話という枠を超えて大人のメルヘンといった味わいを生み出している。元来リアリズムに拘る必要のないメルヘンティックな物語なのだから悪くないアイデアと言って良い。

国家と個人の関係は反戦映画の傑作「西部戦線異状なし」でも扱われた定番的なテーマであるが、「ドイツ人を皆殺しにしろ」と叫ぶスコットランドの主教を絡めて上位聖職者(宗教そのものと言い換え可能)の偽善を暴露し、聖歌「きよしこの夜」を歌う神父や軍人たちの純粋な宗教心と強いコントラストを成して反戦的なムードを盛り上げる。

クリスチャン・カリオンは日本初登場の監督だが、正攻法にきっちりと作りなかなかのお手前。

配給会社の宣伝係-本当は「戦場のメリークリスマス」というタイトルにしたかったんだ。

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この記事へのコメント

Lisa
2007年05月18日 21:42
遅ればせのトラックバック、気がついてもらえるといいけど・・・。
主役の二人のことですが、ダイアン・クルーガーは「トロイ」のヘレンの時より美しかったです。そして夫役のヘンノ・フュルマンは先日「ニーベルンの指輪」のジークフリートの方が別人のようにたくましく素敵でした。
オカピー
2007年05月19日 03:45
Lisaさん、大丈夫、ちゃんと気付きましたよ。

ダイアン・クルーガーは綺麗ですね。
昔陸上選手だったクラッベも彼女に似た美人でした。
どうも私はドイツ系が好みのようです(^^)

>ニーベルンゲンの指輪
WOWOWで放送していましたね。余裕がなくて観られませんでしたが。
その昔フリッツ・ラングが作ったサイレント映画「ジーグフリート」は素晴らしかったですよ。

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