映画評「女王蜂」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1978年日本映画 監督・市川崑
ネタバレあり

市川崑監督=石坂浩二主演による金田一耕助シリーズ第4作。

昭和7年、伊豆天城は月琴の里にある旧家・大道寺家の屋敷で、令嬢・琴絵(萩尾みどり)の婚約者が密室で殺害される。現場にいた琴絵が犯人と思われるが、関係者の手で自殺に偽装され、彼女は未婚で娘・智子を産み、その後死去する。
 これがプロローグで、その19年後成人した智子(中井貴恵)に言い寄る求婚者の一人が殺され、大時計の歯車に挟まれてバラバラ死体となる。時を同じくして金田一が弁護士の依頼により大道寺家に関する脅迫状を持って同家を訪れ、真相究明に奔走する。

28年ほど前に観た時以来二度目だが、この歯車の場面と後で出て来るお茶会の場面はよく憶えている。大時計や時計の歯車がクラシックな妖しいムードを駆り立て、とにかく艶やかな印象があった。

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新聞記事を切り張りして作った警告状、寄木細工による密室など古典的な気分が満点だが、婿として大道寺家を引き継いだ現当主(仲代達矢)を始め、人物関係が余りに複雑で、ページを捲り返して確認出来る小説とは違い、終盤面倒臭くなってしまう。本格ミステリーとしては人物関係とその説明に重きが置かれ過ぎてはいないか。事件解決後に20分ほど解説的場面が加わるのも構成的にすっきりしない。

基本的なテクニックは前三作と同じだが、新手(あらて)は68年頃から70年代中盤くらいまで流行した分割画面である。事件が起きた後画面が6分割されて夫々の反応を捉えるのが面白い。

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しかし、僕が一番気に入っているのは色彩感覚の豊かさで、紅葉、茶会(野点)の敷物、そして毛糸玉と赤色を連ねていくような演出を取り、トリックにも繋げている点に特に感心させられる。そして列車の中で金田一が使っている毛糸玉は青。色々と不満があるのも事実だが、さすがに崑ちゃん、上手いもんです。

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高峰三枝子、岸恵子、司葉子の競演も見もの。

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この記事へのコメント

2007年05月06日 22:54
この「女王蜂」は、私は市川+石坂5作品(リメイクはいれません)の中で、実は「手毬唄」の次に好きな作品です。
ただ、5,6年みていないのですが・・・。
原作とはけっこうはなれた設定になっていると記憶してますが、市川監督の独自のものとしてかなり魅力を感じます。たしかに人間関係等複雑ですが、ある程度描かないと私は逆にミステリーとしてのおもしろさが薄れて、物足りないものになってと思います。トヨエツで撮った「八つ墓村」のように・・・。
しかし、映像はシャクがありますからね。前3作と違い原作自体がけっこう厚みのある深いものになってますからね。かなり苦心の作だと思います。それは一番、「病院坂」にいえるのですが、よく映像化したと思います。
それを考えると、本作もよくまとめて描いていると思います。おっしゃる通り、分割の画は効果的ですね。それと私は金田一の登場のシーン、焦点のぼけた画でバスがうつり、その中にすわる金田一、そしてその彼に焦点があっていく。これが大好きなんです。
指摘されている色づかい、毛糸の色の変化まではおぼえていませんでした。これも近く見直したいと思います。
2007年05月07日 00:45
オカピーさん、度々すみません。

上記コメント通り、私はシリーズ5作中、2番目に好きなのですが、智子のキャストだけはいただけないと思っています。中井貴恵では、女王蜂ではないよな~と。彼女のデビューですが、なんとも・・・。
オカピー
2007年05月07日 03:13
イエローストーンさん、こんばんは。

古くなったわがメモリーならぬ灰色の脳細胞が、後半ごちゃごちゃしてほぼフリーズしてしまいました。性能が落ちました(笑)。
それはともかく、小説はいざ知らず、映画の醍醐味は映画的であるということ。本作でも市川監督は映画的に作っていますが、やはり終盤はさすがの崑ちゃんを以ってしても説明的になったかな、という気がしています。
しかし、あの色使いは素晴らしいでしょう。最初に観た時からあの赤に唸りっぱなしだったんです。
金田一が最初に実験している毛糸は薄い緑のような中間色ですが、トリック的に使われる毛糸玉は血をイメージする赤、最後の毛糸玉は青。事件からの解放を恐らくイメージし、コントラストを為していました。こういうところが気が利いているんですね、崑ちゃんは(笑)。

>中井貴恵
仰るとおりで、演技的にもちょっとたどたどしい感じ。
先代<女王蜂>の萩尾みどりのほうが好きです。
ぶーすか
2007年05月11日 11:39
私も中井貴恵の起用には首をかしげます。イエローストーンが御指摘したとおり「女王蜂」というネームをもらうには毒がなさすぎるし、男を惑わすほどの美女でも色っぽいわけでもない…かなり不満が残りました。こんな正反対なキャラをわざわざ起用した市川監督の狙いとはなんだったのかなぁ…?
オカピー
2007年05月12日 00:45
ぶーすかさん

<女王蜂>と言えども、実際には男たちが勝手に不幸になっていくという設定で、中井貴恵を起用したのは<処女性>の表現だったと思います。新人で演技的にも未開発というところを利用したのだと思います。
イエローストーンさんの分析とも関連しますが、原作より清純さを市川監督は求めていたのでしょう。
蟷螂の斧
2020年04月15日 10:12
こんにちは。
公開当時に随分話題になったのを覚えています。新人だった中井貴恵が佐田啓二の娘という事も含めて。それから随分年月が過ぎてからこの映画を見ました。

>大時計の歯車に挟まれてバラバラ死体となる

これは凄い場面でしたねー!演じた石田信之さん。見事です。

>後で出て来るお茶会の場面

他の結婚相手候補(中島久之)も毒殺・・・。

>とにかく艶やかな印象があった。

市川崑監督の手腕でしょう。

>ウッディー・アレンとミア・ファロー

アレン監督の屈折した部分。結構好きです(笑)。

オカピー
2020年04月15日 18:05
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>公開当時に随分話題になったのを覚えています。
>新人だった中井貴恵が佐田啓二の娘という事も含めて。

当時スタートしたばかりの角川映画は、いずれも話題になりましたね。やはり金田一耕助を再発掘した貢献が一番です。後の石坂耕助は東宝の製作になりますが。

>これは凄い場面でしたねー!演じた石田信之さん。見事です。

残虐ですが、大正時代のエロ・グロ・ナンセンス趣味が再生したような気がし、何だか嬉しかった。

>アレン監督の屈折した部分。結構好きです(笑)。

色々ありましたが、アメリカでは有力民族であるにも拘らず、何か問題があるとユダヤ人であることを沙汰されますね。だから、一時彼はユダヤ人ネタを多く笑いに取り込んだのでしょう。
蟷螂の斧
2020年04月17日 01:51
こんばんは。
この映画は大女優の3人の共演が凄いです。また、1970年代前半の特撮ヒーロー番組主演者3人の出演もいいんじゃないですか?

>角川映画

とにかく宣伝が上手かったです。この映画の主題歌は口紅のCMとタイアップしていましたよね?もちろん中井貴恵を出演させて。

>彼はユダヤ人ネタを多く笑いに取り込んだ

それと小柄で外見がパッとしない事も。

>市川崑

先日「木枯し紋次郎」で頼母子講という言葉を知りました。毎回同じ人が籤で当たったらどうなるんでしょう?
オカピー
2020年04月17日 22:23
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>この映画は大女優の3人の共演が凄いです。
そうでしたね。

>1970年代前半の特撮ヒーロー番組主演者3人の出演も
そうでしたか。TVを見ない人間なので。

>とにかく宣伝が上手かったです。
厳密には、「犬神家の一族」は純角川映画(配給は東宝)で、それ以降は東宝映画ですが、角川書店とタイアップしていて、宣伝の仕方を含めて、その差は大してない感じでしたね。

>先日「木枯し紋次郎」で頼母子講という言葉を知りました。
言葉はよく聞きますが、具体的な仕組みはよく解らないですね。賭け事風共済てなところですか。宝くじだってそういうところがないわけではないですけど。
蟷螂の斧
2020年04月18日 09:14
おはようございます。
この映画で沖雅也はカッコいい役ですね。その5年後にあんな衝撃的な事件が起きるとは思いませんでした。
神山繁が演じる胡散臭い男は笑えました。

>角川書店とタイアップ

儲かる話には人が集まります。

>具体的な仕組みはよく解らないですね。

ネットで色々調べましたが、難しいです。銀行の前身?
歴史に詳しい知人に聞いたら商店街の組合みたいな感じでもあるそうです。1軒が10万円ずつ出す。10軒で100万円。どうしても大きな金が要る時に貸す。

>国民に一律給付10万円

それよりも医療機関に金をたくさん出すべきだと言う人が多いです。
オカピー
2020年04月18日 20:56
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>この映画で沖雅也はカッコいい役ですね。
>その5年後にあんな衝撃的な事件が起きるとは思いませんでした。

そうですね。色々な意味で衝撃的でした。
田宮二郎が亡くなった時は、隣の幼馴染が駆け込んできた記憶があります。
岡田有希子は、会社の同僚ががっかりしていたっけ。

>>国民に一律給付10万円
>それよりも医療機関に金をたくさん出すべきだと言う人が多いです。

ただ、医療機関が今ほしいのは、防護用品であり、マンパワーでしょう。引退した看護師に呼び掛けているようですね。日本は医療システムはしっかりしていますが、医者の数は多くない。
 僕が一番欲しいのは薬です。通常では何年もかかる承認までの流れを大幅に短縮し、薬は秋頃から出て来るような感じが出ています。ワクチンは来年夏以降でしょうか。薬が出てくれば、恐らく一般的な病院でも患者を迎えられるはず。
蟷螂の斧
2020年04月19日 10:40
こんにちは。
この映画で琴絵を演じた萩尾みどり。仲代達矢にスカウトされ、無名塾にいた神崎愛に似ています。最初「あれっ!神崎愛かな?仲代達矢が市川崑監督に頼んで出演させたのかな?」と思いました。二人とも知的でお嬢さん育ちというイメージです。

>岡田有希子は、会社の同僚ががっかりしていたっけ。

この人も知的なお嬢さん。実際学業で優秀な成績を収めていたし。こう言う業界には合っていなかったのでしょう。

>田宮二郎が亡くなった時は、隣の幼馴染が駆け込んできた記憶があります。

彼は躁鬱病だったんですよね?

>医療機関が今ほしいのは、防護用品であり、マンパワーでしょう。

橋下徹氏が今朝の「日曜報道」で激論していました!
オカピー
2020年04月19日 18:45
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>萩尾みどり。仲代達矢にスカウトされ、無名塾にいた神崎愛に似ています

なるほど。二人とも同じ頃に本格的に芸能デビューしたようですね。
 萩尾みどりは、僕より少し年上で、少女漫画に出て来る上品なお姉さん的なイメージがあり、割合ご贔屓にしていましたよ。もう少し主演で活躍するかと思ったけど、時代が違ったのかな。

>>田宮二郎
>彼は躁鬱病だったんですよね?

Wikiで履歴を調べてみると、思うに、大映時代のポスターにおける名前の序列を巡る騒動が端緒ではないでしょうか。

>橋下徹氏が今朝の「日曜報道」で激論していました!

一週間くらい前、「金なんか輪転機をばんばん回せば良いんですよ」と言っていましたが、正論。通常の時であれば、バブルやインフレを心配する必要がありますが、こんな時にはなりません。
蟷螂の斧
2020年04月21日 19:17
こんばんは。

>割合ご贔屓にしていましたよ

所謂「リケジョ」。僕の高校時代、理系クラスでああいう雰囲気の女子生徒がいました。

>時代が違ったのかな。

そう言うのってありますね。有森也実がもう50年早く生まれていれば大女優になったという評論家もいます。

>大映時代のポスターにおける名前の序列を巡る騒動

アルファベット順に並べたのはウッディ・アレン。エンドロールでしたっけ?

>こんな時にはなりません。

近所のコンビニでバイトしてる女の子が「シフトを減らされた。生活が苦しい。早く10万円が欲しい!」と嘆いていました。母子家庭で色々大変な環境の子です。

オカピー
2020年04月21日 22:53
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>有森也実がもう50年早く生まれていれば大女優になった
>という評論家もいます。

萩尾みどりも有森也実がクラシックなムードの女優ですからね。

>アルファベット順に並べたのはウッディ・アレン。
>エンドロールでしたっけ?

アメリカの映画のエンドロールは現在出場順というのが多いです。
 日本のエンドロールは、主役の後、端役、そして最後に出演時間は少ないが大物という順番で、その順番で映画界での位置が解りますね。アメリカでは出演順でない場合は、出番にほぼ比例して、大物かどうかは余り関係ありません。日本の表記の仕方は、昔のフランス映画スタイルに近い。

>近所のコンビニでバイトしてる女の子

新聞では、コロナによる自粛等で色々な問題が生れていると報告されています。コロナはまるで社会の試験紙のようですね。
蟷螂の斧
2020年04月23日 06:47
おはようございます。

>中井貴恵

色々な映画関係のブログを見ると演技に対する酷評が多いです。でも13年前のオカピー教授のコメントを読むと市川崑監督が彼女を起用した理由もわかるような気がします。
映画での出演本数は意外に少ないですね。ビートたけし主演「哀しい気分でジョーク」に出ていました。

>クラシックなムードの女優

白黒のスクリーン(まさに銀幕)が似合うでしょう。

>最後に出演時間は少ないが大物という順番

真ん中に大物が(特別出演)とか(友情出演)と(   )付きで名前が出る場合もありますね。それはテレビドラマの場合でしょうか?

>コロナはまるで社会の試験紙

その女の子が「代わりのバイトを探しても、無いんですよ・・・。」と嘆いていました。
それとは別にニュース番組で見た光景。店舗を借りて飲食店を経営してらっしゃる方の「賃貸料を国が肩代わりしてくれよ!」という叫びも悲痛でした。
オカピー
2020年04月23日 21:02
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>>中井貴恵
>映画での出演本数は意外に少ないですね。

実際、観た記憶が余りありません。
1987年から休業したようで、ドラマにも出ていませんね。山口百恵タイプなのでしょう。

>ビートたけし主演「哀しい気分でジョーク」に出ていました。

観ましたが、全く憶えていないですね。ビートたけしはこれは手始めに、映画業にも精を出すようになり、89年監督業スタート。しかし、あれほど国際的な名声を得るとは思いませんでしたなあ。

>真ん中に大物が(特別出演)とか(友情出演)と(   )付きで
>名前が出る場合もありますね。それはテレビドラマの場合でしょうか?

映画でもありますね。
 特別出演というのは、端役だけど大物という意味合いがあるようで、もっと出番の多い大物が他にいる場合に途中に出て来ると思われます。しかし、特別出演と言いつつ結構出番の多いケースもあり、結構テキトーですね。
 友情出演というのは文字通りボランティアなんでしょう。

>「賃貸料を国が肩代わりしてくれよ!」という叫びも悲痛でした。

国は肩代わりはしませんが、家賃を待ってくれた大家に税優遇する等の対策を考えていなくもないようです。しかし、とにかく日本は遅い!

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