映画評「華麗なる一族」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1974年日本映画 監督・山本薩夫
ネタバレあり

今春TVシリーズ化もされた山崎豊子原作の社会派小説を社会派監督の山本薩夫が映像化した力作である。三十年ぶりに再鑑賞しても見ごたえに変わりがない。

日本第十位の都市銀行・阪神銀行を基盤とする万俵財閥。
 一族当主であり頭取の大介(佐分利信)が銀行を拡張する為に第八位の大同銀行の併合を画策し、都市銀行の合併により業界の再編を狙う大蔵大臣(小沢栄太郎)や日銀からの天下り頭取(二谷英明)を出し抜こうとする大同の専務(西村晃)を抱き込む。
 その為には阪神と大同の融資により高炉を作って難局を乗り切ろうと奮闘している阪神特殊鋼専務の長男・鉄平(仲代達矢)をも利用し犠牲にするのだ。

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実際に80年代以降都市銀行は次々と合併しているので先見の明があったことに驚かされる。その部分ではこの作品は社会派ドラマで、銀行業界と政界との関係を中心にした権謀術数の面白さが抜群。

ただそれだけではどこか味気ないものになった可能性があるが、そこに父と息子の関係を軸とした複雑怪奇な人間ドラマを加えて厚みを増している。寧ろ、人間ドラマとしての印象の方が強い。
 大介は容貌の酷似から長男を妻を犯した父の子供と信じているという設定で、彼の父に対する復讐心と事業家としての野望とを二重螺旋状に交錯させ、作者は「人間はかくも卑しくなれるものか」という命題を我々に突きつけるのである。

妻(月丘夢路)と妾(京マチ子)が一緒に暮らし、妾である家庭教師が家を牛耳る異常と言える家庭の様相、長女(香川京子)と結婚させた大蔵省次官(田宮二郎)が暗躍し、次女(酒井和歌子)は首相の甥との政略結婚を強要される、といったどろどろして複雑な人間関係を山本監督が鮮やかに捌いている。旧作「白い巨塔」同様見事と言うしかない。

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些か気に入らないのは、建設中の高炉が爆発し死傷者が出た後下請け業者が騒ぐ場面などにプロパガンダ的な匂いが漂うことだが、あの程度の分量では大きな瑕疵とまでは言えない。

幕切れでは再び社会派ドラマに戻り、観客を震撼させる。これほどまでに政財界を思うままに操ったように見える大物・万俵大介も、大権力の前ではただの歯車に過ぎないと映画は結論づけるのだ。政財界にうごめく魑魅魍魎・・・身の毛もよだつ怪談と言うべし。

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