映画評「すべての美しい馬」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2000年アメリカ映画 監督ビリー・ボブ・ソーントン
ネタバレあり

コーマック・マッカーシーのベストセラー小説を「スリング・ブレイド」で優れたセンスを披露した男優ビリー・ボブ・ソーントンが映画化した現代西部劇。

現代と言っても舞台は1949年のテキサス。
 祖父の愛した土地を相続した母が売ってしまい、牧畜と馬を愛する若者マット・デーモンが親友ヘンリー・トーマスと共にメキシコに働く場所を求めて馬を駆り、国境を超えた地点で妙な不良少年ルーカス・ブラックと出会い、これが後々の災厄となる。
 少年と別れた二人は一旦メキシコ人の農園主に雇われるが、デーモンが娘ぺネロぺ・クルスと昵懇になったのを恨む農園主に、少年の起こした殺人事件の共犯として密告されて服役、死刑のない国で少年が刑務所長に殺された後ペネロペの伯母の保釈金により辛うじて釈放される。トーマスを帰国させたデーモンは伯母との約束を守るペネロペに求婚を撥ね付けられて失望、所長に奪われた馬を取り返して帰郷する。

形としては西部劇ながら実際には波乱万丈の物語がなかなか楽しめる青春もので、冒険もの的な要素が多分にある一方、人間追求劇としてデリケートな部分も持ち合わせている。
 序盤友人の「地獄はないのか」という質問に対し「自由に考えて良い」と言う、無神論に近い立場だったのが、少年を見殺しにしてしまったことで自分を責めながらも、結局は様々な危難を乗り越えただけでなく刑務所長に奪われた馬を取り返して帰郷できたことにより、神を信じる立場になる。
 と言っても彼が劇的に信心深くなるというお話ではなく、成長物語として理解すれば良いと思う。

そうした個人的なスケールを超えて、大工業化の波がテキサスにも押し寄せた戦後とそれ以前の時代という時代的境界を、アメリカとメキシコの国境という地理的境界になぞらえると同時に併せて語っているような印象もあるが、原作はいざ知らず、映画からそこまで読み解くのは些か強引に近い。

ソーントンの語りは、デーモン君がペネロペと別れる駅の場面から所長から馬を奪還する場面への繋ぎなど、呼吸の悪さが目立つところもがあるが、全体としては拙劣ではない。
 映像については、意図不明なショットもあるものの、スローモーションで捉えた馬の疾走、雷雨の捉え方など感覚は良く、西部の環境描写もロケ効果を発揮して上出来の部類。

デーモン君は等身大的人物を無難に演じ、スパイとして飛んだり跳ねたりするよりはずっと似合っている。「E・T」のヘンリー・トーマス君は非常に地味な大人になりました。

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