映画評「馬鹿が戦車でやって来る」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1964年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

山田洋次「馬鹿」シリーズの第三作だが、小傑作と言うべし。少なくともこの時代の山田作品は単独脚本のほうが面白く、「運が良けりゃ」を含めた一連の作品の中でハナ肇のあくの強さが一番上手く使われた佳編。
 戦車は【タンク】と読む。

とある海で船頭・東野英治郎が二人の釣り客(松村達雄、谷啓)にタンク根を巡る逸話を紹介する、という形で展開する。

海から見える丘にある日永村は変わり者がいっぱいで、汚らしいおんぼろ家に少年戦車兵上がりのハナ肇が耳の遠い老母と自分を鳥と思い込んでいる弟・犬塚弘と住んでいて、欲深な元地主・花澤徳衛と土地争いを繰り広げている。
 そんなある日、老人の美しい娘・岩下志麻の快気祝いに彼も駆け付けるが追い出され、村の実力者に土地を騙し取られたのを知るに及んで怒り心頭に発して、納屋に隠していた戦車で村民の家を次々と破壊していく。

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ブラック・コメディーと言うよりは、言われない差別により虐げられた人間が遂に怒るというお話にペーソスを感じてしんみりとしてしまう喜劇である。英国の庶民派コメディーにも通じる現代の民話と言いたいところもある。
 弟がふらふらと歩いている丘の横を警察の車が通り過ぎるショットに得も言われぬペーソスがある一方で、老母がすぐ傍を戦車が通り過ぎても全く分らないブラックさ。狂言回し的な村人三人と駐在が戦車の轍を追っていくと海辺に辿り着く、という幕切れは扱いが抜群で味わい深い。

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この作品は好きだなあ。

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