映画評「馬鹿まるだし」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1964年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

藤原審爾の小説「庭にひともと白木蓮」を山田洋次が映画化したコメディーで、結果的に「馬鹿」シリーズ第一作となった。「馬鹿」シリーズは第二作「いいかげん馬鹿」だけが未見。

昭和23、4年頃、瀬戸内海の町のある寺にシベリア復員兵の風来坊・松本安五郎(ハナ肇)が住みついて寺男として働いた後やがて独立、無実の男に暴力を振るって大目玉を食らうが、町の実力者の娘を駆け落ちした力男から奪還して男を上げる。
 子分ができた後、実力者と組んで賭場を開いたのがばれて逮捕されるが、労働争議にしゃしゃり出て英雄になったかと思えば、続いて爆弾を持った誘拐犯グループから命懸けで女性を奪還する。

安五郎の激しい浮き沈みを<噂の出鱈目さ>を交えて描いたお笑いだが、彼の行動は尽く寺の嫁である未亡人(桑野みゆき)の言葉に左右されている。つまり彼の秘められた思慕がしみじみとしたペーソスを生み出すので「山田洋次版『無法松の一生』だな」と分析したところで、その「無法松の一生」が本当に出て来る。

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ユーモアとペーソスを織り交ぜる手法は山田喜劇の根幹を成していって「馬鹿」シリーズとなり、後に「男はつらいよ」シリーズとして無類の完成度をもって花開くわけだが、30を過ぎたばかりで演出的にはまだ生硬く、巧まざるユーモア、巧まざるペーソスというわけには参りませぬ。

配役陣については、ハナ肇の演技はほろっと笑わせるには硬質すぎて余り馴染めない。一方で、桑野みゆきの落ち着いた美しさが頗る印象的。

山田映画に珍しく植木等が顔を出す(兼ナレーション)。遅ればせながら、本作をもって追悼致します。

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