映画評「エミリー・ローズ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督スコット・デリクスン
ネタバレあり

僕が映画を観る前に得る情報は基本的に監督の名前だけである。出演者もチェックしないことが多いが、この作品は観る前にオカルトではないかと思い込んでしまった。何故なら30年前に「オードリー・ローズ」というオカルトと裁判劇を併せたような作品があったからだが、果たして裁判劇とオカルトが一体となったドラマでありました。あな不思議!

19才の女子学生エミリー・ローズ(ジェニファー・カーペンター)が薬による治療を止め、教区の神父(トム・ウィルキンスン)の悪魔祓いの末に、死んでしまう。儀式を行った神父について過失致死に当たるか否かを巡って裁判になり、出世を狙う女性弁護士エリン(ローラ・リニー)が被告の弁護に立つ。

実話を基にした物語で、科学の粋を極めるはずの現代の裁判において悪魔憑きや悪魔祓いという超常現象を取り扱うのが文学的な興味ではあるが、裁判を通して悪魔憑きを再現するというのも商業映画的な狙いの一つではある。しかし、エミリーに起きる現象は34年前の傑作「エクソシスト」と大差がなくて、オールド・ファンには新味がない。

<薬を止めたことが死の原因>とする原告側と<薬こそが死の原因>とする被告側が、夫々精神医学者や超常現象研究家などを証人として駆り出す、といった具合に裁判劇としてのほうが断然面白いものの、途中で弁護士が怪奇現象に遭遇したり、証人の交通事故死の扱いなどオカルトも両立するように工夫した努力は認めたい。

弁護士は超常現象の証明という苦しい立場を逆手にとって曖昧戦術を展開、さて首尾は如何でありましょうか。結果は観てのお楽しみだが、敬虔なメソジスト派信者である検事が断固神父を糾弾する姿に西洋人の宗教心における矛盾を感じてしまう。作者の考えはいざ知らず、その辺りを考えながら観ると、構図としては見え見えの物語も相当楽しめる。

オードリーが エミリーになって 蘇り(「オードリー・ローズ」は輪廻をテーマにした作品だったので)

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この記事へのコメント

シュエット
2007年05月01日 11:14
プロフェッサー様、こんにちは。本作は予告編でオカルトか!と思い観なかったのですが、Vivajijiさんのブログで「!」と思ってレンタルしました。法廷ものとして非常に面白かった。予告編の編集考えて欲しい…の気持ちです。作品への冒涜ですよ(笑)(追伸)バベル観ましたよ。プロフェッサーさんの映画評読みたいです。早く映画観に行ってくださいね(観る予定でなかったらごめんなさい)
オカピー
2007年05月01日 19:02
シュエットさん、こんばんは。

裁判劇の面白さは、検事と被告弁護人の丁々発止のやり取りにありますが、証人の顔ぶれを含めて十分合格点を与えられる出来栄えでしたね。被告弁護人であるヒロインの曖昧作戦も説得力がありました。それが科学VS宗教の図が加わり見ごたえありましたね。

>「バベル」
その様子ではお気に入りのご様子(笑)。
今日の新聞でディスコか何かの場面で気持悪くなった人が数名出たとか。私も最近映像酔いする人間になってしまったので、怖いなあ。
山奥なので遠出も厳しいのですが、20kmも車を飛ばすとやっている映画館がありました。後は時間の調整です。
viva jiji
2007年05月03日 08:18
“単にオカルトとして売ればヒットするだろう”的
予告編で“純粋にオカルト”で楽しみたかった観客には
きっとご不満映画だったでしょうに。(笑)
↑のシュエットさんはまっことその逆のケースですわね。
本作の監督さんは未知の方でしたがじっくりした語り口に
私は好感を持ちました。
ま、実話の重みも加味されてございますけどね。

法律の勉強は大キライでしたが(笑)、こと法廷劇には
目がない私には題材的にとても興味シンシンで
観させていただきました。
TBお持ちしました。
オカピー
2007年05月03日 16:56
viva jijiさん

映画館に行かないと予告編を観ずに済むというメリット(笑)がありますが、いずれにしても私はジャンルで映画を観ないからそういう意味での<期待外れ>ということはないですね。

>じっくりした語り口
正に仰る通りでして、オカルト場面もことさら強調することはなかったですね。法廷劇らしい正攻法のタッチには私も好感を覚えました。

>法廷劇
本文に書いた通り、近代裁判だけに科学VS宗教という図式になっていて、そこが面白いわけですね。その意味では、哲学(科学)VS神学(宗教)をテーマにした「薔薇の名前」とオーヴァーラップするところもありました。

因みに、大学時代、自力で民法は優を取りました(笑)。
nessko
2015年07月20日 23:01
この映画は、悪魔憑きという現象が少女の妄想なのかもしれないという風に描かれていましたね。貧しい家庭から少女が大学へ進学するというのに、それを知らされた母親はうれしそうではない。自分たちの世界から離れていくのをよろこんでいない。少女はそのことに気が付いていて、だから、感じなくてもいい筈の罪悪感に苦しめられるようになる。信仰深い人たちだからそれを悪魔憑きと見る。そういう風にもとれるのですが、一方でやはり人間には不可知の領域がありますから、神の存在を否定することはできないというのも出てくる。知の面で謙虚さを失ってはならないというのも人としては大事なことでしょう。
とても味わい深い作品だったと記憶しています。
オカピー
2015年07月21日 22:19
nesskoさん、こんにちは。

大分前に観たので、かなり忘却しておりますが、裁判映画として面白く観ました。

西洋哲学は、神学と対立するように日本人は思っていますが、カントに至るまでやはり時間・空間・人間の存在自体を神と関連付けているように、神学と哲学とはそれほど明確に区別できないわけですよね。

仏教徒ということになっている僕などは、「神は自らの姿に似せて人を作った」というキリスト教の観念に触れると、「逆だろう」と思ってしまいます。神があるにしてもそういう具体的に姿を想像できないですね。

ジョン・レノンの「神は人の痛みを測る概念である」というフレーズは、この作品を見ても、納得させるものがあります。

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