映画評「眠狂四郎女妖剣」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1964年日本映画 監督・池広一夫
ネタバレあり

シリーズ第4作。監督は池広一夫。

眠狂四郎(市川雷蔵)が隠れ切支丹の飾り職人・鳥蔵から聖女・びるぜん志摩(久保菜穂子)を守るように依頼される。自らの出生の秘密に惹かれて彼女のいる浜松まで下っていき、途上での暗殺の危機を潜り抜け、実は密貿易で儲けていた問屋(稲葉義男)と組んでいた志摩と対峙する。

というのが本流となる物語だが、色情狂みたいな将軍の娘・菊姫(毛利郁子)を巡るお話も相当尺を割いて描かれる。こちらも興味深いお話で、実はこのお姫さまは口から下がとんでもなく醜く爛れているのを恨んで、美しい侍女たちを阿片漬けにして殺し、鳥蔵の妹(藤村志保)を自害に導き、狂四郎もその罠に掛かりそうになる。
 菊姫は狂言回しに近い配置であるが、志摩など四人もの女性(にょしょう)と相まって<外見と内面の美醜>というテーマを構成、狂四郎の目を通して虚無的なムードを生み出すのがドラマ展開上の綾である。

彼の出生の秘密、即ち転びバテレンの息子であることが判明する(原作では少年時代から知っている)ので本シリーズの中でも重要な一編と言えるが、池広監督のアイデアだろうか、円月殺法がストロボ撮影により残像を残すように捉えられる最初の作品としての価値もある。

画像

さて、円月殺法の描写以外の池広演出と行きましょう。
 それほどスタイリッシュではないが、パン、横移動、スロー、俯瞰撮影など基礎的なテクニックを駆使してかなり凝っている。

全体評価として荒唐無稽の感は否めないものの、五人もの美女の濡れ場があり、シリーズの中でも娯楽性は高い。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2007年04月22日 07:38
2、3作目を観てないので知りませんでしたが、円月殺法の「ストロボ撮影」はこの作品で生み出されたんですねー。雷蔵の狂四郎も1作目よりもよりシックリと役に馴染んでいる感じで、肩の力のぬけ具合がイイです。陳孫と狂四郎の船での闘いは、ちょっと笑えましたが…^^;)。
オカピー
2007年04月22日 19:01
ぶーすかさん

ストロボ撮影については私もよく憶えていませんが、ものの本にそう書いてありましたので引用してみました。
シリーズの中でも最も娯楽性の高い作品ではないかと思います。菊姫に関しては、「アラビアン・ナイト」に似たような物語があったように思います。

やはり4作目ですから相当馴染んだでしょうね。
逃げる陳孫、些か往生際が悪い(笑)。彼は再登場したかなあ。
優一郎
2007年04月25日 18:02
こんばんは^^

画像が加わって、プロフェッサーの映画解説もさらに冴え渡りますね^^
シーンの抽出も「ここぞ!」の場面が選ばれていて、さすがプロフェッサー! 「映画剣豪」の貫禄でございますな^^

本作は、昔も観ていたことが途中から判明。「ああ、これ観た観た!」っていう、よくあるパターンでした^^;
なるほど、円月殺法の残像処理は本作が最初でしたか!
TVシリーズでは当たり前になっていて、どこが初出だったのかなど考えたこともありませんでした。
私は子供心に「剣を回すことで催眠術みたいな効果があるのかな」なんて思ってました^^;
今思えばバカな考え休むに似たりですが、チャンバラごっこでは円月殺法をよく真似たものです。

はっきりしたことは言えないのですが、狂四郎は青年になってから自ら長崎に出向き、出生の秘密をつきとめたのではなかったかと記憶しております。
帰還兵だった柴錬が、戦後の進駐軍に複雑な思いを抱きつつ、伴天連の混血児を世に生み出したのは想像に難くありませんが。

(コメントは「炎情剣」に続きます)
オカピー
2007年04月26日 03:08
優一郎さん、いらっしゃい。

映像の面白さで見せる映画は画像付きが良いことに今更ながら気付きました。もっと早く実行すべきでありました。「剣鬼」などうってつけでしたが、あの時は思いもつかなんだ(笑)。

シリーズもので主人公の性格も一応一貫していて、一作目でその類を書くともはや書くこともないもので抽出作戦を取っております。
するってーと、演出の違いを見るのが一番。かと言って演出について微に入り細をうがっても読み手が飽きるだけですし。本音を言えば、私がものぐさということです(汗)。

>円月殺法の残像処理
意外と本シリーズでは余り使っていないようですね。この監督に限っているのかもしれません。

>出生の秘密
シバレン関連のHPで15歳くらいで知ったと書いてあったような記憶があるのです(曖昧)。
進駐軍と正に重なる関係かもしれません。さすが優一郎さんだあ。
蟷螂の斧
2021年01月17日 09:28
おはようございます。昨日池広一夫監督、市川雷蔵主演「影を斬る」を見ました。奥州伊達藩の井伊直人(市川雷蔵)は、御天守奉行兼剣術指南役の大役にもかかわらず、仕事はそっちのけで、昼は天守閣で昼寝と言う話。面白かったです。

>パン、横移動、スロー、俯瞰撮影など基礎的なテクニックを駆使してかなり凝っている。

池広監督の作る映像は面白いです。

>1970年代くらいまでは、芸能人の住所まで明記されていましたね。

書籍の著者の住所も。映画雑誌に投稿した読者の住所も。凄い時代でした。

>力のないアーティストであれば、代表曲になれるレベルですね。

それとジョージ・ハリスンは他人が書いた曲でヴォーカルもギターも本領発揮すると言われています。「Roll Over Beethoven」が良い例です。ノリのノッてますねー!

>記憶がないということは、さほどインパクトがなかったことを意味する

そういう作品もあります。監督さん、すみません・・・。
オカピー
2021年01月17日 22:40
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>昨日池広一夫監督、市川雷蔵主演「影を斬る」を見ました。

池広監督=市川雷蔵のコンビであれば、観たいですなあ。

>池広監督の作る映像は面白いです。

おおっ、解って戴けますか。大映の監督の作り出す映像は、映画マニアにとってご馳走とでも言うべきもの。

>「Roll Over Beethoven」が良い例です。

Everybody's Trying to Be My Baby も好きですよ^^

>監督さん、すみません・・・。

僕くらい観ていると、そんなのばかりです。特に最近。あはは。
蟷螂の斧
2021年01月18日 18:12
こんばんは。昨日の朝はエルヴィス・プレスリー主演映画「ラスベガス万才」を見ました。面白かったです。双葉師匠も褒めていました。夜には「フック」を見ました。こちらは、ちょっと期待外れでした。僕が昔から大好きな役者ダスティン・ホフマンが出ていたのですが・・・。

>池広監督=市川雷蔵のコンビであれば、観たいですなあ。

是非ご覧下さい!嵯峨美智子(後に瑳峨三智子に改名)の使い方が上手かったです。

>大映の監督の作り出す映像

市川雷蔵や勝新太郎を活躍させて、他の役者の持ち味も生かして、1時間30分以内に収める。まさにプロです!

>Everybody's Trying to Be My Baby も好きですよ^^

僕も大好きです!そしてこの音源も。
https://www.youtube.com/watch?v=GikLgeHXo9U
「♪エブリバディ サイナ ビイマイベビ!」(リヴァプール訛り)
最後のリンゴのドラムもいいですねー!
オカピー
2021年01月18日 22:17
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「ラスベガス万才」を見ました。面白かったです。

プレスリーの劇映画の中では一番面白いと思います。共演のアン=マーグレットも良かった。

>夜には「フック」

確かに。「激突!」以降のスピルバーグ監督映画史上「レディ・プレイヤー1」と並んで最もつまらない作品と判断しています。

>「♪エブリバディ サイナ ビイマイベビ!」

レコード版では、僕はそれなりに聞えるのですが、ご紹介のライブ版ではかなり聞き取りにくい状態。
蟷螂の斧
2021年01月20日 05:31
おはようございます。

>プレスリーの劇映画の中では一番面白いと思います。

アン・マーグレットは美人だし、歌も踊りも上手いです。双葉師匠が「プレスリーが彼女の引き立て役に見える」とコメントをして作品に高得点をつけていました。

>「レディ・プレイヤー1」と並んで最もつまらない作品

名監督にも駄作やつまらない作品はあるんですね。

>ご紹介のライブ版ではかなり聞き取りにくい状態。

録音状態が悪いテープ。でも若いビートルズの熱気が感じられます。
https://www.youtube.com/watch?v=Ou-y8u0crNI
これもそうです。

ところでフィル・スペクターが新型コロナウイルスに感染して獄中で亡くなりましたね。
オカピー
2021年01月20日 22:19
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>名監督にも駄作やつまらない作品はあるんですね。

どの芸術分野でもそうですが、映画は、一人で出来ないために他のジャンル以上に、安定した作品を発表し続けるのが難しいですね。脚本の良し悪しが出来栄えの大半を決めますから。しかし、良い監督は、ダメな脚本もそれなりに楽しめるようにすることが多いでしょう。

>ところでフィル・スペクターが新型コロナウイルスに感染して獄中で亡くなりましたね。

音楽界に残した業績は大きいですが、晩節を汚しましたね。

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