映画評「黒いチューリップ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1964年フランス映画 監督クリスチャン=ジャック
ネタバレあり

<黒いチューリップ>第2弾。そのまんまです。RAYさん、大正解です。

地上波であるがノーカット(CMによる中断あり)字幕スーパーなので、アラン・ドロン・ファンの虫が騒いで30年ぶりくらいに観ることにした。都合三度目。

大デュマの同名小説の映画化とされることもあるが、あちらは<黒いチューリップ>発明をめぐる陰謀劇で映画のように兄弟が暴れまわるわけでもないので、殆ど関係がないと思ったほうがよさそうだ。警察隊長の扱いなど、大デュマよりオルツィ夫人の「紅はこべ」からアイデアを戴いたと想像される部分が少なくない。

お話は、フランス革命の2ヶ月前から始まる。
 伯爵のギョーム(アラン・ドロン)は女たらしだが、黒いマスクを付けて<黒いチューリップ>を名乗り他の貴族たちに対し強盗を働く。義賊であり革命を指揮する事実上の共和派リーダーである。
 が、彼の正体に密かに気付いている警察隊長の男爵に顔に傷を付けられ大弱り、仕方なく瓜二つだが感傷的な弟ジュリアン(ドロン二役)に会議出席を依頼する。

製作者は世の人気俳優に二役をさせたがるもので、ジャッキー・チェンもジャン=クロード・ヴァン・ダムも二役を演じた。しかし、アクション映画で本作のドロンに優るものはなし。
 また冒険ものでは瓜二つの人物という設定は誠によく使われる。仮面、変装と共に冒険ものの三大設定と言えるほどの常套手段だが、上手く使えばこれほど楽しい設定もないであろう。

以降、兄殿は義族的な仕事も放り出したので、この弟君が成り代わって共和派を指揮して暴れまわり、逮捕されれば勇敢な兄が救出に向う。橋の爆破は迫力不足だが、兄が牢獄の壁をよじ登って弟を救い出す場面は冒険ムード満点。
 フランス映画らしくのんびりと進むのは必ずしも悪いことではないが、兄が<義賊>を辞めるのは唐突すぎて展開上弱い。

全体としてドロンの奮闘ぶりが宜しく、これを観ると益々彼のアルセーヌ・ルパンが観てみたかったという思いを強くする。もはや叶わぬ夢だが。

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この記事へのコメント

RAY
2007年04月20日 12:42
こんにちは。やはり大正解でしたか(笑)
というか、私も「デイジー」で家の前に黒いチューリップが置かれるシーンを見て「アラン・ドロンかいっ」と一人ボケツッコミをしていましたので!
アラン・ドロンは私の世代にとっては「”太陽がいっぱい”の主役の人だっけ?」くらいの認知率になってしまうのですが、私は母がアラン・ドロンの大ファンだったお陰で、この人の出演作はリバイバル上映+ビデオ観賞でほとんど観ています。
「黒いチューリップ」もアラン・ドロンの「ただの美形には収まらない野心と、ちょっとだけ危険を感じさせる男」みたいな魅力が発揮されていましたネ。

ちなみにアラン・ドロンの作品では「若者のすべて」も好きです!
あとオカピーさんもリスト漏れを申告されていた(笑)「ボルサリーノ」もファッションから画作りまで、かなり好みの作品です。
でもジャン・ポール・ベルモンドの方は案外、ジャンヌ・モローと共演した「雨のしのび逢い」(タイトル、合ってます??)みたいな地味な作品がツボでした。マイナー志向ですので(笑)
オカピー
2007年04月21日 02:06
RAYさん、こんばんは。
いや、お見事でした。

私はやや遅れてきたドロン・ファンですが、私が観た頃がある意味全盛期だったかもしれません。
>ただの美形には収まらない・・・
相変わらず見事な表現ですね。
「太陽がいっぱい」でスターダムにのし上がった頃から、主人公トム・リプリーとダブって語られることが多い彼の実像ですが、やはりそういう野心が演技や表情に出るようですね。

「若者のすべて」は最初のリバイバルの時に映画館で観ました。どちらかと言えばヴィスコンティの旧作として見ましたが、なかなか感激しましたねえ。それ以来観ていない(DVDは保有)ので、近いうちに観たいと思うのですが、なかなか。

>雨のしのび逢い
合ってます、合ってます(笑)。
監督はピーター・ブルックでしたね。大学時代に京橋のフィルムセンターに観に行きましたよ。当時の感性にあって私も気に入りました。マルグリット・デュラス脚本にしては解りやすい部類で、ジャンヌ・モローが素敵でしたねえ。
トム(Tom5k)
2007年04月21日 02:49
待ってました、オカピーさん!(笑)
二重人格や一人二役はアラン・ドロンの右に出る者はいないとまで思っていますよ。恐らくですが、ドロン自身もそういった役柄にかなりの陶酔感を持っていたのではないかな?
>冒険ものの三大設定
やっぱり、クリスチャン・ジャック監督なんかは、フランス映画の最後のクラシック作品の作り手だけあって、セオリー・基本が見事ですよね。
ヌーヴェル・ヴァーグも好きですけど、戦前から戦後60年代始めくらいまでのフランス映画は最高です。
吉永小百合さんもリアル・タイムで見ていたらしく、絶賛されていた記憶があります。ヴァルダ監督も強調していたように思いますし、女性ファンが多い作品だと思います。
>彼のアルセーヌ・ルパン
最近、ジョニー・トーのノワール作品にドロンが出演するらしいとのことですが、老ルパンの役なら、まだ期待できるかも。わたしとしては、ルコントかベッソンあたりで制作してほしいですね。
ああ、またなんかカルネやクレール、デュヴィヴィエ、フェデールなんか見たくなってきちゃった。
オカピー
2007年04月21日 17:59
トムさん、こんばんは。

本当にドロンの二役には痺れますよねえ。
また大物はこういう役を一度はやりたがりますね、プロデューサーや監督に求められるまでもなく。

ヌーヴェルヴァーグ以降の作家が小手先というわけではないですが、それ以前の作家は、フランスに限らず、小手先ではなく本当に基本を大事に作っていますね。

>老ルパン
そう言えば「ハーフ・ア・チャンス」では、初老の怪盗紳士役を楽しそうにやっていました。
ベッソンは劇画的になりすぎる傾向があるので、私は文芸色のあるルコントで観たいです(笑)。
トム(Tom5k)
2007年07月14日 22:46
>オカピーさん、こんばんは。
ご了承を得ていた対談集、アップしましたよ。
何か問題などあれば、いつでも修正します。忌憚のないご意見をお願いします。
タグ機能でトム対談集までつくってしまいましたよ(笑)。
では、では。
オカピー
2007年07月15日 05:48
トムさん、おはようございます。

ご多忙中ご苦労様でした。
私の「てにをは」が少なくとも一箇所おかしい(笑)以外は、全く問題がありません。

エクスブログはタグ機能とかいうのがあるんですよね。カテゴリ(WEBRYでいうテーマ)との差がよく解りませんが(笑)。
トム(Tom5k)
2010年04月26日 23:43
オカピーさん、お久で~す。
久しぶりの更新記事、黒いチューリップでアップしました。記事の冒頭部分、オカピーさんとの対談にも直リン貼っちゃいましたので、お知らせかたがたです。
>「紅はこべ」
これって、わたし、知らなかったんですが、興味深いところですねえ。わたしは、デュマの「鉄仮面」での双子の主人公と仮面などの設定を、借用して作ったのかなあなんて思ったので記事にしたんですが・・・。実際のところ、どうなんでしょう?
そういったことも、映画の作り手の工夫のひとつ、興味を惹きつけられるところですよね。
TBします。お暇なときにでも・・・。
では、また。
オカピー
2010年04月27日 10:01
トムさん、お久しぶりです。<(_ _)>

>「紅はこべ」
おお、そうですか。
革命直後で混乱するフランスと英国を舞台にした英国産(作者はハンガリー産)の冒険小説で、地元英国では映像化も多いです。
僕も原作ではなく、比較的忠実らしいTV映画から推測しました。
原作は創元文庫で読めるはず。

勿論大デュマの「鉄仮面」からの借用もあるでしょうし、「怪傑ゾロ」の逆輸入もあるかもしれません。
日本人は潔癖症で、そういうのをパクリなどと言って大騒ぎする悪い傾向がありますが、文化・芸術の発展には欠くべからざるものですから、大概の場合は黙ってニヤニヤ観ていれば良いですよね。

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