映画評「デイジー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2006年韓国映画 監督アンドリュー・ラウ
ネタバレあり

<黒いチューリップ>第一弾。さあて、第2弾は何かな?(笑)

韓国ロマンスはうんざりだが、監督が香港のアンドリュー・ラウなので興味を引かれたし、事実、出来栄えも平均的韓国製とは一線を画す。

アムステルダムの広場で肖像を書いている女流画家チョン・ジヒョンは、田舎で過していた時に縁の出来た、こっそりデイジー(ひなぎくですな)を届けてくれる謎の男性を思い続け、何度か描いてもらいに現れた韓国人男性イ・ソンジェをその人と思い込むが、実際の贈り主は窓から彼女を見つめるチョン・ウソン。
 しかし、彼はプロの暗殺者で、実は刑事として捜査中だったイを狙って中国系麻薬組織が狙っていることを知ると、先手を打って銃撃を仕掛ける。結果としてジヒョンは流れ弾に当って声を失い、重傷を負った刑事も韓国へ送り返される。

美術品販売係をヒロインにした1970年製作「マロニエの別れ道」を思い出す。あの英国映画は暫くロマンティックな場面に溢れて素晴らしいムードで推移していたのが突然犯罪映画になって戸惑ったものだが、この作品も突然銃撃が始まってそれまでのムードを蹴散らしてしまう。
 しかし、一旦消えたロマンティックなムードが再び現れてからはそのムードがきちんと底流に定位するので、暗黒映画風場面が交互に現れてもぎくしゃくせず、「マロニエ」のような半端な印象を与えない。設計がずっとしっかりしている。

「インファナル・アフェア」で身分を偽る暗黒街の男たち(官憲を含む)を描いたラウは、同じように身分を明かさない暗黒街の男たちを重要な人物として配置してその交流に友情めいた感触を残しながら不思議な三角関係を構築し、なかなか情味がある。
 一種の誤解による心理のすれ違いや相手を思いやり身を引こうとする登場人物たちは古風なメロドラマと同じであるが、幾つかの趣向により新風を吹き込んでいる。特に読唇術は新鮮で、クライマックスでの使い方が上手い。オランダの景色も得点を稼ぐ。

ドルリー・レインにデイジーの贈り主を探させたら、悲劇も起こらなかったであろう。by エラリー・クイーン

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この記事へのコメント

RAY
2007年04月19日 16:42
一時期、香港映画を徹底的に制覇した時期があったので、過去のアンドリュー・ラウ監督作はほとんど観ていますよ。
ジョン・ウーと違ってハリウッドを狙わずアジアに留まっているところが勝因でしょうか?昔の「欲望の街」シリーズも超B級ですがノワール物としてはまあまあでした。

「デイジー」もストーリーは普通と言えば普通ですが、アンドリュー・ラウ特有の「情感があってやや古臭いのに、なぜかスタイリッシュ」みたいなテイストが功を奏して、雰囲気ある映像でしたね。
ただ、ヒロインは能面フェイス(=無表情)なのがちょっとNGで、もう少し透明感のある人の方が良かった気もしますので、オカピーさんの評点よりマイナス1点で(笑)

黒いチューリップはアラン・ドランですか?
そういえばアラン・ドロンのリストに「さらば友よ」が入っていませんでしたね!わたし的には結構好きな作品ですが・・・ここは意見の分かれ目でしょうか?
ちなみにアラン・ドロンでは「サムライ」と「冒険者たち」がワンツーフィニッシュです♪
シュエット(旧姓・Rei)
2007年04月19日 22:51
プロフェッサー様。ブログ開設のご挨拶ようやくできるようになりました。本記事とは直接関係のないTBで申し訳ありません。日々精力的に記事を書いておられ、感心します。わたしはようやく「パリ・ジュテーム」の記事だけです。この間すでに数本の映画を劇場で見ているのですが、まだ記事するところまでいけてませんね。映画観た感動を自分の中で言葉にしていく時間がわたし要るんです。わたしのブログのお気に入りに入れさせてくださいね。今後ともよろしくお願いいたします。
オカピー
2007年04月20日 03:58
RAYさん、こんばんは。
>黒いチューリップ第2弾
大正解でございます(笑)。
「さらば友よ」が入っていないのはたまたま最近観ていないだけという理由で、ドロンの主演作品の中では悪くない位置に置きたい作品です。しかし、ブロンスンの評価が高いのが気に入らなかった(笑)。
「冒険者たち」は年内に書きたいのですが、大好きな作品なのでなかなか書けません。「ボルサリーノ」もないですしねえ。

>デイジー
ヒロインのチョン・ジヒョンは前からあごの下のだらしなさが気になっていましたが、相変わらずだらしない(笑)。今回は鈴木京香に似ていました。7点は余りにも旧態依然の韓国ロマンスばかりが続いた反動かもしれません。

>香港映画を殆ど制覇
私は観たり観なかったり。ユンファさんも全部は観ていないなあ。
香港映画については結構知らないことが多そうです。
オカピー
2007年04月20日 04:02
シュエットさん、こんばんは。
再スタート、おめでとうございます。
私、新作は殆ど観られまず1年遅れの状態ですので、TBできるちょっと古めの作品を早めにお願いします(笑)。

私も時間が掛かるほうですよ。本質だけ書いて細かいことは他人に任せていますから、何とかなっています。
しゅぺる&こぼる
2007年04月22日 10:04
おはようございます。
いつもこっそり読み逃げしてたしゅぺる&こぼるです。
オカピーさんと「いつもの」常連の皆様のコメントはいつも楽しく読ませていただいてますよ。

デイジーはいきなり最初のロマンチック路線からハードな銃撃戦にいきますね。そのスゥイート&ビターな味付け加減、わたしは好きですね。

>特に読唇術は新鮮で、クライマックスでの使い方が上手い
そうそう、チョン・ウソンドラマを見て読唇術を練習してましたよね。
ああいうほのぼのというかちょっとコミカルな短いシーンが最後にじわりと効いてきますね。

チョン・ジヒョンは「猟奇的な彼女」みたいにつっぱったキャラのが会うような気がします。ツンデレっていうんでしょうかね?


2007年04月22日 20:28
はじめまして。私もWOWOWで観ました。「インファナル・アフェア」アンドリュー・ラウ監督×「猟奇的な彼女」チョン・ジヒョン×「私の頭の中の消しゴム」チョン・ウソン。アナザーバージョンも録画しましたが、まだ観ていません・・・
オカピー
2007年04月23日 02:15
しゅべる&こぼるさん

viva jiji姐さんのところでお名前をよく拝見しております。
ではありますが(笑)、姐さんのところのコメント量は半端ではないし、挨拶程度のものは殆どないので、全てを読むのは難しいので、しゅべる&こぼるさんのお好みはまだよく把握しておりません。すみません。

あのまま水と油のように分かれてしまったなら、「てやんでー、いつもの韓国調じゃないか」と文句の三つくらい言ってやろうかと思いましたが、監督が香港人ラウだったのが功を奏してきちんと締めてくれたので一安心といったところ。

チョン・ジヒョンについてはそうかもしれません。ツンとしてデレッということですよね。
しかし、ちょっと顎の下がだらしない。あのまま年を取ったらえらいこっちゃですよ? 時々鈴木京香に見えましたね。
「猟奇的な彼女」は私の映画観を変えるのか思いましたが、結局あれが韓国の定石的な作りと判ってがっかり。それともあれがその流れを作ったのかな?
オカピー
2007年04月23日 02:22
matagtagさん、初めまして!

おおっ、【映画のチラパン】さんではないですか! webryの映画記事数でトップの!
私は新作をすぐに観られる状態ではないので、お名前だけしか存じませんが、ようこそおいでくださいました。
アナザー・バージョンは一応惹かれましたが、観るだけの余裕があるかどうか。とにかく忙しいもので。

またお越し戴けるとうれしいです♪

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