映画評「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督ジェームズ・マンゴールド
ネタバレあり

伝記映画が大量に作られている現在「Ray/レイ」「ビヨンド・the・シー」「五線符のラブレター」など音楽家に関する作品も少なくないが、本作はカントリー畑ながらロックンロールの祖に数えてもよい大物ジョニー・キャッシュを扱っている。
 本国の人気に反して日本に正当に紹介されているとは言えないが、1955年プレスリーと同じサン・レコードにおいて4ドルでレコードを作った後は比較的順調にスター街道を驀進した。55年はプレスリーやジェリー・リー・ルイスが頭角を現し、ロカビリー元年と言っても良いだろう。僕の持っている<ローリング・ストーン>誌は、「ブルースとカントリーの融合した分野に果たした彼の功績は大きい」と高く評価している。

彼に関しては殆ど受け売りばかり。知っている曲はタイトルになっている「アイ・ウォーク・ザ・ライン」くらいなので偉いことは言えないのですな。

戦時中の12歳の時に兄を電動ノコの事故で失い、父親の憎しみを受けた状態で成長したキャッシュ(ホアキン・フェニックス)は、ドイツでの軍隊生活を経て53年に幼馴染ヴィヴィアン(ジニファー・グッドウィン)と結婚、セールスマンでお茶を濁した後、趣味で作った楽曲「フォルサム・プリズン・ブルース」がサン・レコードに採用される。

それ以降は上に書いた通りだが、ここから作品のテーマは、デビュー前から憧れのカントリー歌手だったジューン・カーター(カーター・ファミリーはカントリー・ミュージックの祖と言われアメリカでは知らない者がいないくらい有名)への思慕へと変って行く。
 彼女は二女を儲けながら二度の結婚に失敗した恐怖からツアーで行動を共にするようになったキャッシュの愛を受け入れず、その苦しみもあって彼自身はデビュー当時悪友に勧められた麻薬の深みに嵌まって逮捕され、妻子に逃げられてしまう。が、絶望的な心境にある彼を救うのもまたジューンなのである。

つまり中盤以降<二人は運命の男女>とばかりに焦点が絞られ、それはそれで誠に結構なのだが、「“アイデンティー”」では好調だった監督ジェームズ・マンゴールドの呼吸が意外に良くないので序盤のエピソード群がぶつ切り的に見え、ドラマ的に膨らまずまた深みを増していかないのは大いにまずい。
 父に疎まれていること、兄を失った喪失感といった過去のネガティブな要素が彼のジューンへの思いや麻薬地獄という現在の苦悩に深く連関しているのは間違いないのに、独立しているように感じられてしまうのは、中盤の描き込み不足だけではなく、序盤のまずさが大きな要因となっているのである。その結果、麻薬地獄に陥る部分などは芸能人の定石的な転落としか見えない。
 展開的には似ていなくもない「Ray/レイ」が少年時代の喪失感、盲目の苦しみ、麻薬地獄、そして立ち直りとを相互にうまく関連付けていったのとは対照的である。

彼の愛そのものも問題で、純文学的にテーマを推し進めていくなら構わないが、かような伝記ドラマの体裁のまま、ヴィヴィアンに取り立てて責められる要素がないのに他の女性に思いを寄せるというのは些か不都合。それを言ったら話が成立しないのだが。

Imdbでベスト250にランクインしているなどアメリカでの異様に高い評価は、ジョニー・キャッシュの人気の高さによるものではないか。日本での評価が実力相応と思う。

ジューン・カーターにはリース・ウィザースプーンが扮し、アカデミー主演女優賞を受賞。演技を見る目がない僕には余りピンと来ないが、歌唱力は断然素晴らしい。

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この記事へのコメント

viva jiji
2007年03月14日 08:59
“泣き虫キャルさ~~ん!(笑)”お久しぶり~!
そろそろ涙も枯れたころでしょ?(笑)
うん、もう、プロフェッサーのブロガーお仲間はみなさん
私以外は(笑)お優しいから、たくさんの励ましお受けに
なって、プロフェッサーは幸せ者よ!
すっかり私はエイリアンのチェット・バスターのように
悪者にされてしまいましたわ~。(笑)

・・考える時間を下さい・・・と申しましたので
キッチリ、考えましたので“本館”の場をお借りして
私の考えをこれから書き込みさせていただきたいと思います。

その前に、あ、そうです。
「ウォーク・ザ・ライン」ですね。
プロフェッサーはまだ観ていらっしゃらないでしょうけど
「ドリームガールズ」のゴワァンゴワァンするような歌唱を
観た後、本作ののどかなカントリーを聞くと
まさに蒸し風呂のあとの冷水ような爽やかさですわ!(笑)
TBさせていただきました。

追伸。
拙ブログにて<新コーナー>始めました。
お寄りくだされば幸いです。
オカピー
2007年03月15日 02:44
viva jijiさん

僅か1週間ですが、長かった(TT)。
その間土地問題もあって、泣きっ面に鉢…いえいえ蜂でしたよ。
どうも思い余って勇み足ということが多いですが、今後は注意します。

後は明るく参りましょう。

「ドリームガールズ」はミュージカル系が好きな私としては甘い評価をしそうですねえ。
この映画は・・・まあ本文で書いたとおり・・・の印象です。日本での知名度が圧倒的に低いジョニー・キャッシュの勉強にはなりました。
kimion20002000
2008年04月16日 01:00
刑務所のライブで、囚人たちが足を踏み鳴らして、キャッシュの登場を促すシーンは、なかなか良かったです。
オカピー
2008年04月16日 17:11
kimion20002000さん、こんばんは!

>キャッシュの登場を促すシーン
非常に映画的な感覚で、良いですね。
しかし、お話としては月並みで、演出もそれほど優秀とも思われないのに、アメリカでは馬鹿に評価が良いです。

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