映画評「運が良けりゃ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1966年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

「たそがれ清兵衛」が山田洋次の初の時代劇であるという紹介は全く嘘で、実は本作が最初の時代劇。尤も、そうした紹介は侍を主人公にした本格時代劇という意味と解釈したとも解釈できるので目くじらを立てるほどでもない。

「付け馬」「黄金餅」などの古典落語をベースに作られた長屋喜劇で、江戸落語で有名な熊さんと八っつぁんが主人公。

熊五郎(ハナ肇)には懸想している相手のいる年頃の妹(倍賞千恵子)がいる。彼女に殿様の妾になる話が持上がるが、酔っ払った熊さんがぶち壊し、彼女は万々歳。
 寅さんとさくらを思わせる兄妹の関係が言わば縦糸となっているが、一方で長屋で起る奇妙な挿話の数々が人生模様を描いて行く。

例えば、大店の馬鹿息子(砂塚秀夫)を利用して数名で遊女買いをしたり(「付け馬」からの拝借)、八っつぁん(犬塚弘)が女房に駆け落ちされて自殺騒動、長屋から追い出されようとしたので大店を困らせようと小魚を焼いて煙を上げ「火事だ」という代わりに「河岸だ」と騒ぎ、強欲婆さんが餅に金を入れて呑み込んで死ぬ(「黄金餅」より拝借)、といった騒動である。

挿話が横並び的で「男はつらいよ」のように連続的な流れになっていかないのが物足りないが、個々の場面や登場人物を同シリーズと関連付けて語ることが出来る部分が相当にあり、「男はつらいよ」の習作的作品と思えば興味深い点も少なくない。

可笑し味は明らかに足りない。山田監督と山内久との共同脚本に問題もあるが、それ以上にハナ肇、犬塚弘といったクレイジーキャッツの面々の呼吸が落語的ではないように感じるし、子供時代からクレイジーキャッツは笑えないのだ。その点本作では完全に脇役に終っている渥美清は山田洋次と抜群に相性が良い。ハナ肇については「馬鹿」シリーズを再観賞してその辺りを確認してみたいと思う。

また、山田洋次は保守的であるという認識は、特に初期においては正しくないと僕は理解している。「下町の太陽」「男はつらいよ」第一作でも感じたが、意外と実験精神がある。
 本作でも、或いは岡本喜八の影響かもしれないが、時代劇にも拘わらずBGMにジャズを使っている上に、落語のベースがあるとは言え、死体の焼き方問答や死体の胃から溶けた金を取り出す場面はブラック至極。この残酷味を買って★一つ分増やした。

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