映画評「不良少女モニカ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1953年スウェーデン映画 監督イングマル・ベルイマン
ネタバレあり

イングマル・ベルイマン特集⑧

1988年映画メモより。

ベルイマンの第12作。

(前出「シークレット・オブ・ウーマン」と)同じくベルイマン初期のドラマだが、こちらは63年に続く二度目のリバイバル(注:共に映画館にて鑑賞)。

16歳の孤児少女ハリエット・アンデルソンが運送業の若い店員ラーシュ・エクボルイと恋に落ち、仕事も捨ててボートで放浪の旅に出る。食料がある間は気儘に青春を謳歌するが、妊娠した挙句食糧不足に陥って他人の家から肉を盗んだりした末に食い詰めて施設の厄介になる。しかし、結婚して地道に働き始めた夫は、遊び好きで派手な彼女と別れ、子を抱えて去っていく。

無軌道な青春を描く初期ベルイマンの代表作だが、多様な登場人物を上手く捌いた前作「シークレット・オブ・ウーマン」や港町のムード醸成に優れた48年作「愛欲の港」より劣るような気がする。
 北欧の環境描写についてはデビュー作品から瑞々しく詩情があり定評のあるところだが、当時のベルイマンにはテーマの沈潜といった部分にどうしても不満を憶えてしまうのである。のびのびとした人物描写を瑞々しいと捉えるか、ただ純朴と捉えるかによっても評価が分かれよう。
 また、個人的な好みで申し訳ないが、ハリエット・アンデルソン(アンデション)の容貌が好きになれないのもマイナス。

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この記事へのコメント

トム(Tom5k)
2007年08月11日 14:26
オカピーさん、こんにちは。
わたしにとっては、リアルな恋愛、リアルな社会矛盾、典型的なテーマでありながら、それは硬直していない。そう感じる作品ではありました。
ラスト・シークエンスの主人公のモニカに対するフラッシュ・バックに、若い男女のセックスの問題が社会に直結しているようにも感じたところです。
>ベルイマンにはテーマの沈潜といった部分・・・
恐らく、特有の宗教の問題から遠ざかっていることに、もの足り無さが発生しているんでしょうね。若い男女には、神をも恐れぬ野生があるということなのでしょうか?
では、また。
オカピー
2007年08月12日 02:49
トムさん、こんばんは。
先日は病気へのお気遣い、有難うございました。
もう大分良いです。

>リアルな恋愛・・・
全くその通りだと思います。

>宗教の問題
うーん、こちらはちょっと難しいところですね。
後の作品と比較しているつもりはないですが、そういう面もあるかもしれません。

しかし、本作の2作後の喜劇「夏の夜は三たび微笑む」の構成の見事さから考えると随分素朴で、その間に何があったのかと思うほどです。「夏の夜」以降のベルイマンの作品は構成と描写に揺るぎと隙間がなくなっていきます。私にはそれが驚異的な進歩と感じられてしまうのです。

それ故に本作が☆三つに留まっているわけではないですが、結果的に将来の作品と照らし合わせても私の中では落ち着く採点です。
bakenoko
2019年10月18日 04:40
当時のスウェーデンでは、堕胎が認められていなかった.なので、金持ちの子供は、親が裏から医者に手を回して堕胎し、貧乏人の子供は闇医者の世話になり、それがばれたら感化院送り、そうした実態が『愛欲の港』に描かれている.

モニカの両親は、夫婦仲が良く子供を作る行為は大好きだったけど、けれども子供を育てることには関心がなかったようで、産まれた後はほったらかしだった.そんな家庭で育ったモニカも同様で、子供を作る行為は大好きだけど、やっぱり育てようとはしなかった.

17歳のモニカ.今の日本だったら当然のように堕胎させて、結婚するかどうかはまた別な話.けれども、堕胎が認められていない当時のスウェーデンでは、結婚して産む以外に選択がなかったのである.

ちなみに1975年頃、スウェーデンでも堕胎が認められて、現在は日本と大差のない法律になっているらしい.
法律で堕胎を認めること、ピルの販売を認めること等、そうした事を要求する社会運動を行ったようであり、この映画もその一環と言って良いはず.
オカピー
2019年10月18日 19:39
bakenokoさん

>堕胎が認められていない当時のスウェーデンでは、
>結婚して産む以外に選択がなかったのである.

スウェーデンは、福音ルーテル教会ですが、新教は自由な印象が強い宗派があるかと思えば、カルヴァンなどを読んでみても原点回帰で旧弊な宗派も多い。キリスト教をきちんと勉強していない日本人には解りにくいですね。


>法律で堕胎を認めること・・・そうした事を要求する
>社会運動を行ったようであり、この映画もその一環と言って良いはず.

そうかもしれません。

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