映画評「人間の条件 第1部・第2部」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1959年日本映画 監督・小林正樹
ネタバレあり

計9時間半に及ぶ超大作の第一作である。
 五味川純平が1956~58年に発表した6部から成る大長編小説のうち、第一部・純愛編と第二部・激怒編を映画化。

昭和18年、満州の製鉄会社に勤める梶(仲代達矢)は迷った挙句に結ばれた新妻・美千子(新珠三千代)を引き連れ、召集免除を条件に満州の老虎嶺鉱山に労務管理係として赴任するが、満州人や中国人捕虜からなる特殊工人を人として扱おうとするが故に他の日本人との間に軋轢が生じ、中国人からも完全に信用されないジレンマに苦しむ。

ここまでが第一部で、具体的には鉄条網に閉じ込められた特殊工人に娼婦を宛がう懐柔策や、鉄条網に走る電流を止め脱走を手伝ったという疑惑が梶に生じる部分が見どころ。
 これは別の日本人関係者が彼らの間に亀裂を生じさせる為に故意に行わせた策略で、梶は苦境に立たされて行くわけである。

第二部、梶の懐柔政策が功を奏して増産が為るが、彼への風当たりが弱まることはなく、特殊工人7名が脱走しようとした罪で斬殺させられるのを阻止したことが憲兵隊に咎められる。

どの立場にいてもヒューマニズムを守る梶の精神性が思想的にバランスの取れた鑑賞者に感銘を与えないではおかないが、彼だけがいくら魅力的でもあって意味がなく、周囲の人との関係があって初めて彼の人間性が輝く。従って周囲にいる種々雑多な人々の描写が充実していなければならないのだが、この点において全く不足がない。

美千子は夫に個人の幸福を追求して欲しいと思っている。鉱山の先輩(山村聡)も比較的人間尊重の立場だが、気が短い。所長(三島雅夫)は中間的な立場に見えるが、会社が儲かるなら人道主義などどうでも良い。他の日本人は中国人を生産する為の機械としか考えない。
 小林正樹監督はこれらの多様な人物を演じる俳優たちを巧みに操縦、一種の群像劇を構成して実に見事だ。

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