映画評「犬神家の一族」(1976年版)

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1976年日本映画 監督・市川崑
ネタバレあり

申し訳ございません。現在公開中のものではありません。

現在リメイクが公開中ということで観賞。

終戦直後から横溝正史は映画化されるようになったが、横溝が今日の知名度を持つようになったきっかけを作ったのは角川書店である。しかし、それを一般に定着させたのは市川崑監督=石坂浩二主演のシリーズ五本であろう。中でも最初の二本は断然優秀で、これはその第一作。

舞台は終戦2年後の長野県の那須市となっているが、実在しない地方自治体。湖のあることから諏訪市をイメージしたものと思う。
 製薬会社として一代で財を成した犬神家当主が死去、遺言が公開される。恩人の孫娘(島田陽子)が条件付きで遺産を継ぐということが書かれていて、母親が全て異なる長女・松子(高峰三枝子)、次女・竹子(三条美紀)、三女・梅子(草笛光子)とその子供たちは動揺する。
 横溝ミステリーの特徴でもある怪奇ムードは長女の息子が復員兵で爛れた顔をマスクで覆っている為正体が不明という部分により醸成されているが、この後三人の人間が殺され、金田一耕助(石坂)が到着する前に殺された弁護士事務所の所員を含めて計四人を殺した犯人を突き止める謎解きが展開して行く。

先月「悪魔の手毬唄」でこのベスト・コンビについて述べたのでそちらも参考にして戴けると有難いが、良い意味でけれん味のある演出が大変良い。強調すべき場面では様々な映像処理、例えばモノクロ化、ジャンプカットの使用、モノクロ写真のフラッシュバック的挿入などテクニックを縦横無尽に駆使、洒落っ気もたっぷり。後の金田一ものに相当な影響を残していると思う。

市川崑(久里子亭)自身が加わった五人による脚本も少なからぬ人物の交通整理に優れ、非常に解り易い。「手毬唄」よりコミカルな演出が目立つ一方、ミステリーとしてはかなりオーソドックスな作りで、マスクの扱いに妙がある。

大野雄二の音楽も優秀。主題曲は耳にこびりつく。

余談であるが、70年代初頭「火曜日の女」というシリーズ番組があって、その中で酒井和歌子の主演したミニシリーズが大変怖かった記憶がある。当時は全く気付かなかったが、あれは金田一の出てこない「犬神家の一族」だったと昨年判り、長い間喉につかえたものが取れた思いがした。

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この記事へのコメント

2007年01月19日 15:15
オカピーさん、こんにちは。
「犬神」高得点で、私は非常に嬉しく思います。やはりオリジナルのが出来がはるかにいいですね。その話の核も明確ですし、遺言状もきちんとよまれますし。
画的にも、プロフェッサーも書かれている通り、カット割り等これぞ市川崑というものです。そして音楽もいいですね。個人的には5作中、「手毬唄」が一番好きなんですけど。
私的に犯人はあまりに有名であろうと勝手な解釈で書いたネタバレ記事をTBさせていただきます。
オカピー
2007年01月19日 15:53
イエローストーンさん、こんにちは。
TB有難うございました。早速お返しに伺いました。

80年以降色々な役者がTBや映画で金田一を演じていますが、演出も雰囲気も市川=石坂版には到底及ばず殆ど観ておりません。先日稲垣吾郎主演の「悪魔が来たりて笛を吹く」を流し観しましたが、金田一は兵ちゃんのイメージを継いでいますが、演出にやはり腰がない。ビデオ撮影の粘着性のなさもつまらない原因になっていますね。
新版は観られるチャンスが巡ってくるまでは観ないでしょう。兵ちゃんももう若くないし。

私も一番好きなのは「手毬唄」でございます。正統派としての完成度は本作です。
奈緒子
2007年01月22日 15:44
TBありがとうございます♪
「手毬唄」はすごく評判がよいのですね。
私は見たことがないので、見てみたいです。
やっぱり石坂浩二が一番似合います。

稲垣版は、CGも目に付くし、
人工的におどろおどろしさを作り出している感じがして苦手です。
オカピー
2007年01月22日 17:36
奈緒子さん、こちらこそたくさんのTBとコメント有難うございました。

「手毬唄」と「犬神家」は拮抗していると思います。「犬神家」のほうが正統派のイメージで、「手毬唄」は変化球と言っても良いでしょう。

稲垣版はざっととは言え観たのはこれが初めて、きちんと見れば映画ではないけれど映画評を書きました。TVは予算が限られているので比較的安価で済むCGを使うのでしょうが、演出力の差は歴然。日本映画史の中でもベスト10に入るであろう名匠・市川崑とTV演出家を比べるのも無謀ですね(笑)。
トム(Tom5k)
2007年04月22日 13:51
オカピーさん、わたしは昨日、久しぶりにこれを観ました。
おっしゃるように映画技術に凝っていますよね。
思えば角川全盛期。
わたしの思春期、青年期を象徴するのが、角川かもしれません。良い時代でした。当時はわたし、坂口良子さんが大好きでした。ああいう配役も角川ならではのアイドル嗜好だったのかもしれませんね。
『八つ墓村』は角川映画でなく、松竹の作品でしたね。これも好きでしたが、金田一役は、おっしゃるように渥美清さんより石坂浩二さんのほうが印象的です。
『野生の証明』など証明シリーズや『白昼の死角』『悪魔が来たりて笛を吹く』など東映の角川作品も観に行った記憶があります。
推理・ミステリーも単純な体系ではないですよね。
そうそう小松左京の『復活の日』などもありましたね。映画のエンタテイナーともいえる角川春樹。角川映画に対する賛否両論はあると思いますが、映画をこよなく愛している方であることは間違いないように思います。

では、また。
オカピー
2007年04月23日 02:34
トムさん、こんばんは。

70年代半ばから暫く角川書店の時代でしたね。横溝正史や森村誠一を徹底的に売り、映画化もして相乗効果を狙って見事に成功しました。
角川春樹の最初の失敗は時分で監督をしてしまったこと、次のことは言うまでもないですね。映画が好きで、実業家としての才能もあったのでしょう。多分もっと評価されても良い作品群を発表しましたよね。
「人間の証明」は当時原作に圧倒されたので、映画はどうにも平凡な印象がありました。「野性の証明」は寧ろ映画の方が良かったかな。

月末から5月にかけて、市川=石坂コンビ5本が連続放映されるようなので、保存版DVDを作ります。

>坂口良子
ちょっととぼけていて、いつの間にか金田一に懸想するところが可愛かったですよね。私も割合好きだなあ。小動物的で(笑)。
ぶーすか
2007年05月11日 11:12
TB&コメント有難うございます。金田一耕助というと大野雄二のこの音楽ですねー。私もリメイク版はテレビ放送待ちです。やっぱり兵ちゃんは年を取りました^^;)。
オカピー
2007年05月12日 00:33
ぶーすかさん、毎度有難うございます。

これだけ良いものがあるのにリメイクするのは、市川監督にし足りないことがあったということなのでしょうが、私は敢えてリメイクの必要性は感じませんねえ。
兵ちゃんが50歳前にもう一本観たかったなあ。ましてリメイクでは気が乗りませんや。

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