映画評「銀嶺の果て」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1947年日本映画 監督・谷口千吉
ネタバレあり

2001年映画鑑賞メモより。

黒澤明の脚本を谷口千吉が映像化した極限ドラマだが、黒澤らしく線が太くて見事である。同時代の米国映画のような感覚で観られる作風なのも有り難い。

三人の銀行強盗犯が雪山へ逃げ込む。一人は発砲が原因の雪崩で死に、残る二人即ち疲れた中年男の志村喬と若いやくざ風の三船敏郎が山小屋に辿り付く。老人と孫娘・若山セツ子と若い登山家・河野秋武が暮らしている。
 娘は志村に父親のように懐く。志村は実は同じ年頃の娘を亡くしている。若い三船は我慢できずに志村をせき立て青年と共に銀嶺を越えることを決行するが、悪人の正体を現した三船が青年に重傷を負わせ、堪忍袋の尾を切った志村が三船を倒し、青年を背負って下山する。

警察に連行される志村の姿が潔い。

序盤の素人探偵が旅館で犯人を探る場面のユーモア感覚、中盤の緊密な人間描写、終盤の緊迫するアクション。構成的には完璧と言って良いだろう。雪山の撮影も光と影の扱いが見事。
 黒澤自身が演出したらもっと粘っこさ、人間の嫌らしさが出たのではないかというこちらの勝手の思い込みを別にすれば、相当上出来と言うべきである。

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この記事へのコメント

2007年01月18日 01:03
 オカピーさん、こんばんは。TB&コメントをどうもありがとうございます。三船敏郎がデビュー作であるこの作品で、すでに圧倒的な存在感とエネルギーを発散しているのを確認するだけでも意義のあることだと思います。獰猛な野獣のようなアプレゲールを見事に体現していました。
 彼は最初から「ミフネ」だったということでしょう。ではまた。
オカピー
2007年01月18日 15:26
 用心棒さん、こんにちは。
 三船敏郎は良いですね。彼は撮影監督希望だったわけですから、どこに才能が転がっているか分りませんね。
 中には下手な役者だというご意見を述べる方もいらっしゃいますが、演技の巧拙はある一定以上になると評価は大変難しいもの。そんな細かい点を云々するより彼のスケール感に素直に脱帽したほうが賢いでしょう。
 「ジャコ万と鉄」も出してみましたので、是非お寄りください。ひどく簡単なものですが。
鮴畑
2007年04月04日 16:36
初めてコメントします。最近ブログを始めた者です。
「銀嶺の果て」はだいぶ前にテレビの深夜放送でやっていた時に
眠気と戦いながら見た記憶があります。
何日か前からチェックはしていたので、必死で見ましたが
それまで黒澤映画での三船しか知らなかった自分にとっては
「むき出し」の三船を何か猛獣でも見るような感じで
見ていてあっという間に映画が終わったようでした。
それほど、衝撃的だったのだと思います。
あれから、出ていたDVDを買い損ね、非常に惜しい想いをしています。
今度見つけた時は絶対に購入したいと思います。
とりとめもなく、長々と失礼しました。
http://jihibiki.exblog.jp
オカピー
2007年04月05日 03:54
鮴畑さん、はじめまして。
しかし、難しいペンネームですね、ちょいと読めませんです。

「七人の侍」「酔いどれ天使」等初期黒澤作品の三船敏郎もかなりぎらぎらしていましたが、もっと激しかったかもしれません。
DVDが見つかると宜しいですね。

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