映画評「ザ・コーポレーション」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2004年カナダ映画 監督マーク・アクバー、ジェニファー・アボット
ネタバレあり

近代的企業・・・ここでは株式会社と同義とみなしていいだろう・・・について批判的な立場で考察したドキュメンタリー。

歴史家によれば、近代的企業はニューコメンの蒸気機関の発明に始まる産業革命において生まれ、やがて銀行等との関連が成立し、やがて企業は会社を人と同等と見なす法人となる。

モーサントなる会社が売り出した牛の乳を増産させる人工ホルモンは牛乳を通して人体に害を及ぼすが、アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)は害なし、そしてカナダでは全く逆の判断が下されたと紹介される。
 僕の知る限りでもアメリカの隣国カナダはいつも冷静な判断をし、最近ではアメリカの強制をはね付けた牛肉での判断も適正と思われた。惜しむらくは、本作はカナダ製である。

モーサントは悪名高き枯葉剤も作っている。アメリカ資本のホンジュラスの工場での搾取も紹介される。

上映時間145分のうち三分の一くらいを占めるこの辺りまでは、企業を人とみなして性格診断をする部分を除いて、常識的な情報に過ぎず残りを見るのがつらいなあと思われたが、僕の声が聞えたかのように、直後から凄みが出て来る。

まず、ボリビアの水の民営化で、国民の平均月収の四分の一を使用料として収めることが強制される一方で自力で雨水などを溜めることすら禁止される。当然アメリカの企業が絡みで、当然のように暴動になり少なからず死傷者が出る。これがわが身に起ったら怒らないでいられよか。

続いて、微生物の知的所有権裁判。これもアメリカでは企業側の勝利、人間以外の動物はいずれ全て知的所有権を盾に企業により管理されるようになる。これが戦慄しないでいられよか。

さらに先に上げたモーサント社の所業を取り上げたTV番組を巡る訴訟。ここで怖いのはモーサント側からの脅迫ではなく、結局放送局も企業であるということである。その番組を作った当事者二人はTV局の指示に従わなかったとして首にされ、告訴するが上級裁判所により敗訴となる。企業の横暴。アメリカの裁判所は尽く企業の味方である。これが寒々としないでいられよか。

そんな具合に絶望的になっているところに終盤曙光が感じられるように設計され、多少救われる部分を残している。

「ロジャー&ミー」などで企業批判をしてきたマイケル・ムーア監督が映画を〆る。そして、自分が企業人を批判しつつその企業を利用していると認めているのは、我が意を得たりである。

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この記事へのコメント

viva jiji
2007年01月12日 17:04
これ、すごく、観たい!と思っているうちに
劇場上映が終わってしまったんです。
DVDになっているんですね。
来週でも観ましょ!

最後の2行、特に後半は
ピリッっとワサビのように“効いて”いますね。
オカピー
2007年01月13日 02:18
viva jijiさん
序盤はそこそこですが、中盤以降相当引き込まれます。
最近は本作で悪玉に上げられている<企業>なる存在も、環境という面に関しては相当努力しておりますが。残念ながら義務であって配慮ではないんですけどね。

>ピリッっとワサビのように“効いて”いますね。
褒められたのかな。
どちらかと言うと書きやすい作品でした。昨日上げた「イン・ハー・シューズ」は良い映画ですが、演出的に言うと余り書くことのない映画。演技は良かったですが、どうにもまとまりませんでした。こういうのは姐さんに任せて置こうっと(笑)。

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