映画評「男はつらいよ 寅次郎の青春」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1992年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

「男はつらいよ」シリーズは第1作を除いてテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。

シリーズ第45作は【ごくみシリーズ】最終作。

宮崎で商売をしていて理容師をしている美人・蝶子(風吹ジュン)と知り合った寅さんが、友人の結婚で同地を訪れた泉と巡り合うが、蝶子と泉との間を迷走した時足をくじいて入院。
 連絡を受けた満男が早速駆け付けるが、目的は勿論彼女のほう。
 迎えに来た泉が蝶子の弟(永瀬正敏)と親しげにしているのでがっかりしたものの、彼に婚約者がいると知って元気回復。何とも現金な満男であります。

孤独な蝶子は寅さんにホの字になり、彼が若い二人の帰るのを口実に逃げ出すのを知って怒る。
 この時の風吹ジュンの顔が怒りと切なさが入り交じって実に美しい。いやあ僕も惚れっぽくなりましたなあ。この場面が大変良いので★一つUP。
 彼女の歌っていた「港が見える丘」はかつてリリー(浅丘ルリ子)も歌っていたっけ。

またまた満男が伯父さんの(帰る)心理分析を本人の前でする。
 「伯父さんは最初のうちは楽しいけど、奥行きがないからすぐに飽きられてしまう。それを伯父さんはよく知っているんだよ」などと曰まうのだが、寅さんもある程度納得しなければならない。この辺りは実に可笑しい(切ない)。

さて、泉君は母親を看病する為に始めたばかりのレコード店の仕事を辞め名古屋に戻ることにするが、満男は今回ばかりは列車に飛び乗らない。ここで乗ったらさらに映画を一時間延長しなければならないから(冗談、冗談)。

弟が最後に現れて蝶子がその後間もなく呆気なく結婚したことを報告、「寅さんと結婚するのか思ってた」と言い、寅も「俺もそのつもりだったんだけど」と答える。
 これは彼の思いやりであるし、中盤の蝶子の話と絡め実に巧い幕切れであった。この場面の功績も大きい。

渥美清の病状を気遣う脚本設計も感銘を呼ぶ。今回も総登場時間は余り多くないが、遍く出演場面があるのでバランスが取れていて物足りなさを感じさせない。
 また、御前様を演じてきた名優笠智衆がこの映画の翌年亡くなり、シリーズ最後の出演作となった。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2007年01月16日 08:04
TB&コメント有難うございます。風吹ジュンが色っぽくて良かったです^^)。永瀬正敏とのからみも面白くて、寅さんに元気のない後半作品の中ではかなり好きな作品になりました。
オカピー
2007年01月17日 03:03
ぶーすかさん、こんばんは。
歌を歌っていた頃の風吹ジュンはろくなもんじゃないと思っていましたが、女優になって正解。あの見上げる顔、すばらしいかねー!(笑)
45,46作と寅さんの扱いは懐古調。嬉しいであります。
浅野佑都
2018年11月12日 17:30
 撮影当時、体調のおもわしくなかった渥美清の出番を減らし、その分、吉岡秀隆ら、若手をクローズアップした一連の満男の恋シリーズの中では好きな作品ですね・・。内容的にはアベレージですが。

>風吹ジュンの顔が怒りと切なさが入り交じって

そうでしした!
彼女は、怒りの表情が実にいい。
TBSの向田邦子シリーズに出演した時,「鬼瓦のような顔をした女」という役どころだったのですが、綺麗な顔が本当に鬼瓦のように見えたものです・・。
「岸辺のアルバム」で、国広富之の恋人でモスバーガーに勤める女の子役を演じたときには、こんなにいい女優になるとは思いませんでした・・。
なにせ、デビュー時の彼女の歌は殺人的(笑)でしたからね・・。
年齢も3歳サバ読みで(よくあることですが)安井かずみ作詞の「23歳」という曲を出したときに実年齢に修正したようですね。

 来年、公開予定の、87歳の御大山田洋二がメガホンを取る男はつらいよ第50作には、メインキャストの中で今も健在な満男一家ほか、浅丘ルリ子や夏木マリ、映画出演は久々となるゴクミらが出るそうで、寅次郎の出演場面はミックス合成となるようです。
実に楽しみですね!
浅野佑都
2018年11月12日 20:08
 続きます
>満男の分析

奥行きのない、欠点の多い男を、それでも聖母のごとく、懐中に抱きいれる稀有な女もいるとは思うのですけどねぇ・・。

49作では、そのようになった、と思いたいです・・。
オカピー
2018年11月13日 18:59
浅野佑都さん、こんにちは。

>「鬼瓦のような顔をした女」
中学以降TVドラマは殆ど観ず、題名くらいしか知りませんが、この設定は記憶にありますね。どうしてだろ?

>「岸辺のアルバム」
ジャニス・イアンが歌う主題歌「ウィル・ユー・ダンス」の記憶がありますね。
そうか、この頃風吹ジュンが若手として活躍し始めたのかあ。

>こんなにいい女優になるとは思いませんでした
右に同じですね。
中年女優としての彼女は「コキーユ 貝殻」で目を見張りました。見事に素敵でした。

>彼女の歌は殺人的(笑)
浅田美代子、風吹ジュン、安田成美・・・凄かったです。
SMAPの中居正広もそこに加えて良いでしょう^^

>第50作
このニュースには本当に吃驚しました。
 ミックス合成での出演となる寅さんは、他のキャストに比べて若すぎるのではないかなあ。タイムマシンで過去からやって来た設定か(笑)。
 山田洋次監督、本当に元気ですね。

>稀有な女
リリーは惚れていたと思いますが、寅さんは自分から避けてしまう。安定を求めながら、安定に安住するのが怖かったんでしょうね。

最近の僕の説ですが、寅さんがいなくなって日本人が変になった・・・どうでっしゃろ?

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