映画評「男はつらいよ 寅次郎の告白」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1991年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

「男はつらいよ」シリーズは第1作を除いてテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。

シリーズ第44作はゴクミ・シリーズ第3作。前二作より寅さんの出番が多く、古くからのファンとしては嬉しい。

またまた東京へやって来た泉(後藤久美子)の目的は山野楽器への就職活動。しかし割当てが決まっていて無理な相談ということで空振り、帰れば帰ったらで母親(夏木マリ)が男(津嘉山正種)を連れ込んできて不愉快極まりなく、頭の中では母親の幸福を祈る気持ちはあっても心の中では恨まないではいられない。
 自分を客観的に見られる、人間的に大人になった近年の寅さんも顔負けの泉君であります。彼女は旅から帰って成長する。旅の効果であり、寅さんの見えざる先導である。

彼女が鳥取砂丘へと家出したことを知った満男は当然の如く彼女を探しに鳥取へと急ぐのだが、その前に寅さんは泉と再会する。結局全員揃ったところで、寅さん馴染みの女将(吉田日出子)が営む旅館で一晩を明かすことになるのだが、実は女将と寅さんは結婚寸前まで行った深い仲だったと寅さんは告白する。
 この女将は寅さんにぞっこんかつコケティッシュな、今までに例のないタイプのマドンナで、大変男心をくすぐる。演ずる吉田日出子は若い時は変な女優だなあと思ったが、今観るとなかなか良い。

ゴクミ・シリーズ前二作に比べ、若い二人の青春模様とベテラン二人の(映像では表現されない過去の)人生模様が上手く交錯するのが映画的にコクがあり楽しめる。別れ間際に女将がこっそり寅さんの手を捻るのは、「あそこまで行ったのに手を出さないとはしようがない人ねえ」といったところか。

山田洋次と朝間義隆の脚本コンビが、満男に「伯父さんがいざとなると逃げるのは、綺麗に咲いた花をむしり取りたくないような心境ではないか」と言わせているのも大変興味深い。僕はそれに加えて、憧れでもある定着への恐れ、結ばれたならいずれ生ずるであろう男女関係の醜い顛末への恐れもあると踏んでいる。

最後のさくらの兄に対する配慮も心に沁みる。彼の旅先での孤独に理解が及ばねば出来ない細かな気配りでありました。

最後に、91年当時はまだスチュワーデス、看護婦という言葉が平然と使われていた。何年もしないうちに、フェミニストたちがこうした言葉を禁止する、小難しい時代がやって来る。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2007年01月12日 19:48
ほんと、吉田日出子は「今までに例のないタイプのマドンナ」で可愛く魅力的でした。迫られる寅さんのタジタジぶりも笑えましたが、満男が助け舟(?)を出してなかったらどうなっていたことか…^^;)。私もこの女優さんは「変な女優」というイメージしかなかったのですが、味のある演技のできる方だったのだと、再評価しました。
オカピー
2007年01月13日 15:19
ぶーすかさん、またまたこんにちは。
吉田日出子は、今回気に入ってしまったなあ。
あの手をつねる場面は意味深長ですよね。私なりに考えてみましたが、じっさいのところはどうなんでしょうね。

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