映画評「大停電の夜に」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・源孝志
ネタバレあり

今年の初め「THE有頂天ホテル」が話題になったが、それより少し前に作られた群像劇。日本映画界ではにわかに群像劇がブームになっているようである。

クリスマスの夜の東京、余命間もない父親を抱えた会社員・田口トモロヲが仙台へ左遷させられることが決まり、愛人・井川遥と別れようとするが、妻・原田知世は離婚届を書いている。彼は父親から初めてその存在を知らされた実母・淡島千景に電話を入れる。やがて人工衛星が落下して東京に数時間に及ぶ大停電をもたらす。暗い中、彼女は夫・宇津井健に不倫の子を持った過去を話し、ショックで家を離れた彼はとあるジャズ・バーに辿り着く。
 バーの主・豊川悦司は今日をもって店を止めようとしているが、かつての恋人である原田が来るのを待っている。ろうそく店を営む妙齢の田畑智子からもらった蝋燭で店を照らし、彼女に過去を語る。原田は現れるが会釈しただけで別れ、夫と再び仙台でやり直すことを決意する。

群像劇と言っても、離婚の危機にあった夫婦の絆が再び結び付く模様が明確に軸となっていて、これに関連する人物を繋げるように広げて行くという形を取っている。
 この夫婦を中心に話を書いて行くと、6年ぶりに刑務所から出てきた男・吉川晃司と二男を孕んでいる昔の恋人・寺島しのぶと、人工衛星マニアの少年と乳癌になった少女・香椎由宇のエピソードがはみ出てしまう。吉川は宇津井に助けられ病院で田口と遭遇するからまだしも、若い二人は病院にいながら全く交錯して来ないので、テーマ的に多少関連してくるものの無駄気味。ない方がすっきりする。

共同で脚本も書いた源孝志は初めて観るが、予想よりきちんと作っているし、男女の愛と親子の情を独立させずに互いに補完しあうように構成したところが宜しい。永田鉄男による撮影もなかなか重厚かつ面白味がある。

ビル・エヴァンズの名作「ワルツ・フォー・デビー」から第一曲"My Foolish Heart"がフィーチャーされているのがジャズ・ファンにはお楽しみ。

その昔「ニューヨークの大停電」というピンク・コメディーがあったのを思い出しました。あの作品よりは大分良い出来栄えであります。

他の方のレビュー⇒
「大停電の夜に」(風に吹かれて)

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この記事へのコメント

kimion20002000
2006年12月27日 11:29
TBありがとう。
撮影監督の永田さんは、「アメリ」の撮影なんかにも参加していますね。幻想的な光の演出が得意の方ですね。
TBが複数送信されてしまいました。すいません。削除してください。
オカピー
2006年12月28日 05:21
kimion20002000さん、こんばんは。
撮影が一番良かったかもしれませんね。丁寧な感触は恐らく撮影から醸し出されていたのでしょう。
余分なTBは削除致しました。
2006年12月29日 23:32
オカピーさん、お久しぶりです~TBありがとうございました☆
おっしゃる通りこの映画の群像劇としてのリレーションがない若い二人のエピソードについては、1年前に観たばかりなのに、すっかり忘れてしまうほど印象に薄いエピソードでした。
トヨエツと田端さんのからみが大変良かったです。
季節柄ロウソクの淡い炎から照らされる映像が大変美しかったですね。

あまりご無沙汰してしまいましたので忘れられてしまったかと思いました(笑)
TB頂いて嬉しかったです~
良いお年をお迎えください☆
オカピー
2006年12月30日 03:33
rikocchinさん
いやあ、コメントを残せないのが申し訳ないです。
ロウソクは見事でしたね。幽玄な感じが致しました。若い二人をもう少し何とかしてくれたら、素晴らしかったでしょう。

忘れるものですか(笑)。単なるものぐさなんです(笑)。そちらからもお越し戴けると嬉しかったりします。

それでは良いお年を。来年も宜しくお願い致します。
chibisaru
2007年07月15日 08:44
映像が綺麗でしたね・・・ほのかな灯りに照らされる人々の表情がとっても素敵でした。100万人のキャンドルナイトというイベントがあり、電気を消してロウソクの灯りで一晩過ごしてみたときに、ロウソクの灯りをみながら感じたことは、人恋しさや優しい気持ちでした。ロウソクの灯りというのは、ひょっとすると人を素直にさせる魔法を持っているんじゃないかと思います。登場人物たちもロウソクの灯りをみつめながら同じような心境になったのかな・・・(笑)
オカピー
2007年07月15日 15:42
chibisaruさん

洋の東西を問わず、ロウソクは人々に何かを喚起するのでしょうか。
私が一番印象に残っているのは、トリュフォーの「緑色の部屋」ですが、ご存じないでしょうね。死んでいった者に対する沈痛な思いに満ちた異色作です。

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