映画評「暴れ豪右衛門」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1966年日本映画 監督・稲垣浩
ネタバレあり

「隊長ブーリバ」の後にこの作品をUPした理由がすぐに分る方は相当な映画通なり。
 どちらも同じロシアの文豪ゴーゴリの小説「タラス・ブーリバ」を映像化した作品というわけだが、寧ろ兄弟と姫の関係は遥かに原作に近いので、雑誌等に記載されているハリウッド版の翻案というのは正確ではない。

戦国時代、加賀七党の頭目・豪右衛門(三船敏郎)は豪胆な郷士で徹底した侍嫌い。
 戦国大名・円城寺の城から人質になっていた弟二人が解放され帰郷するが、上の弟・弥籐太(佐藤允)が豪快な兄を信奉しているのに対し、下の弟・隼人(田村亮)は落武者の遺児・あやめ(大空真弓)に対する兄の扱いが愉快ならず反抗的な態度を取る。同じ捕虜の身であった越前・朝倉家の梓姫(星由里子)と愛し合っているという背景もあるのだが、七党と共同戦線を張って円城寺を責めようと図る朝倉に利用されて悲劇的な最期を遂げると、豪右衛門はいよいよ朝倉家に反旗を翻し、一度は離反した他の郷士たちも戻って来て一致団結の下に進撃する。

「隊長ブーリバ」よりぐっと複雑な人間関係になっているが、朝倉側と七党側双方の権謀実数が渦巻く中で起きる三男の悲劇を通じて、父親に相当する長兄・豪右衛門の豪胆で純粋な精神を浮き彫りにするという構図である。つまり、単純な悲恋に人海戦術の戦闘場面を交えるのが主眼だったハリウッド版より原作の主題に近いが、些か観念的に過ぎて感極まるというところまでは行かない。

主人公は「七人の侍」の菊千代が年を食ってそのまま郷士になったような人物で、彼らの生活描写や台詞も黒澤明風で時々苦笑してしまうが、一味を率いた主人公と馬での進軍をオーヴァーラップさせた幕切れには稲垣色が強く出ている。しかし、似通っているだけに50~60年代に傑作時代劇を数々放ってきた黒澤の力感と比較してしまい、分の悪さは否めない。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2007年01月16日 15:07
TB&コメント有難うございます。さすがゴーゴリの原作を御存じなんですね。恥ずかしながら私は未読です。三船敏郎のキャラは御指摘の通り、菊千代とカブリ、黒澤明の作品と比較されるのも仕方ないところですが、説教臭いところがないし、アクションと人間ドラマ展開が面白かったです。大味なハリウッドの「ブーリバ」はそれに比べて私にはイマイチでした。
オカピー
2007年01月17日 03:24
ぶーすかさん、こんばんは。
私はゴーゴリよりはプーシキンが好きなんですけど。ゴーゴリを読まれている方は少ないでしょう。「外套」は今でも人気があると思います。
さっぱりとはしていますね。性格はよく浮き彫りされていると思いますが、豪右衛門の心理が実は余りよく解らないんです、菊千代と違って。そこがちょっと弱いような気がしております。
「隊長ブーリバ」は確かにハリウッド調の大味で私もそう書きましたが、スペクタクル的な見どころは結構あって、本物の手ごたえ。大スクリーンでみたいなあと思いましたね。

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