映画評「ラスト サムライ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2003年アメリカ映画 監督エドワード・ズウィック
ネタバレあり

2004年映画鑑賞メモより。私選2004年度第10位作品。

南北戦争で武勲を立て英雄になったネイサン・オルドグレン(トム・クルーズ)という青年が主人公。
 興行で飯を食っている現在はワイルド・ビル・ヒコックみたいな印象で、この彼が日本政府から近代化の始まったばかりの官軍に西洋式兵学を叩き込む役目を負って来日する。  
 というのが始まりだが、時代設定が1877年なので、西郷隆盛の起こした西南戦争がモチーフになっていると考えて良い。

訓練はしたものの依然お粗末な官軍は、目的としていた勝元(渡辺謙)の騎馬隊と遭遇して呆気なく敗れ去り、ネイサンは辛うじて生き延びて捕虜になる。勝元の妹にしてネイサンが最後に殺した侍の妻であるたか(小雪)に甲斐甲斐しく世話される日々。彼女の子供たちも彼を慕い、彼も武士の家の生活に慣れていく。

正直なところ、本作のハイライトは終盤ではなく、ここだと思う。西と東が理解を深めていく場面は実に美しく清々しく見ることができた。

主人公が武士道に目覚めた頃勝元は官軍と戦う決意を固め、ネイサンも彼に協力して立ち向かう。官軍は大砲を繰り出し、さすがの勝元軍も昔ながらの鎧と刀では歯が立たず、ネイサンは勝元の息の根を止め、天皇の前に現れる。若き明治天皇(中村七之助)も侍の誇り、日本国の誇りを理解し、日米で結ぼうとしていた協定を破棄する。
 ネイサンのその後は不明とされているが、語り手は彼が勝元の故郷に帰ったと想像する。

実は欠点は少なくない。
 勝元軍の室町時代の武士のようないでたちは歴史考証的におかしいし、その部落はまるでインディアンの集落である。明治天皇に英語を喋らせるのは日本人が観るには些か不都合。
 ドラマ構成上では、主人公が武士道に目覚め勝元の下で命を捨てようとまで決意するに至る心理状況が些か曖昧であり、さらに、官軍兵士が勝元の死に際し留めを刺すどころか敬礼する場面のハリウッド的ヒューマニズムに甘さを覚える。西部劇を数多く観て来た目にはインディアンの最後を描いた作品とオーヴァーラップする部分がかなりある。

が、全体として引き締まった映像が印象に残り、日本人像もハリウッド映画が単独で作り上げたものとしては史上ベストと言って良いであろう。一昔前と異なり日本人役者が色々口を挟んだ結果であろうが、その日本人の俳優たちが素晴らしい。さすがに時代劇に実績のある渡辺謙、真田広之である。紅一点の小雪も日本女性かくあれかしという演技を披露し、アメリカ側のトム・クルーズも「タップス」以来の好演。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2006年12月12日 16:29
劇場で観た時は、あまり期待してなかった割にはちゃんと日本を描いていて好感がもてましたが、テレビで再見してみると、いろいろアラが見えてしまいました^^;)。日本人出演者がどれも良かったですね。渡辺謙や小雪はもちろんですが、登場シーンやセリフは多くはなかったですが真田広之が良かったと思います。謙さんと同様、真田広之も今以上に世界で頑張って欲しいですねー。
オカピー
2006年12月13日 02:24
ぶーすかさん、こんばんは。
色々けちを付けた割には気に入った作品で、もっと評価を高くした他の秀作を退けて無理矢理ベスト10に押し込んだ記憶があります。
日本人が絡んでいたかもしれませんね。日本語吹き替えでは分りませんが、明治天皇が英語を喋るのは気に入らないなあ。
渡辺謙がオスカーを取れなかったのは惜しいですが、もっと惜しいのは「たそがれ清兵衛」の外国語映画賞を逸したことです。山田洋次はもっと世界的に名前を知られねばいけない才能ですからね。

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