映画評「男はつらいよ 寅次郎物語」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1987年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

「男はつらいよ」シリーズは第1作を除いてテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。

シリーズ第39作。

今回の夢は寅さんの少年時代の記憶。少年時代の彼の母への慕情を基調に、的屋仲間・般若の政の遺児である秀吉(伊藤祐一郎)が寅さんを頼って出て来るところから本編が始まる。

寅さんは自分が名付けた少年を連れ、数年前に家出したという母親(五月みどり)を探すべく和歌山から奈良の吉野、それから志摩へと旅を続ける。その途上、吉野の旅館で熱を出した秀吉を親身に面倒みてくれたのが隣の部屋に泊っていた隆子(秋吉久美子)。

寅さんは三人で柴又に帰る夢を抱き、隆子には堕胎しなければ秀吉と同じくらいの年になる子供がいたと告白。二人は「母さん」「父さん」と呼び合う。
 この一連の場面で、親にも子にも恵まれぬ彼らは擬似家族を演じるのだ。いやいや、じーんと来ますなあ。

志摩で遂に母子は再会するのだが、秀吉は寅さんを慕って離れない。寅さんは「親父のようにはなるな」と突き放し、後に親子連れで歩いているのを見掛けた時は物陰に隠れる。
 ここ2、3年の彼は自分のしてきたことが如何に恥ずかしいかという自覚を表に出すようになっていて、御前様(笠智衆)がさくらに語るように仏様のようになってきた印象すらある。

今回は、母探しという古典的な題材故に、母子の再会場面、寅さんと秀吉の別れの場面などで意図的に大時代的な演出をしている。些かわざとらしくて嫌だなあと思われる方もいらっしゃるかもしれないが、僕は気にしない。

「寅次郎物語」であるから作者は少年に寅の姿を投影していると考えられるが、その一方で、下村湖人が母の愛を求める少年を描いた「次郎物語」の洒落なのかもしれませんな。考えすぎ?

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この記事へのコメント

ぶーすか
2006年11月29日 16:39
秋吉久美子のマドンナは思っていた程悪くなかったんですが、どうも全体的にインパクトが弱くてシリーズ中2、3番目ぐらいにイマイチな印象でした。秋吉久美子へのアプローチもいつものマドンナへのに比べると弱いもので、おそらく男遍歴豊かな彼女に自分の母親と同じものを感じたのでは…。
オカピー
2006年11月30日 03:44
ぶーすかさん、こんばんは。
私は三者三様の孤独と、それ故に擬似家族を演ずる彼らにぐっときました。
彼らは互いに解りすぎていたんでしょう。
映画のせかいマスター
2006年12月18日 15:00
どうも!秋吉久美子さんはあまり絡みませんでしたね。もっと恋するのを期待してたら、ややがっかりなのかもしれませんが、それはそれで良かったかと思います。
オカピー
2006年12月18日 18:29
映画のせかいマスターさん、こんばんは。
思うに、寅さんは「寅次郎ハイビスカスの花」で恋の遍歴を辞めていると思いますね。表面的に、或いは、柴又の人々には「またか」と思われますが、その前後で彼の思いは違うように感じられます。
それは恐らく山田さんが「ハイビスカス」で一旦このシリーズを止めたかったからではないかと、勝手に思っているのです。

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