映画評「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1985年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

「男はつらいよ」シリーズは第1作を除いてテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。

シリーズ第36作。栗原小巻が第4作「新・男はつらいよ」以来15年ぶりに出演。

今回の夢はスペースシャトルに乗る寅さんの大騒ぎだが、本編にはなかなか絡んでこない。

タコ社長(太宰久雄)の娘あけみ(美保純)が仕事に夢中の夫に愛想をつかして家出する。本人からの電話で下田にいることが判り、折良く戻ってきた寅さんが連れ戻しに出かける。何とか慰めて連れ戻そうと苦心、式根島へ寄り道することになるが、そこに美人の先生・真知子(栗原小巻)がいたことで、ミイラ取りがミイラに成ってしまう。

これが前半の物語である。第35作から続く古典路線で、今回は「二十四の瞳」が大々的に扱われている。あの作品で活躍する自転車がこちらでも大活躍です。
 タイトルは「007/ロシアより愛をこめて」から戴いていて、ロシア民謡が幾つか流れるのだが、後半にこれに絡んで上手い場面がある。
 真知子が亡くなった旧友の夫(川谷拓三)と娘と過ごす場面で、娘のいない間に彼が遠回しのプロポーズをするのだが、その瞬間に店のライトが半分落ちて演奏が始まる。馬鹿馬鹿しい演出のようだが、予想もしていないので上手さとなる。

さて、彼女は調布から飛行機に乗って式根島に向う。ここでやっと夢との関連ができるが、その前に彼女の言う台詞が文学的で泣かせる。「このまま結婚したら、青春の熱い感情を胸にしまって鍵をしたまま一生開けることもなくなってしまう」と言うのである。文学少女だったのでしょう。

今回の主題は、再び<堅気と浮草稼業>ということとしておきたい。第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」と同じようだが、180度違う。今回は珍しく、浮草稼業の見栄もなく体裁も気にしないノンシャランなスタイルを賛美しているような印象があるのである。
 あけみに夫を「仕事人間で面白味のない男」と批判させ、満男に「おじさんの世間体を気にしないところが良い」と半ば賞賛させている。最後の真知子の言葉はその追認みたいなものではないか。

映画を観終えた後、真知子の去った後の寅さんが数日前に観た「恋のエチュード」の主人公と同じ立場であることに気付いた。憧憬去りて心の平和を得るも、人生における幸福は遠のくのである。

因みに、さくらと博の家の冷蔵庫が新しくなっている。少し余裕ができんだね。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2006年11月09日 19:21
いつもは夢と本編がリンクしているのに、なぜか今回はつながりがあったのか、なかったのか…さっぱりわからなかったですねー^^;)。でも寅さんの宇宙服姿は面白かったです。名作「二十四の瞳」とあけみの恋という内容で、いつもより濃い内容で面白かったです。満男がイイこと言ってますねー。
オカピー
2006年11月10日 02:11
ぶーすかさん、こんばんは。
スペースシャトルの心は、やはり最後の調布空港での寅さんの心理でしょうね。つまり、行きたくない心理といかせたくない心理が裏表の関係で結ばれている、そんなところでしょう。

大半の人間は、しかし、しがらみの中で生きてゆかねばならない。珍しくデラシネの孤独を描くことを避け、その利点を評価した珍しい作品と思います。

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