映画評「終電車」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1980年フランス映画 監督フランソワ・トリュフォー
ネタバレあり

フランスでアカデミー賞に当たるセザール賞を10部門も獲得したフランソワ・トリュフォーの代表作。

ドイツ軍占領下のパリ、モンマルトル劇場の花形女優であるカトリーヌ・ドヌーヴは、経営者でユダヤ人演出家の夫ハインツ・ベネントが逃亡した今、劇場のやりくりもし、新作の主役に若手俳優ジェラール・ドパルデューを起用する。

戦争中の演劇界の苦闘を描きながらも、ドパルデューが女好きのふりをして実はレジスタンスの闘志だったり、逃亡中のはずのベネントが劇場の地下室に隠れ住んでいたりする冒険小説的な面白さがあり、カトリーヌとドパルデューの秘めたる恋が劇中劇と二重構造的に描かれるなど、扱いは比較的軽い。こうした中間小説的な姿勢がどうもセザール賞の大量獲得に繋がったようであります。

さて物語の続き。
 練習風景、夫妻の密会、ドパルデューのレジスタンス活動が紹介され、やがてベネントの密かな指示を受けた新作は成功するが、ゲシュタポが地下室を確認したいとやって来てピンチを迎え、ドパルデューも活動のために去っていく。
 やがてパリ解放の日が訪れ、入院中の彼をカトリーヌが見舞うのだが、カメラが引いていくとそれは舞台中の出来事という細工が鮮やかで楽しい。

受賞歴は立派だが、実はトリュフォーの作品としては不満がなくもない。
 彼らしい遊びや洒落が余りないし、かと言って次回作「隣の女」のような鬼気迫る凄みも感じられないのである。
 しかし、トリュフォー研究の立場からは、古典(詩的リアリズム作品)に批判的だったトリュフォーが70年代半ばから古典に回帰していったことがよく確認出来る作品で、マルセル・カルネのようなクラシックさが漂う。

遊びは余りないと述べたが、ドアの曇りガラスに二人の影が映るのは、尊敬するヒッチコックの遺作「ファミリー・プロット」へのオマージュ。嬉しいショットだった。

配役では、カトリーヌ・ドヌーヴが「天井桟敷の人々」のアルレッティみたいな貫禄が出ていて、宜しい。最近の彼女は身体的な貫禄が凄くてびっくりだが、その貫禄とは違います。

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この記事へのコメント

viva jiji
2006年10月15日 17:08
わぁあ~~、大好き!です、この作品!
あっ、ヨダレがっ!キーボードに!(笑)

確かに暗くて一種カタい印象を受けますが、私は好きですねえ~。
この雰囲気、この匂い、この語り口・・・。
本作を観ると必ず彷彿とするのは'84年「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」(監督:マイク・ニューウェル)です。
題材は全く違うのにドヌーヴとドパルデューのほの暗い恋模様を観てると、そんな気になるのです。
同じくドヌーヴとD・レインの元夫C・ランベールのベタベタ恋愛映画もありましたが題名を失念しました。
外国女性は加齢につれて貫禄もつきますがお顔立ちが“いかつく”なりますね。(笑)
デイビス、シニョレ、モロー、ローランズ、しかり。
viva jiji
2006年10月15日 17:21
すみません、また、私です。
いま調べましたら未公開作品でした。
きっと私、ビデオで観たんですね。
「残り火」(監督:エリ・シュラキ「君が嘘をついた」など)

余談ですがプロフェッサーの作品選びっていつも面白い!
きょうだって「透明人間」え~と「ガス人間第1号」でもってトリュフォー「終電車」でしょ!
「マルコビッチの穴」じゃないけれどプロフェッサーのアタマの中、観てみたいわ!(笑)
オカピー
2006年10月15日 18:55
viva jijiさん
濃厚で、姐さん好みですよね。
映画館で観た時は「凄い」なんて思いましたが、次の「隣の女」を観て腰を抜かした後、今回見直してみると意外と大衆寄りなんですね。それならもっと遊んでもらいたかったなあという感じもありますが、フランス映画独自の濃厚な匂いは満点かな。
トリュフォーに限らず、これは他の国の作品ではなかなか出せませんね。ルイ・マルの「恋人たち」とかルルーシュの「男と女」とか。

「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」・・・益々暗いですね(笑)。
「残り火」・・・タイトルだけ知っとります。ランベール嫌いです(笑)。

私の頭の中ですか。別に面白くないです(笑)。
何でも喰ってやろうという冒険精神が一つ。何でも偏見なく観られる柔らかい頭。映画批評の入り口で大事なのはこれですよ。
viva jijiさんには私と同じ匂いがあります。覗いた瞬間に惚れました。
かよちーの
2006年10月19日 12:51
こんにちは、お久しぶりです。
この作品、サスペンスっぽくて好きです。
オカピー
2006年10月19日 18:27
かよちーのさん、こんばんは。
ご無沙汰でした。毎日たずねていっても留守でしたから、何されているのかと思っておりました。体調の問題でしょうか。単にお忙しいのでしょうか。
恋愛、冒険、反戦、風刺・・・色々な要素がごちゃまぜになったような作品ですね。かと言ってアメリカ映画とは違って整然としたものがあります。その辺がトリュフォーの上手さでしょうか。
かよちーの
2006年10月20日 21:14
ありがとうございます。
頭痛、低血圧などでレビューを書くのが大変になってしまいまして。
意外に頭を使っていたんだなと思いました。
この作品、わたしとしては最近のふですが、また見たくなって来ました。
オカピー
2006年10月21日 13:57
かよちーのさん
まだまだ体調が悪いのですね。映画をご覧になるのは問題ないのですか。
いずれにしても無理なさらないように。
トム(Tom5k)
2008年10月04日 20:33
オカピーさん、「終電車」観ましたよ。素敵な作品ですね。ネスター・アルメンドロスのセピア・カラーも絶品。
でも、オカピーさんの不満も何だかわかるような気がします。戦時下のフランスなら、それだけでドラマティックな設定ができそうな気がしますし、主張・テーマも、もう少し鮮明にしても良かったんではないでしょうかね?
>古典に回帰していったことがよく確認出来る作品
>マルセル・カルネのようなクラシックさ
>カトリーヌ・ドヌーヴが「天井桟敷の人々」のアルレッティ・・・
とのことですが、
ところで、
ダクシアのモデルは親独派のアラン・ロブロー。ルカのモデルはルイ・ジューヴェ。
アレクサンドル・トローネル、ジョゼフ・コスマなんかもモデルにしていたようです。
これってカルネ一家ですけれど、オカピーさんはご存知だったのでしょうか?
もし、ご存知でなかったのだとしたら、またまたオカピー評、わたしにとっては驚愕です。
たぶん、この作品は、カルネへのオマージュだったのでは?
では、また。
オカピー
2008年10月05日 03:20
トムさん、こんばんは。

>ご存知でなかったのだとしたら
いやいや、全く知りません。
何だか舞台を交えた人生模様を観ていて、ふとそうした印象を覚えたわけですが、そうですか。びっくりです。
映画館で観た時そう感じなかったのはやはり若さですかね。

>カルネへのオマージュ
そうかもしれません。
もしそうなら、僕の勘も馬鹿にしたものではないと嬉しくなります。

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