映画評「ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督ジョン・ポルスン
ネタバレあり

「シックス・センス」は映画界に二つの問題点を残した。
 一つは、どんでん返しの衝撃により映画の評価を決める傾向を作ったこと。映画の評価は全ての積み重ねにおいて行われるべきであることを強調しておきたい。
 どんでん返しの意外性を除けば「シックス・センス」はそれほどの作品でもなかったと思う。
 もう一つは、その為に主観的描写を客観描写と思わせるインチキが流行し始めてしまったことである。例えば、「シークレット・ウィンドウ」など。

さて、本作はその二つの問題点をそのまま継承しているホラー映画、正確に言えばサイコ・スリラーである。

心理学者ロバート・デニーロの妻エイミー・アーヴィングが突然自殺、そのショックで幼い娘ダコタ・ファニングが殻に閉じこもってしまう。それを解消すべく郊外に引っ越すが、翌日から猫が殺されたり、奇妙な出来事が続く。

というお話で、やがて親しくなった女性エリザベス・シューも死体となって発見され、これに彼の弟子でもある児童心理学者ファムケ・ヤンセンも絡んで来るのだが、デニーロがフラッシュバックするところで<驚愕のどんでん返し>が見えてしまう。
 勿論、結末が見えてしまっても致命的な欠点とは言い切れない。上手く作っていけばそれなりに結末まで観続けることが出来るからである。

しかし、これだけ穴が多いとそういう楽しみを見出すことも難しい。
 まず人物配置が余りにも単純。物理的に犯人は一人しかありえない。
 唐突さを恐れずにフラッシュバックを排除し、デニーロの一挙手一投足だけに伏線を置くという態度が維持できればもう少し興味も続いたはずだが、それを別にしても、芸達者のダコタ嬢の扱いが思わせぶりすぎて気に入らないし、妻・猫・女性の二人と一匹がいずれもバスタブで発見されるというのも些か智恵が足りない。

オープニング・タイトルで父娘の車を追う移動俯瞰撮影を本編に繋げる「フレンジー」のようなカメラワークができたら「なかなかやるな」と思わせたはずだが、それもない。

どんでん返し映画はヒッチコックが嫌ったミステリーと同じで、観客をして結末にしか興味を持たせないので、もはや限界であろう。意外性などありそうもない作品でこそ意外性は意味がある。「シックス・センス」が成功したのは誰もそんな展開を予想していなかったからである。

観ているうちに、ダコタ・ファニングが子役時代の安達祐実、エリザベス・シューがさとう珠緒に見えてきた。余談でした。

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この記事へのコメント

viva jiji
2006年10月11日 17:10
TBさせていただきました。
「シックス~」は初見の観客のドギモを抜くドンデン返しラストの使命は充分果たしたと思います。
昨今はただそのドギモを抜かれたい(ためにだけ)観客の多いこと、多いこと。サスペンス&スリラーものでビックリ&ドギモ抜かれない作品は彼らにすると「面白くない、ダメな映画」のレッテルを貼るわけです。
そんな映画ばっか観続けているから日本語の行間もよう読めない、理解できない、書けない、恥ずかしさを知らない感想を持つ後世代が増えるのです。
プロフェッサーは仏映画、オドレイ・トトゥ主演の「愛してる、愛してない」ご覧になりましたかしら?
「シックス~」と同じ轍を踏んでいますが比べてみるのも一興かと。
「ハイド&シーク~」はドンデン返しの「ド」まで行く間にコケてません?(笑)
オカピー
2006年10月12日 00:05
viva jijiさん
姐さんのコメントは泣かせますね~。バックアップ有難うございます(泣)。
こういうのを観ると、サスペンスの神様の作った「サイコ」がいかに優れているか解るというものです。インチキをせずにどんでん返しをしました。あの母親を俯瞰で撮ったのもインチキをしたくないが為。口論をしている場面でも声は決してダブらない。初めて観た時は12歳。怖かったなあ。それまで観ていた幽霊映画の全てがぶっ飛びました。

「愛してる、愛してない」は勿論観ましたよ。あれはインチキがありません。トトゥの主観であることが解るように作られています。完全にネタをばらしていますが、UPしましょうか。
さるお
2006年10月12日 01:40
さるおです。

> 一つは、どんでん返しの衝撃により映画の評価を決める傾向を作ったこと。

まったく同感です。この弊害の犠牲になったのが、例えば『フライトプラン』だったと思います(笑)。
素晴らしいレビューっすねー。
オカピー
2006年10月12日 14:58
さるおさん、こんにちは。
大変嬉しいコメントです。
「シックス・センス」はどんでん返しをおくびに見せず、実行したからうまかった。些か卑怯なショットの扱いもありますが、全体として高く評価されて当然ですね。
「フライトプラン」は未見ですが、覚悟して観ます(笑)。
chibisaru
2006年10月12日 23:14
再びこんばんは。
どんでん返ししか魅力のない作品も最近多くなってきましたね。
でも、シックスセンスほどの良さが感じられない。

さて、この作品、どう褒めようと一生懸命みたのですが、どうにもこうにも褒めどころがなくてまいってしまったのでした(^o^;
唯一、ダコちゃんの「チャーリー!チャーリー!チャーリー!!」という絶叫だけが病的で怖かったというところくらいかしら(笑)

最後にダコちゃんが描いていた絵の中に、チャーリーがいたらホラーな仕上がりになってよかったかも・・・・
オカピー
2006年10月13日 01:01
chibisaruさん、再びこんばんは(笑)。

本文でも多少触れましたが、どんでん返しばかりに眼目を置くから、話が限定的になってこういう体たらくになってしまう。もうどんでん返しは結構です、はい(笑)。
褒めるとしたら撮影ですかね。

役者で顔を呼べると言ってもデニーロは適材適所じゃないでしょう。老骨に鞭打っても100mに30秒はかかる。チャーリーは相当動きが早いはずですよ。

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