映画評「クイルズ」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2000年アメリカ映画 監督フィリップ・カウフマン
ネタバレあり

2003年度第9位。その時の選評です。

サディズムの語源となった18世紀フランスの異端作家マルキ・ド・サドの、投獄されて以降の後半生を描いた力作である。彼の「ジュスティーヌあるいは美徳の不幸」は短いながら悪漢小説の伝統を踏まえた、反面教師的な秀作だと思っている。

理想に燃える若き神父(ホアキン・フェニックス)の理解を得て執筆活動は続けられていたサド(ジェフリー・ラッシュ)は、新しい所長(マイケル・ケイン)が執筆手段を奪うと、ありとあらゆる手段を講じて執筆を続ける。
 この手段というのが何とも凄まじい。シーツに自分の血で書き綴る。自分の体や体から出る排泄物も使う。

結局サド対所長の対決の図式で、善良な神父の扱いがかなり弱いと感じたが、実はそこに本作の狙いがあったことが幕切れで明らかになる。
 舌まで奪い取った所長の勝利と思われたこの戦いは、実はサドの勝利だったかもしれないのだ。
 数年後この刑務所に新しい神父が訪れる。前の神父はどうなったのか。
 神父は発狂していたことが判明するのだが、死んだサドがこの神父の精神に取り付き、彼の体を借りて新作を書き下ろそうとしているのではないか、と暗示させたところでジ・エンド。

途中の手段の凄まじさにも圧倒されたのだが、この幕切れにはとにかく驚かされた。構成の上手さに感心させられたのである。

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