映画評「新・平家物語」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1955年日本映画 監督・溝口健二
ネタバレあり

原作は吉川英治のベストセラー。その序盤部分の映画化で、三部作の第一作に当たる。この後第二部を衣笠貞之助、第三部を島耕二が担当して完結しているが、残念ながら第二部、第三部は観ていない。
 溝口健二は女性の悲劇をテーマにしてきた映画作家だが、これは珍しく平安末期の権謀術数を描いている。つまり、男性的な世界である。歴史考証を入念に行ったことは伺われるし十分な意気込みはあったのだろうが、基本的には大映の押し付け仕事であろう。

延暦寺と朝廷間の紛争を解決した平忠盛が死んだ後粛々と人生を送っていた息子の清盛(市川雷蔵)は、荒法師が神輿を持ち出して威嚇した時に神輿に矢を放ち、台頭していく。

大雑把にまとめればこんな物語で、清盛が忠盛の子ではなく白河天皇の落胤であるという有名な説も取り上げられているが、歴史ファンにとってもっと興味深いのは清盛が、即ち、武士が貴族と入れ替わって政治の実権を握っていく、その黎明期を描いている点であろう。

が、本来こうした作品は講談調のタッチで進められて初めて楽しめるのであって、長廻しを持ち味とする溝口は監督として適正であるとは言えない。長廻しは感情の起伏などをじっくり描くには良い手法なので、清盛出生の秘密が暴露されるあたりは良い味が出ているが、豪快な歴史ものを見ている気にはなれない。勿論溝口にスペクタクルを作る気など毛頭なかったのかもしれないが、鑑賞者にはなまなかに終った印象が残る。

宮川一夫の撮影、美術・衣装の素晴らしさは賞賛したいが、それだけで映画は成り立たないので、全体としては上記の評価くらいに落ち着くだろう。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2006年09月10日 07:54
溝口監督も押付け仕事で何が撮りたかったのかわからない状態で撮影に入ってしまったらしいですが…それでもあのゲジゲジまゆげをOKにしてしまったのは致命的でした(>.<)。雷蔵がいくらイイ演技をしてもあのまゆげに目がいってしまって他に集中して観れませんでした。もう一度(4度目になるかな)鑑賞したらまゆげに慣れて他に目がゆき、評価も少しはマシになるかも知れません^^;)。
衣笠貞之助監督の第2部も大映スター総出演という感じの大作でしたが、こちらの方がエンターテインメントな作品として面白かったです。
オカピー
2006年09月10日 13:46
ぶーすかさん、こんにちは。
可笑しいですね。確かにあの眉毛はやりすぎだったかもですね。
私はどうしても、演出と内容との適正がないなあと思いつつ観てしまいます。撮影、美術がいくら頑張っても、しっくり来ないものを感じてしまいます。
 第2部の衣笠監督の方がスペクタクルには向いているでしょうね。
iyahaya98
2006年10月07日 00:03
ご訪問・TB・コメントありがとうございます。
(苦笑)こちらでも眉毛の話で盛り上がっているようですね。
雷蔵の端正な顔は、力あふれる若武者にはちょっと不向きかもしれません。きっと苦肉の策だったのでしょうね。
オカピー
2006年10月07日 01:15
iyahaya98さん、TB返し有難うございます。
眉毛で採点が悪くなったわけではないのですが(笑)。
「眠狂四郎」の金髪の雷蔵は如何ですか?
ボー
2006年10月28日 20:01
私は、眉毛、ぜんぜん気になりませんでしたよ。
オカピー
2006年10月29日 03:43
ボーさん、毎度有難うございます。
私も言われるまで忘れていたくらいですから、それほど気にならなかった口です。
それより溝口監督のタッチが合っている部分とそうでない部分が半々くらいあって気になりましたね。やはり神妙な話の方が溝口監督は良い味を出します。
さすらい日乗
2013年05月02日 03:34
意外にも面白いというのが私の考えです。
それは、木暮三千代が演じた母親で、大矢市次郎らを捨てて、いろんな男を渡り歩き、最後はまた貴族と戯れていると言うのは、戦後の女性を反映したものと思います。
要は、『夜の女立ち』や『赤線地帯』と思えば良いのです。
オカピー
2013年05月02日 17:37
さすらい日乗さん、コメント有難うございます。

勿論そういう部分は多分にあると思います。
ただ、僕は本作を観ようと入場した、監督なんか関心のない一般大衆が溝口流の切り口に満足を得られるかな、という趣旨で批評を書いたつもりです。
同時代の人間ではないので、当時の大衆がどういう反応を示したのか一向に解らないのですが。

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