映画評「TAKESHIS’」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・北野武
ネタバレあり

北野武は「HANA-BI」で一旦それまでのフィルモグラフィーを総括したように見えたが、この作品は全く別の形での総括編なのかもしれない。それ以上にフェデリコ・フェリーニ「8・1/2」、ウッディー・アレン「スターダスト・メモリー」、フランソワ・トリュフォー「アメリカの夜」を思わせる監督としての心境吐露映画とも思える。
 彼が試写の後批評家と談話した結果、この映画を狙い通りに解っていたのはほんの数名だったと言う。つまり、僕もかなり見当違いのことを言っている可能性が高いが、悪しからず。

人気スターのビートたけし(本人)がTV局内で、彼にそっくりの売れない役者にしてコンビニ店員・北野(ビートたけし二役)に出会い、サインをする。
 一方その店員側。何度もオーディションに落ちるある日コンビニに血だらけのチンピラが逃げ込んで来る。それを見た店員は思わず幻想の世界に入っていくのだが、その中で「ソナチネ」「HANA-BI」「座頭市」など北野武の旧作の名場面がパロディー的に展開する。かなり諧謔的な扱いなので、自らによる北野武映画なるものの偶像破壊と思えないこともない。

他日、店員はふざけたサインを見て怒り、ビートたけしを刺す。が、これはビートたけしの幻想である。即ち全てビートたけしの幻想と考えることも出来る。

この作品を更に難解にしているのは戦中米兵と対峙する日本兵を捉えたプロローグとエピローグの存在である。「戦場のメリー・クリスマス」に始まる彼の映画史回顧編かと思えてもくるわけだが、蛾の幼虫が色々な形で何度も出てきたり、同じ役者が色々な姿で何度も出て来るのは、映画作家の強迫観念のような印象を抱かせる。そうなると、やはり映画作家・北野武の心境吐露ではないかと思えてくるのだが、とにかく真面目に映画を考えようとする人なら退屈はしないだろう。する暇はないはずだ、観客は黒板に書かれた問題について答案用紙に向って必死に考えているようなものだから。

要は、タレントとしてのビートたけし、役者としてのビートたけし、映画監督としての北野武の思いが渦巻いて構成された心象映画であり、かかる作品を採点する行為自体が既にナンセンスなのである(が、勿論放棄はしない)。

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この記事へのコメント

lin
2006年08月23日 20:10
こんばんは、TBありがとうございます。
自分もよくわからなかった組ですねw
一番感じたことを記事にはしましたが、フェリーニやトリュフォー程の切れ味もなく北野武自身の迷いを感じさせられる作品でした。但し今後の作品が変わるのか或いは変わらないのか、変わるのであればどう変わるのか、そういう楽しみのある作品であることは確かだと思います。
此方からもTBお返しさせて頂きました。
オカピー
2006年08月24日 01:11
linさん、TB返し及びコメント有難うございます。
とにかく難解ですね。勿論正解ではないでしょうが、少なくとも全く解らなかったということでもないでしょう。
フェリーニ以降10年に一度くらいこういう心情吐露映画が現れますが、フェリーニの場合はそれ以降完全に私小説映画群となっていきましたよね。
かよちーの
2006年08月30日 20:26
TBしました。
感覚的にわかる映画かなと思いました。
リクツなんて求めてはいけないのかなと。
オカピー
2006年08月31日 00:48
かよちーのさん、こんばんは。
自己満足、独善と言えないこともないですが、色々素材を提示した上でのそれですから、楽しい映画でした。
結構買っております。
かよちーの
2006年08月31日 01:03
自己満足で辟易する映画はたくさんありますが、これは理解出来る人が1人でもいればいいってスタンスで撮られている気がしてわたしにはアリです。
とかなり褒めていますね、わたし。一種の脳内物質が出たって感じで良かったんですよ...。

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