映画評「姑獲鳥の夏」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・実相寺昭雄
ネタバレあり

京極夏彦のデビュー作をベテランの実相寺昭雄が映像化した伝奇ミステリー。
 と言っても、20年程前突然推理小説を読まなくなったので京極については名前以外は知らない。推理小説はエドガー・アラン・ポー以来衒学的傾向があるが、米国ではヴァン・ダイン、日本では小栗虫太郎(「黒死館殺人事件」など)がその点で圧倒的である。京極もその傾向があるようだが、小栗の比ではないだろう。
 脚本は猪爪慎一。

舞台は昭和27年夏の東京、久遠寺医院の娘・梗子(原田知世)が妊娠20ヶ月を迎えても出産の気配なく、その夫(恵俊彰)が密室で行方不明になったという噂を、作家の関口(永瀬正敏)が取材することになる。

というのが根幹となる物語で、彼の友人である古書店・京極堂こと中禅寺秋彦(堤真一)が実は憑き物落とし即ち陰陽師の正体を現わして、憑き物的に呪われた事件を解決する。
 その一方で、本当の探偵である榎木津(阿部寛)も絡んで来るが、他人を記憶を追想することができる能力を発揮するくらいで、大した活躍をしない。

余り評判が宜しくない。主な理由は<長い>ということだが、逆でないかと思う。お話を端折りすぎて訳が分からなくなっている。その背景が何処にあるかと言えば、TVの飛ばし見が当たり前になっている観客に迎合する為に3時間の大作を作るのが難しくなった時代性である。従って、こういう半端な作り方になってしまうのは概ねTVに毒された観客のせいと言って宜しい。
 そんなわけで話が駆け足的になりそれ故にご都合主義的に見える部分もあるが、セットを含め十分健闘の部類と思う。

「ウルトラマン」などの演出でもお馴染みの監督・実相寺が作り上げたムードは10年ほど前に次々と作られ、彼自身も何度か映画化した江戸川乱歩ものの延長線上にある。その意味で新味はないが、TV即ちビデオ撮影ではなかなか出せないムードがある。
 物語の構成としては、実質的な探偵(中禅寺)と職業上の探偵(榎木津)が出てくるのがすっきりせず、これは一本化した方が映画的になる。

探偵は二人居る必要はないのだよ、猪爪君。

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この記事へのコメント

chibisaru
2006年09月05日 03:38
こんばんは。
どえらい量のスパムTBにひいこら言っててなかなか伺えずにすみませんでした。
さて、この作品、めずらしく原作を読んでいて「あの分厚い本をどうやって映画化するんだろう???」と興味津々でした。正直、こんなに簡単な内容だったんだーと愕然としちゃった(笑)
でも、これは私が原作を読んでいたからであって、知識なくご覧になる方にとっては「榎木津探偵」の役回りが不可解極まりないのは当たり前だと思います。そこはちょっと不親切だなーと。

ご指摘いただいた、横溝よりも江戸川乱歩というのはまさにその通りですね。ぱっと浮かんだのが横溝だったんですが、怪奇的なことを考えるとずっと江戸川乱歩の方が近いと思いました。ありがとうございます。
オカピー
2006年09月05日 16:38
chibisaruさん、どう致しまして。
人気サイトは凄いらしいですね。猫姫さんのところは一つの記事にスパムが1000くらい入っていてもう放置らしいです。

>柄木津探偵
原作ファンからは怒られるでしょうが、映画を観る人間の何%が原作を読んでいるかということを考えれば、原作など無視して探偵は一本化すべきでした。京極堂に不思議な能力が入っても全くおかしくないですし。
逆に彼を生かすなら、3時間くらいの大作にしないといけないでしょうね。

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  • <姑獲鳥の夏> 

    Excerpt: 2005年 日本 124分 監督 実相寺昭雄 脚本 猪爪慎一 撮影 中堀正夫 音楽 池辺晋一郎 出演 京極堂(中禅寺秋彦):堤真一    関口巽:永瀬正敏    榎木津礼二郎:阿部寛 .. Weblog: 楽蜻庵別館 racked: 2006-08-21 09:28
  • #612 姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)

    Excerpt: 企画・製作プロダクション:小椋事務所 監督:実相寺昭雄 撮影:中堀正夫 美術:池谷仙克 音楽:池辺晋一郎 照明:牛場賢二 原作:京極夏彦 出演者:堤真一 、永瀬正敏 、阿部寛 、宮迫.. Weblog: 風に吹かれて-Blowin' in the Wind- racked: 2006-09-05 03:27