映画評「暗殺者の家」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1934年イギリス映画 監督アルフレッド・ヒッチコック
ネタバレあり

第18作「三十九夜」と第19作「間諜最後の日」については順不同時代に記したものを参照して下さい。

アルフレッド・ヒッチコック第17作。
 日本で初めて公開されたヒッチコック作品で、22年後に「知りすぎていた男」としてリメイクされている(原題は同じ)。

スイスのサンモリッツで行われている冬季スポーツ大会の射撃にエドナ・ベストが参加するが、試合後知り合ったジャンプ選手が狙撃され、夫レスリー・バンクスが彼の臨終の言葉を守ってホテルに駆け付けると、英国を訪れている某国大使の暗殺が企てられていることが判る。が、その直後暗殺団に娘ノヴァ・ピルビームが口封じの為に誘拐されたので、警察に応援を頼むことも出来ぬまま独自に救出に向う羽目になる。

というお話の骨子はリメイクとほぼ同じだが、序盤の舞台が冬のスイスということでムード的に大分違い、プロローグ部分にかなり時間を割いたリメイクに比べてぐっと単純。
 クライマックスは勿論有名なアルバート・ホールでの暗殺場面。この場面をグレードアップしたいが為にリメイクされた「知りすぎていた男」がなければ十分素晴らしい演出であるが、比較すると分が悪いのは仕方がない。

比較して一番不満に感じるのは、夫が暗殺団がアジトにしている教会に閉じ込められ全く活躍をしないことで、終盤暗殺を失敗させ得意の銃撃で犯人の一人を仕留める活躍をする細君とは全く対照的。リメイクではこの辺りも改善された印象がある。
 一方、最終盤のギャング映画のようなタイトな銃撃戦が素晴らしく、屋上屋を重ねる感があってもたれ気味の「知りすぎていた男」よりバランスが取れている。
 また、リメイクと比べるとかなりあっさりとした印象であるが、描写には寧ろ映画的な厚味があり、駆け足的な物足りなさを補って余りある、と言って良い。

出演者の中では、暗殺団の首領を演ずるペーター(ピーター)・ローレが断然面白い。【面白い】という表現が似合う役者はそういないが、「M」「カサブランカ」「仮面の男」でも彼を見るだけで楽しくなったものである。しかも悪役として十分機能するのだから稀有な役者であり、僕の好きなアル・スチュワートも名曲「イヤー・オブ・ザ・キャット」の中で♪何か悪巧みをしているピーター・ローレのように♪と歌っている。

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この記事へのコメント

2006年07月30日 18:29
 TBとコメントを有り難うございました。
ヒッチ曜日も大きな山を越え、あと一息ですね。ヒッチの次はいよいよベルイマン監督作品ですか?大事な作品ほど、なかなか筆が進まないものですね。ではまた。
オカピー
2006年07月31日 00:15
用心棒さん、こんばんは。
残り13本ですが、「下宿人」「ブラックメイル」「殺人!」以外は簡単に済まします。誰も読まないでしょうですし。
次は、トリュフォーにしようかな。彼は作品数が少ないから、さほど時間が掛からないですね。
ベルイマンは読む人が少なそうです。黒澤・小津といった辺りにも食指が動きます。また素敵な命名をお願いしますね。
カカト
2007年05月16日 15:40
ピーター・ローレはそんなに好きな俳優さんではないのですが、観てると不思議と応援したくなりました。
物悲しさも漂う悪党でしたね。
オカピー
2007年05月17日 02:24
カカトさん、こんばんは。

ピーター・ローレは確かオーストリア出身のドイツ系俳優です。
一度観たら忘れられない強烈な個性の持ち主で、40年代くらいまでは悪役が殆どでした。徐々に憎めないおじさんといったイメージになっていったようです。
そう、喩えが変かもしれませんが、フランケンシュタインの怪物のような悲しさが彼にはあるんですね。たまたま悪党に生まれてしまった、といった感じの。

この記事へのトラックバック

  • 『暗殺者の家』(1934) ヒッチコック監督によって、後にセルフ・リメイクされた傑作スリラー

    Excerpt:  まだ監督としての名声を確立する前の作品であるために、予算があまり取れずにいた頃の作品。素晴らしい工夫は随所に見えますが、自分の思い通りには仕事が出来ていない印象はぬぐえません。 Weblog: 良い映画を褒める会。 racked: 2006-07-30 18:40
  • 「暗殺者の家」を観ました

    Excerpt: 「暗殺者の家」 (The Man Who Knew Too Much) 1934年イギリス 監督 アルフレッド・ヒッチコック 出演 ピーター・ローレ    レスリー・バンクス あら.. Weblog: 私が観た映画 racked: 2007-05-16 15:38
  • 暗殺者の家

    Excerpt: 暗殺者の家 「知りすぎていた男」のオリジナル作品だそうですね。 ヒッチコック自身がリメイクしなおしています。 やはりどうしても「知りすぎていた男」と比較してしまうと、 展開、はやっ.. Weblog: cino racked: 2007-06-07 22:04