映画評「アダプテーション」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2002年アメリカ映画 監督スパイク・ジョーンズ
ネタバレあり

2004年度の第3位に選出。その時の映画評です。

大いに話題になった「マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズ監督=チャーリー・カウフマン脚本コンビの次回作だが、個人的にはこちらのほうが遥かに興味深い。全編洒落っ気だけで作られているからである。通常の枠で評価してはいけない。

面白さの一つはカウフマン自身が主人公であること。フェリーニやウッディー・アレンのように自分をモチーフにした芸術作品はあるが、監督や脚本家が本人を主人公に据えた娯楽映画はこれまで記憶がない。
 しかも原作者スーザン・オーリアンまでも登場するのだから、これは映画史上初の試みではないか。双子の弟ドナルド・カウフマンは架空なのだが、架空の人物が脚本に名を連ねた恐らく最初の例。間違っていたら御免なさい。小津安二郎が「東京の女」で原作者のふりをしたのが感覚的には近いが、それとも違う。

チャーリーは容姿に自信のない脚本家で内向的な性格なのだが、ある時ルポ作家スーザン(メリル・ストリープ)の著書の脚本化を依頼される。蘭を紹介するルポルタージュで、物語らしいものがなく大いに悩む。方や双子の弟ドナルドは適当に書き上げたサスペンスが大ヒットし、兄チャーリーは益々苦悩する。

彼の書く脚本が映像として紹介される二重構造的な構成で、しかも原作がルポルタージュである為、実際のカウフマンを視野に入れると、現実と虚構の間を行き来させる<三重構造>になっている。魅力の最大要因であるが、それだけでは大して面白くならなかったはずで、それを理解しているカウフマンは終盤で内省的な心境吐露映画風の内容から思い切ってサスペンス・アクションに変え、我々の度肝を抜く。

スーザンは取材先の蘭学者がお気に召してしまい遠く離れたフロリダの地で落ち合って不倫関係を結ぶのだが、行き先を知った脚本家の双子は現場に直行、目撃しているところを目撃され不倫カップルに追いかけられ、ドナルドは殺されてしまう。弟を失うという犠牲の下にこうして脚本は書きあがるのである。

最後に「ドナルド・カウフマンをしのんで」などとご親切に付け加えるに至り、「人を食うのもいい加減にしろよ」とご機嫌にならざるを得なかった。参りました。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2006年07月18日 16:16
TB&コメント有難うございます。最初、もう一人の男はカウフマンの幻想なのかと思って見てました^^;)。そしたらあれ?やっぱり双子か…?そして実際に双子なのかとまで思ってしまいました。二重三重にも騙されヤラレター!という感じで楽しかったです。トリップしたストリープが電話しながら自分の足を見つめるシーンが可愛い。貧乏くさく前歯のないクリス・クーパーのキャラもイイですねー。
オカピー
2006年07月18日 17:35
ぶーすかさん、こんにちは。
「アダプテーション」「エターナル・サンシャイン」「ヒューマン・ネイチャー」と、カウフマンは小手先を弄する嫌いがあり、面白いが物足りない部分が出てきます。しかし、本作は洒落に徹しているのでご機嫌。私は断然この作品を推します。心に重いものを残すばかりが映画ではありません。

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