映画評「キッズ・アー・オールライト」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1979年アメリカ映画 監督ジェフ・スタイン
ネタバレあり

ビートルズ、ローリング・ストーンズと並んで英国三大バンドと言われるザ・フーであるが、日本での人気は今一つである。かく言う僕も、ビートルズは公式アルバム全てと幾つかの貴重なCDを持っているし、ストーンズも全LPを聴いたことがあるのに対し、ザ・フーはLP「トミー」と「フーズ・ネクスト」を所有し、その他「マイ・ジェネレーション」「マジック・バス」等5、6曲を知っているだけである。

彼らの初期の曲をタイトルにしたこの作品で、今回彼らの本格的ライブ映像を初めて観るわけであるが、まず驚かされるのは、その激しいパフォーマンスである。
 ギターを壊し、ドラムを壊し、マイクを倒すなど、ステージ上でやりたい放題。こうした行為を観るのは後発のエマーソン・レイク&パーマーや火を放ったジミ・ヘンドリックスなどの例があり、初めてではないが、先駆者であることを知って驚いたのである。うーん、勉強不足も甚だしいことを痛感した次第。

しかし、もっと驚いたというべきか、感嘆したのは、彼らのパワーに溢れた演奏の力で、レコードでは何気なく聞いてしまうが、実際目の当たりにするとその活気とスピードたるや驚異的である。
 変人キース・ムーンの超人的ドラムス、リード・ギタリストも真っ青になるジョン・エントウィッスルの速弾きベース。円を書くようにかき鳴らすタウンシェンドのギター。格好良いねえ。

それだけでも観た甲斐はあるが、一応映画なので、それらしいことも少しは書かねばなるまい。
 この作品が作られる1年前の1978年にムーンが薬物の過剰摂取で他界してしまったので追悼のような形で発表されたが、楽曲を紹介するだけの目的で作られた訳ではなく、彼らのバンドとしての在り方を追及する内容にもなっている。
 監修をエントウィッスル(彼も2001年に薬物が原因で逝去)がしているせいか、彼の出番は異様に少ないが、「この継母っ子扱いは一体何だい」と思うほどリード・ボーカルのロジャー・ダルトリーの扱いも小さい。
 キース・ムーンはかなりの奇人だったらしくTVのインタビュー中に隣に坐っていたタウンシェンドのシャツを破いてしまったりするが、タウンシェンドは行動より発言面でかなりユニークで、あたかもバランスを取るかのように二人を登場させるのが映画的に面白いと言える。

この作品で紹介されたオリジナル曲は全てタウンシェンドの作ったものだが、いずれも馬力が凄い。フーのもう一人のコンポーザーであったはずのエントウィッスルの曲が一曲もないのは、彼が多分控えめな性格だからなのであろう。
 ビーチ・ボーイズのバージョンが有名な「バーバラ・アン」、ビートルズも公式デビュー前に演奏している、個人的にはルルのバージョンがお気に入りの「シャウト」などという、彼らにちょっと似合わない曲も聴けるのが楽しい。

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この記事へのコメント

N_ardis
2006年07月17日 15:23
オカピーさん、こんにちは。
速効でトラックバックさせてもらいました。
意外なセレクトと思ったらビートルズを熱心に書かれているのですよね。。。ちゃーんと映画の視点でスタンスがぶれないところがオカピーさんらしい・・・。

ボクにとってもTHE WHOは名前は知っていても、キース・ムーンの奇行の噂は知っていても音楽を知らなかったグループであったわけで、最近になって耳にするようになったのは、日本での浸透具合と似ているような。
彼らにはとんでもないエネルギーを感じる(いつもここに帰結させてしまうのです)とともに、やっぱりいい曲があるのですよね。

「バーバラ・アン」はビーチ・ボーイズがオリジナルだったのですか。変幻自在さが時代と添い寝しているグループのように感じたりもするんですよね。
映画と関係ないところに終始してしまいました。。。
2006年07月17日 19:59
 オカピーさん、こんばんは。ザ・フーって過小評価されているのですが、とんがっていて個人的には大好きなバンドのひとつでした。

 『バーバラ・アン』ですが、オリジナルはレジェンツの1961年度盤ではないでしょうか?『アメリカン・グラフィティ』のサントラで聴いたことがあります。こちらの勘違いならば申し訳ありません。ではまた。
ぶーすか
2006年07月17日 21:21
TB&コメント有難うございます。以前からアルバムよりもライブの方がイイのが本物のミュージシャンだと思ってましたが、彼らもそうですねー。アルバムを聞くよりもライブの方がずっと面白くてイイです!
ちなみにビーチ・ボーイズの「バーバラ・アン」も好きっす。
オカピー
2006年07月18日 02:28
>N_ardisさん、こんばんは。
ビートルズ(ポール)がフーのような賑やかな音楽をやりたいと言って作ったと言われているのが、かの「ヘルター・スケルター」ですね。
エントウィッスルのベースに驚きました。何ですか、あれは?
「バーバラ・アン」はビーチ・ボーイズではなく、レジェンツというコーラス・グループの曲らしいですが、現在唯一無二なほど有名なのはビーチ・ボーイズ版です。しかし、紛らわしいので表現を変えておきました。

>用心棒さん
確かに演奏は言うことなしです。難を言えば曲想にビートルズのように多様性がない。「トミー」のように二枚組になるとそれが露骨に出ます。それで良いのでしょうけどね。
「バーバラ・アン」のご指摘については仰るとおり。有難うございました。

>ぶーすかさん
ビートルズもストーンズもライブが良いです。ビートルズの後期はライブ演奏するのが難しい曲が多いと言われていますが、ザ・フーのようにテープを使えば出来ないこともないわけで、聴いてみたかった曲がいっぱいありますね。
キース・ムーンは変人でもテクニックは凄いですね。

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