映画評「ビヨンド the シー ~夢見るように歌えば~」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2004年アメリカ=ドイツ=イギリス映画 監督ケヴィン・スペイシー
ネタバレあり

最近伝記映画が妙に多いが、これはクルト・ワイルの名曲「メッキ・メッサー」の英語版カバー「マック・ザ・ナイフ」で知られるお馴染みの歌手で、映画「突撃隊」などに出演した俳優としても知られたボビー・ダーリンの、セミ・ミュージカル形式の伝記映画である。題名はダーリンの代表曲による。

生来の心臓病で15歳までしか生きられないと告げられた彼は、母親ポリー(ブレンダ・ブレッシン)の勧めでシナトラを超える歌手を目指す。
 「スプリッシュ・スプラッシュ」で成功すると、61年映画にも進出、「九月になれば」で共演したサンドラ・ディー(ケイト・ボズワース)と結婚するが、お互い人気者同士のすれ違い人生で一人息子をもうけて破局。
 クラブでの歌手活動など不遇の時代が到来、ベトナム戦争の泥沼化で彼自身も自ら政治に首を突っ込みプロテスト・ソングを披露するが、古いファンからは相手をされない。そして、ベガスで華やかな世界に戻って成功した直後37歳の若さで夭折する。しかし、死んだのは<歌手ボビー・ダーリン>ではない。

主演のケヴィン・スペイシーが共同製作、共同脚本と監督を兼ねているが、心臓病を病み、母親から強い影響を受け、若手女優と結婚して破局、素顔を晒して成功その直後の死という人生行路がピーター・セラーズの伝記映画「ライフ・イズ・コメディ」と似ていているだけではなく、幻想を交えた演出も似ている。
 こちらの幻想は、晩年のダーリンが自身の過去を回想するという形式で進行する為に少年時代のボビー自身が対話役として現れるだけで、変装役者を演じている役者が、演じている変装役者よろしく変装して主人公を批判する(それでいて実際には内面モノローグという)複雑な二重構造になっていた前述作ほどの面白味がなく、幕切れで僅かに意味を見出せる程度。

ミュージカル場面の洗練度は今一つだが、姉と思っていたニーナ(キャロライン・アーロン)が実の母と判明する辺りは気取らずに素直に処理したのが却って胸に迫る。

ケヴィン・スペイシーはダーリンを演ずるには(映画の冒頭で言われたように)老けすぎだが、歌は上手い。60年代のアイドルで昨年亡くなったサンドラ・ディーに扮したケイト・ボズワースは似ているような似ていないような感じだが、なかなか雰囲気を出している。

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この記事へのコメント

viva jiji
2006年05月09日 07:15
スペイシーのツケ鼻の不自然さが少々気になりましたが(笑)彼はB・ダーリンが好きで好きで仕方がなかったんだろう、って思える作品でした。CGアニメのエンディングに流れた「ビヨンド the シー」(歌ってるのはロビー・ウィリアムズ(好きでない)でしたが)で「この歌!」私、ガキの頃ラジオで聴いたことある!ということでネットでRHINOの4枚組ベスト買いました!D・マーチンとN・シナトラの「初恋の散歩道」(ゴキゲンな曲!)がダーリンの作曲だというのも初めて知りました。
オカピー
2006年05月09日 15:43
viva jijiさん、こんにちは。
スペイシーはダーリンが好きなんでしょうね。映画としては先に「ライフ・イズ・コメディ」を観たので損をした感じ。話が似ている上に、あちらのほうが上手く作られていましたので。
ボビー・ダーリンなんて「マック・ザ・ナイフ」くらいしか知らないと思っていたら、この作品を観たら結構知っていました。曲名と実際の曲が一致しないんですね。
RHINOの4枚組も色々あるようですが、ガール・グループサウンド4枚組というのが欲しくなりました♪
聴けば知っていると思いますが、「初恋の散歩道」はどんな曲だったろう? ナンシーと言えば、「にくい貴方」がまず頭に浮かび、次に「サマー・ワイン」といったところです。
2008年06月12日 10:37
B・ダーリンなんて全然知らなかったんですが、「突撃隊」にも出演していたんですねー。劇中での音楽が聞いたことのあるものばかりで、グッドでした^^)。ケビン・スペイシーの歌と踊りの上手さにはほんと、びっくりでした。ご指摘の通り、もうちょっと若ければなぁ…。
オカピー
2008年06月13日 02:09
ぶーすかさん、こんばんは!

>B・ダーリン
映画ファンになり立ての頃から何故か知っていた僕は「スクリーン」での逝去記事も記憶に残っていますよ。
「マック・ザ・ナイフ」はラジオのリクエストも随分あったのでよく知っていましたが、他の曲も結構知っていたのには自分でびっくり。^^;

スペイシーに限らず、ハリウッドの役者は歌が上手い人が多いですね。
僕が一番印象に残っているのはキム・ベイシンガー、続いてミシェル・ファイファー、グウィネス・パルトロウといったところ。
モーソー大使
2011年06月10日 02:12
「ビヨンド the シー」はケビン・スペイシーの心意気が感じられ、それだけで大変満足できた映画でした(「ライフ・イズ・コメディ」は幸か不幸かまだ見ていません)。普段、録りためた映画をランダムに選ぶのですが、偶然、その後続けて見た映画がレイフ・ファインズの「オネーギンの恋文」とロバート・レッドフォード監督の「クイズ・ショウ」。オープニングと同じく、エンディングに流れる「マック・ザ・ナイフ」もボビー・ダーリン(晩年)が歌ったものだとしたら(そう思いたいのですが)、なんともシビレる選曲です。3本とも作り手の思いを満喫できる贅沢な映画でした。
オカピー
2011年06月10日 19:53
モーソー大使さん、初めまして。

僕と同じようにTV派なんでしょうか。

>「ライフ・イズ・コメディ」
僕は複雑な二重構造を大変楽しみました。色々な映画を観ていると楽しめる作品になっています。

「オネーギンの恋文」と「クイズ・ショウ」も大好きな映画です。
特に「オネーギン」はプーシキンの原作が大のお気に入りで、その為に大学ではロシア語を専攻したほどです^^

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